歴人マガジン

サンドウィッチ伯爵は、本当にカジノでサンドイッチを食べたのか? 哲舟の「偉人は食から作られる!」 VOL.13

サンドイッチの名前が、イングランドの貴族に由来することをご存じの方は多いだろう。

 

そう、第4代サンドウィッチ伯爵、ジョン・モンタギュー(1718~ 1792)という人物だ。

 

「サンドウィッチ」は個人名ではなく階級の名で、初代のエドワード・モンタギューから続いており、ジョンはその4代目というわけ。

 

パンに食べ物を乗せたり、挟んで食べること自体は、実はもっとずっと昔から世界中で行なわれていた。紀元前1世紀、ヒレルというユダヤ人の学者が子羊の肉と香草をマッツァー(平らなパン)に包んで食べたという記録がある。

 

ただし、18世紀まではそれほど一般的な食べ方ではなく、「bread and meat」や「bread and cheese」という、「見たまんま」の呼び方をされていたそうだ。

 

18世紀になって、イギリスの歴史家エドワード・ギボンは、日記(1762年11月24日)にこう記している。

 

「ロンドンの有名なクラブ、『ココア・ツリー』で食事をとった。そこでは、この国の一流の男たちが集まり、わずかな冷たい肉、あるいはサンドイッチをテーブルで食べていた」

 

これが、文献における「サンドイッチ」の初登場とされる。当時、まさに第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューが、国務大臣として活躍していたころ。

 

サンドウィッチ伯爵 ジョン・モンタギュー
サンドウィッチ伯爵 ジョン・モンタギュー

「大臣は公衆のカジノで24時間を過ごし、少しの牛肉を2枚の焼いたパンに挟み、ゲームを続けながら食べた。私のロンドン滞在中に大流行したこの新しい食べものには、大臣の名前(サンドウィッチ)が付けられた」

 

日記にこう書いたのは、ジャン・グロスレというフランス人だ。ただし、実際のジョンは国務大臣のほかに海軍卿なども歴任していて、大忙しだった。

 

地元の研究によれば、「大臣がカジノで24時間過ごした」とは、かなり大げさな表現なのではないかと分析されている。

 

サンドウィッチ伯爵は、確かにカジノ好きだったようだが、実際には机の上で仕事の合間にサンドイッチを食べた回数のほうが多かったという。

 

不思議なもので、「カジノで食べた」と「机の上で食べた」とでは印象がだいぶ違ってくる。実際の伯爵は勤勉な人物だったのではないだろうか?

 

サンドウィッチ伯爵は、あのキャプテン・クックの大航海を支援したことでも知られている。キャプテン・クックは、ハワイ諸島を発見したとき伯爵に敬意を表して「サンドウィッチ諸島」という名前を付けたほどだ。

 

ちなみに、伯爵の家系は今も続いており、11代目の名前もジョン・モンタギューという。

 

11代目は、2004年に「Earl of Sandwich」というサンドイッチ店をフロリダ州のディズニー・ワールド・リゾートに開業。アメリカのほか、パリやロンドンにチェーン展開している。

 

サンドウィッチ伯爵の子孫が手がけるサンドイッチ。一度は食べてみたい。

 

ちなみに、日本では3月13日が「サンドイッチの日」とされているが、それは1を3で挟んでいるという語呂からで、実際には4代目ジョンの誕生日である11月3日が正式な記念日といえる。

 

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上永哲矢(うえなが てつや)
通称:哲舟。歴史コラムニスト、フリーライター。『時空旅人』『歴史人』などの雑誌・ムックに、歴史や旅の記事・コラムを連載。三国志のほか、戦国時代や幕末など日本史を得意分野とする。『三国志フェス』などイベント・講演の企画運営や、三国志関連本の制作にも関わっている。神奈川県横浜市出身。

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