
2020年に公開が予定されている、新選組の土方歳三を題材にした映画『燃えよ剣』。岡田准一が主演という点だけでなく、「司馬遼太郎の名作の映画化」とあって、歴史小説好きの界隈でも話題を呼んでいます。
司馬遼太郎は大阪府大阪市生まれの作家で、産経新聞社在籍中に『梟の城』(新潮社)で直木賞を受賞。構想の雄大さと独自の切り口で、歴史小説に新風を起こしました。また、『街道をゆく』(朝日新聞出版)など評論家・エッセイストの顔も持ちます。彼が手掛けた作品は常にベストセラー。今回の『燃えよ剣』(新潮社)の映画化に限らず、原作として幾たびもドラマ化されています。
それに合わせて今回は、司馬遼太郎の代表作からおすすめの歴史小説を10作品、歴人マガジン編集部で厳選いたしました。主人公を好意的に描く、司馬ワールド全開のラインナップとなっています。
映画『燃えよ剣』を鑑賞予定の方はもちろん、司馬遼太郎作品に入門したい方も必見です。
燃えよ剣
主人公の土方歳三だけでなく、局長・近藤勇や病に伏した悲劇の天才剣士・沖田総司など、新選組の面々は魅力的なキャラクターばかり。土方歳三の生き様に彼らがどう影響を与えるのかも本作の見どころです。
竜馬がゆく
新選組といった幕府勢力に命を狙われながらも、薩長同盟や大政奉還といった不可能を可能にした坂本龍馬。世相の常識には収まりきらないスケールを持った男の視野には、何が映っていたのでしょう。幕末維新史上の奇蹟と称された龍馬の歩みと世界の広さ、あなたもぜひ感じてみては?
新選組血風録
土方歳三や沖田総司、斎藤一など新選組主要メンバーのエピソードを網羅しており、映画化され話題となった原作も含まれています。幕末最強と謳われた剣客集団のため、過激な戦闘や凄惨な描写のイメージが強い新選組ですが、趣の異なる短編も含まれています。沖田のために奔走する近藤や土方などの人情描写も本作の見どころです。
国盗り物語
群雄割拠の時代に国盗りを夢見た一介の油売り、うつけと呼ばれながらも天下に名を轟かせた信長、才知に恵まれながらも報われなかった光秀。道三に見出された対照的な2人が辿る結末とは?同じ時代に居合わせたゆえの宿命の物語を、ぜひご刮目あれ。
坂の上の雲
国民が帝国主義を悪だと思っていなかった時代、旧伊予国松山出身の3人を主人公に物語は紡がれていきます。騎兵部隊の創設者・秋山好古、海戦戦術の創案者・秋山真之、真之の親友で俳人の正岡子規。彼らの人生を通して描かれる特別な時間を、本作を通して感じてみてください。
峠
近代的な感覚を持ち、時代の流れを読み解きながらも、最終的には新政府に対抗する道を選んだ河井継之助。合理主義者でありながら、束縛を断ち切れなかった河合は最後のサムライと呼べるでしょう。葛藤の末に選択した人生を歩んだ男の生き様、ご一読をおすすめします。
関ケ原
次第に忠義の仮面を外していく徳川家康の野望から、豊臣家を守らんと立ち上がる石田三成。関ヶ原の戦いへと至るまでの謀略戦の数々、謀臣と呼ばれた本多正信や三成の腹心・島左近の人間模様、日本国内における古今最大の戦闘シーンの描写……傑作と呼ぶに相応しい歴史小説でしょう。
項羽と劉邦
本作を痛快な歴史小説として楽しむのも良いでしょう。ただ、司馬遼太郎は本作で「真の英雄とは?人々に推される人物とは何たるか?」を問いかけています。はるか昔が舞台の物語ですが、これは現代にも通じる問いかけです。まさに司馬ワールド全開な、おすすめの1作です。
城塞
秀吉亡き後、天下無双の城塞・大阪城へと集う豊臣恩顧の者たち。暗躍する旧武田家家臣の間者、豊臣へ揺さぶりをかける家康の策謀……歴史の1ページを見事に切り取った作品と言えるでしょう。徳川家康の生涯を扱った「家康三部作」の1作であり、家康ファン必読の書とも言えます。
新史 太閤記
織田信長をはじめ、柴田勝家や前田利家ら秀吉を取り巻く人物とのやり取り、人たらしを秀吉ならではの人心掌握術と見抜いた黒田官兵衛との関係など、出世街道を上る姿もさることながら、秀吉に心を掴まれた登場人物の心理描写も本作の見どころの1つです。
まとめ
司馬遼太郎の作品を知らなかった方も、知っていた方も、興味が惹かれた作品はあったでしょうか?今回の10作品の他にも、彼の作品には『空海の風景』(中央公論新社)などの秀作が目白押しです。
気になった作品を入り口に、司馬遼太郎ワールドを心行くまで楽しんでみてはいかがでしょうか?