歴人マガジン

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【 あの文体に奮い立った青春の日 】歴史好き編集長が選ぶ「司馬遼太郎名作3選」

【 あの文体に奮い立った青春の日 】歴史好き編集長が選ぶ「司馬遼太郎名作3選」

歴人マガジン読者のみなさんが、歴史を好きになったのは何がきっかけでしたか?
今日は歴人マガジンの編集長を拝命している私が歴史を好きになったきっかけをお話ししたいと思います。

私が歴史を好きになったのは、祖母、父、兄という、極めて偏りのある歴史好きの家庭に育った影響が大きいかもしれません。NHK大河ドラマを家族で見ながら、周りが「こんな話あるわけねーよ!」とか「誰々はこんな人ではない」とかうるさいのなんの。

しかしそれから以後、歴史は学生時代の思い出になり、再び歴史熱が再燃したのは社会人になってから。
家にあり、ふと読み出した巨匠 司馬遼太郎氏の歴史小説が、私の歴史熱を再燃させてくれたのです。

司馬氏がまるでそこにいたにように各々を描く「透明人間手法」に、思わずのめり込んでいってしまいます。
今日はその司馬氏の作品から、ベタだが大好きな3作品をご紹介させていただきたいと思います。

これぞ戦国時代ロマン「国盗り物語」

国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)

読み出して「歴史小説ってこんなに面白かったのか!」とビックリし、どんどんはまり出すきっかけになったのがこの「国盗り物語」。

一介の僧侶からなんと油屋になり、その後美濃一国の大名にまでのし上がった、まさに「ザ・戦国武将」斎藤道三と、尾張の小大名の家に生まれ、その奇抜な言動から「うつけ殿」と呼ばれつつも、天下統一目前にして倒れたカリスマ織田信長、そして道三の甥でありながら、信長を討った明智光秀という3人の男の物語です。

この作品、個人的に一番好きなのは、僧侶だった道三が、その才覚と度胸、男っぷりで京都の油売り奈良屋の女主人を惚れさせ、その財力を活かしてのし上がるストーリー。
これぞ男のロマン!という彼の人生を、読者は道三に同化させて楽しめることでしょう。

その後道三は美濃を平定、ついに大名になりながら、最後に息子の斎藤義龍(本書では義竜)に滅ぼされるのですが、そこにはどんな秘密があったのか・・・

また義父の死後、遺言で授かった美濃を攻略した信長は、今川義元を桶狭間で撃破、天下統一を目前にしながら、今度は義父の甥である明智光秀に滅ぼされるという歴史の刹那。

この物語で司馬氏が描いているのは、道三、信長、光秀という3人の男の人生を通して見える、運命の数奇さとリアルさなのではないかと思います。さながら「ああ諸行無常」といったところでしょうか。

誰もが彼に憧れた・・・稀代の名作「竜馬がゆく」

竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)

竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)

さて二つ目は、司馬作品の中でも最も有名であろう名作「竜馬がゆく」。
歴史好きなら坂本龍馬がどんな人だったか説明するまでもないでしょうが、そう言った人たちの中の龍馬像は、かなりの割合でこの作品のイメージなのではないでしょうか。

高知市内の裕福な商家に生まれながら、どうにもできない身分制度を良しとせず脱藩、日本を所狭しと駆け巡り、明治維新の原動力になった坂本龍馬の一生を描いたこの作品。
たくさんの手紙が現存することで、とても筆まめだったと言われる彼の人としての魅力をあますところなく描いています。

若かりし頃は、誰もが自分の生き方に迷いや恐れがあるかと思うのですが、この作品を読むことで勇気付けられた人は数え切れないほどいるはず。
一番好きな歴史上の人物は坂本龍馬、まさにこの龍馬のように生きたい、と心から思っていた時期もありました。

近年、歴史を勉強しなおす中で、明治維新というのは別の見方もある、と知った時は正直大変にショックでしたが、それでも司馬氏の描く彼の人間としての魅力は限りなくリアルに近いと未だに思っています。

気概や自信があるのに、自分の力を発揮できておらず、若くしてモヤモヤしている。
そんな若い人に、とにかく読んでもらいたい超大作、それが「竜馬がゆく」です。

あくまでも「立場」に生きた男の物語「峠」

峠 (上巻) (新潮文庫)

峠 (上巻) (新潮文庫)

さていよいよ最後になりました。
最後は、幕末坂本龍馬らと同じく、その生を燃やし尽くした越後長岡藩の家老、河井継之助を描いた「」をご紹介します。

風雲急を告げる幕末期、究極の選択を迫られた越後長岡藩。
しかしあくまでも彼の場合は自らの藩の家老という「立場」を戒律のようにして自分の腹に据えています。
とかくヒーロー視されている倒幕派や新撰組などに比べ華やかさはありませんが、その姿がまたカッコいい。

彼が自らの信念に基づき、一つの時代が終わる際にどう生きていこうとしたのか。
当時日本で三丁しかないと言われたヨーロッパ製の機関銃「ガトリング砲」を莫大な藩費をかけて輸入した彼が考えていたことは何なのか。そして彼の意とは反する結末への流れは?
司馬流の独特な文体が読者に「ああ!自分さえそこにいれば・・・」という完全な感情移入を促します。

藩という封建制度の中にいる自分の「立場」を逸脱せず、藩主への忠誠に自らのエネルギーを注いだ彼の生き様に、当時サラリーマンだった私はシンパシーを覚えました。
立場を超えずとも自らの生を肯定でき、燃え尽きるような一生を送ったという意味において、もしかしたら継之助の方が、坂本龍馬のようなスーパーマンよりも多くの人の心に残るんじゃないか?とも思います。

もし読んでない方がいたら、ぜひ竜馬がゆくと読み比べて、どちらが自分の生き方やキャラクターに合っているのか、心の声を聞いてみてください。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。
最初はもう少しスラスラ書けると思いきや、予想以上に書くのが大変でした。
ネタバレになってはもちろん良くないし、かといって面白さを伝えなければそれこそ本末転倒。

戸惑いながらも、もしこの中で一つでも読んだことがない人に、自らの経験したような思いを感じてもらえるのであれば書いてみたい、と思い書かせていただきました。

自分が何のために生きているのか?とか、カリスマだけで歴史は出来上がっていないのだ、とか。
司馬氏の歴史小説は、そんな問いを私たちに常に投げかけてきます。
皆さんがもしなにかに迷ったり、決断を迫られた時のためにも機会を見つけて、一度この作品を読んでいただけたら嬉しく思います。

参照元:
国盗り物語」新潮文庫
竜馬がゆく」同上
」同上

編集長Y

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