大衆文化であり、日本を代表する伝統芸術の一つ「浮世絵」。
浮世絵は日本だけではなく欧米を中心とした海外でも愛され、19世紀後半の美術界や音楽にまでも多大な影響を与えてきました。
今回は日本の浮世絵に大きな影響を受けた欧米の芸術家をご紹介します!
浮世絵と西洋画の技法を融合したゴッホ
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853年~1890年)は、オランダ出身のポスト印象派画家です。
「タンギー爺さん」という画の背景を浮世絵で埋め尽くすほか、歌川広重の画を油絵で模写するなど積極的に浮世絵の技法を学び、西洋絵画の技法と融合させながら自分の作品として昇華させていきます。
ゴッホ兄弟として約500点もの浮世絵を収集するだけではなく、浮世絵を広く、より深く知ろうとしたのがゴッホです。ゴッホは浮世絵から日本の文化、宗教観など様々なことを感じ取り理解しようと努めました。
フランスの浮世絵師と呼ばれたアンリ・リヴィエール
アンリ・リヴィエール(1864年~1951年)はフランス出身のポスト印象派画家です。
「フランスの浮世絵師」と謳われることも多く、ジャポニズムに影響を受けた画家です。収集した浮世絵から独学で木版画の技術を学び、優しくも印象的な作品を多く残しています。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」をオマージュした「エッフェル塔三十六景」を製作。
妻に着物を着せて描いたモネ
クロード・モネ(1840年~1926年)はフランス出身の印象派を代表する画家です。
睡蓮などで有名なモネは自宅の庭に日本風の橋をかけるなどした日本通。
32歳の若さで亡くなったカミーユ夫人が扇子を手に赤い着物を着ている場面を描いた「ラ・ジャポネーズ」は2mを超える大作であり、ボストン美術館に収蔵されています。「ラ・ジャポネーズ」は見返り美人風の構図で、当時のヨーロッパで感じ捉えられていたオリエンタルな雰囲気が表現されています。
春画に衝撃を受け、裸婦を描いたマネ
エドゥアール・マネ(1832年~1883年)フランス出身であり印象派の中心的画家の一人。
「草上の昼食」や「オランピア」といった裸婦を描いた作品の発表で物議を醸したマネ。
自身のアトリエで描いた「エミール・ゾラの肖像」には、背景の一部として浮世絵などが描かれ、ジャポニズムを代表する一枚です。マネ自身も多くの浮世絵や日本画作品をコレクションしています。
裸婦や娼婦を描いたことで世間から多くの批判を受けたマネですが、多くのコレクションの中で堂々と性行為のシーンが描かれた「春画」にもっとも衝撃を受けたともいわれています。
北斎の「冨嶽三十六景」に影響され作曲したドビュッシー
クロード・アシル・ドビュッシー(1862年~1918年)は、フランスの特徴的な作曲技法を用いた作曲家です。
ドビュッシーの代表曲の一つである交響曲「海」は、葛飾北斎の「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」に影響を受けて作曲されています。初版の「海」の表紙には、本人の希望により「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」が採用されており、ドビュッシーの自室にも同じ北斎の絵が飾られていました。
いかがでしたでしょうか。絵画ならまだしも、音楽にまで影響を与えているなんて凄いですよね。
コミカルかつ迫力のある歌川国芳の浮世絵や、繊細でどこか憂いを感じる歌川国貞の浮世絵の様に、昔から多くの人々を魅了してきた浮世絵。
現在でも欧米では日本のアニメや漫画が人気ですが、100年以上前から日本文化は世界で愛されてきたようです。
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