【今あらためて振り返る】三国志の英傑「曹操」とはどのような人物だったのか?

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【今あらためて振り返る】三国志の英傑「曹操」とはどのような人物だったのか?

チャンネル銀河では、総製作費25億円という圧倒的なスケールで描かれる中国歴史ドラマ「三国志 Three Kingdoms」を、2018年4月5日(木)より放送いたします。これを記念し、KOBE鉄人三国志ギャラリー館長でもある英傑群像代表の岡本伸也氏に、同ドラマの主人公である魏の武将「曹操」について語っていただきました。


今回のテーマは「曹操(そうそう)」について。彼をテーマにするのは、その偉大さと様々な側面があることから、非常に悩みました。彼の英傑たる部分の一部でも伝われば幸いです。

曹操の描かれ方

劉備(りゅうび)関羽(かんう)張飛(ちょうひ)諸葛亮(しょかつりょう)が主役の物語・三国志演義の中で、曹操は彼らの最大のライバルであり最強の敵役です。

敵役が凄ければ凄いほど、物語は深みを増していきます。単なる悪ではないスターウォーズのダースベーダーなどにも通じる所があるのではないでしょうか。曹操を筆頭に、敵でも味方でも魅力的な人物が多く登場するのも、三国志演義が人気がある理由のひとつだといえます。

現代日本人の三国志の原点的作品といえば小説「吉川英治三国志」と、それを原作にかかれた漫画「横山光輝三国志」ではないでしょうか。そこに描かれる曹操は、冷徹ながらも苦悩して戦う人物として、単なる”悪人”という描かれ方はされていないと一般的に言われています。どうしても悪く描かれがちな三国志演義においても、曹操の良いところは随所に描かれています。そのため、”もとより曹操の評価は一定部分あった”と言えると思います。

魏中心で曹操を良く描いているといわれる歴史書「三国志」をみても、曹操の優秀さと共に、意地悪さ的な部分は伝わってきます。諸葛亮でさえも意地が悪く冷徹なシーンが登場することを考えると、いずれも”人間らしい”というべきなのかもしれません。

漫画「横山光輝三国志」ではあえてわかりやすくする為でしょうか、小説「吉川英治三国志」が三国志演義に準じてきっちり描いていた曹操配下の参謀たちはほとんど省かれ、名前も出ない人物が助言するのみだったり、すべて曹操の功績に変えて描かれています。

結果、曹操の優秀さがさらに強化されることになりました。しかし、曹操一人がすべてを決めて判断していることで、”人材を尊重し能力あれば取り立てて使った”という彼の一面とは反してしまった部分もあるのではないかと思います。もしかしたら、横山光輝三国志しか読んでいない人は、魏の参謀をほとんど知らない、という現象が起きているかもしれません。

銅像は「合肥の曹操像」。”梅の実があそこにあるぞ”と叫んでいます。

曹操の人生

書籍やWEBで曹操の実績については山ほど書かれていますので、今回はそこについて深く書くことは辞めておきます。曹操の歴史や経歴については、以前に三国志イベントで「武将の人生双六」を作った際に私がまとめた三国志演義ベースの「曹操の人生年表」がありますので、今回はそれを掲載します。

「七分実事、三分虚構」7割が史実、3割が虚構といわれる三国志演義。大筋においては合っており、参考になるのではないかと思われます。

「曹操の人生双六」を作った際に印象的だったのは、曹操の戦歴は勝率8割といわれる中で、三国志演義的には前線に出ることが多く、大負けしてケガをしながら逃げるシーンが多い、ということでした。

横山光輝三国志では連載を早めるために省かれてしまった、袁紹と曹操の一大決戦「官渡の戦い」。それ以降、足掛け8年近くにわたり袁家との戦いが続いているという点も注目頂きたいところです。結構、中原の覇者となるために苦労しているのです。横山光輝三国志では袁家との戦いを省いたことにより、一気に力をつけた曹操はスマート、放浪生活の劉備はさえない感じ、という二人のコントラストがはっきりと浮き彫りになったのではないかと思っています。

そのほか、特に初心者の方に注目してほしいのは曹操と関羽の関係です。まさに「英雄は英雄を知る」敵同士ながら長きにわたる二人の因縁ある物語に注目して曹操を見ると楽しいです。単に配下にしたいというだけでなく、曹操の理想とするものを関羽が持っていたのかもしれませんね。

人間曹操として尊敬できる点は、あれだけ権謀術数に長け、兵法の達人であった人でありながらも人材を愛し、敵であっても裏切られても許して使い、さらに信用したという点です。その点においては、なんどか騙されて失敗する事もありましたが一貫していました。彼の魅力の一つといえるでしょう。

曹操が認めた武将・関羽(ドラマ「三国志 Three Kingdoms」より)

曹操と共通する人物

曹操が日本人に人気な理由としては、彼に似た人物に慣れ親しんでいるという事もあるかもしれません。その人物は織田信長です。

一般的に、「冷徹にして進歩的であり、時代の破壊者であり、創造者でもある」と言われる二人。身分を気にせず人材を登用する姿は似ていますし、政治に文学を取りいれた曹操、茶の湯を取り入れた織田信長。この辺りも似ており、共通する所は多いように思います。

コーエーテクモゲームスのゲーム「三國志」の曹操と「信長の野望」の織田信長は顔がそっくりですが、こうした理由から、ゲームなどのイメージも得てして似てくるのではないかと思います。二人に共通するダークな側面もまた似ています。曹操の徐州大虐殺、織田信長の一向一揆や比叡山の虐殺共に、好き嫌いの人気が二分する要素もこのあたりにありそうですね。

エンターテイメントと三国志

近年では、陳舜臣氏の小説「曹操」や、漫画「蒼天航路」など曹操主役のモノが登場し、曹操のイメージを良くする要因にもなっているようです。

お隣中国でも日本の影響があるのか、中国ドラマ「三国志 three kingdoms」では、曹操の人間的な部分にもスポットをあてて描かれているように思います。曹操が主役のドラマや映画なども登場していますし、映画「三国志英傑伝 関羽」でも曹操はいい人物に描かれていました。

中国などから”曹操の再評価が進んでいる日本”なんて言われ方をしますが、個人的には今に始まった事ではない、という感じです。エンターテイメントの中に深くテーマとして取り入れられている日本の三国志は、新たなテーマや要素を常に探しています。その中で、曹操を新しい視点で見たり、曹操を主役にしたりと、変化を加える必要性の中で、そのスタイルが”曹操の再評価をしている”といったような言われ方をしているのではないだろうかと思うわけです。

中国でも、呉の将軍・周瑜(しゅうゆ)を新しい視点から見直した映画「レッドクリフ」なんて作品もありました。良くも悪くも、今後も三国志の人物の見方や評価がエンタメ世界での取り扱い方で大衆に浸透し、変わってくるのではないでしょうか。

ドラマ「三国志 Three Kingdoms」の曹操

曹操の人生の浮き沈みについて

こちらは、以前に作った「曹操の人生の浮き沈み」表です。三国志演義をベースに、私の独断と偏見でまとめてみました。参考までにライバル劉備も作って載せておきます。三国志演義ベースですが、先ほど同様、7割史実。やはり大筋においては合っており、参考になるかと思います。

苦労を重ね成功を徐々に勝ち取り最期に思わぬ失敗をした劉備と、浮き沈みの激しい戦いを制しながら中盤には覇者になるも、その後は苦戦していく曹操。二人は鏡のように表裏一体の存在なのがわかるかと思います。

劉備は曹操と反対の事を行って力をつけていきます。二人の決着は結局つかず、最後は引き分けといったところでしょうか。まさに永遠のライバルと言えそうです。共通して言えることは、”負けてもしぶとく生き残り、逆境をバネに更なる飛躍を遂げる”という点に尽きます。我が学ぶべき部分があるとすれば、この部分でしょうか。

劉備を主として観るか、曹操を主として観るか、いろんな角度から三国志を楽んでいただければと思います。曹操像を考える手がかりとなるような、あまり知られていない民間伝承や遺跡など、また機会があればどこかでご紹介できればと思います。

あらためて「治世の能臣、乱世の奸雄」曹操は、人間的で魅力的な人物であったことは間違いない!そう思いました。

 

岡本伸也
英傑群像代表。三国志プロデューサー。三国志や古代中華系のお仕事だけで17年以上活動中。KOBE鉄人三国志ギャラリー館長。元KOBE三国志ガーデン館長。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志グッズ、古代中華グッズを取り扱うサイトを運営。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!
http://www.kobe-tetsujin.com/gallery/

 


中国歴史ドラマ「三国志 Three Kingdoms」
放送日:2018年4月5日(木)放送スタート 月-金 午後1:00~
番組ページ:https://www.ch-ginga.jp/feature/threekingdoms/

画像:『三国志 Three Kingdoms』©中国伝媒大学電視制作中心、北京東方恒和影視文化有限公司


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