【人気漫画で話題に!】危機に瀕するアイヌ語と現代に生きる言葉

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【人気漫画で話題に!】危機に瀕するアイヌ語と現代に生きる言葉

アイヌ語といえばどんな言葉を思い浮かべるでしょうか。最近は人気漫画作品「ゴールデンカムイ」でも話題になっていますが、詳しいことはよく知らないという方が多いと思います。今回は、そんなアイヌ語の概要や現在の状況、今でも使用されている言葉などについて解説します。

アイヌの言葉について

アイヌ語は、北海道や本州の北東部、ロシア極寒地域などに住んでいるアイヌ民族の言語です。アイヌ人は独自の民族文化をもち、北海道・樺太・千島列島などに分布していましたが、現在は移住等により全国に散らばっています。こうした状況は、明治以降に不当な扱いを受けたことで、その緩和のために和人(アイヌ以外の日本人)との混血を進めていたという側面もあるようです。

アイヌのチセ
アイヌの伝統的な居住建築のチセ。アイヌの人たちはこのような家に暮らしていました。

アイヌ語の成り立ち

大和民族(日本の大半を占める民族)が使用していた日本語とアイヌ民族が使用していたアイヌ語との間には、それほど共通点がありません。古い時代から文化的にも経済的にも交流があったのに、不思議ですよね。アイヌ語の系統・語族については、研究されているものの確実なことがいえず、今でも未解決の状態といえます。そのためアイヌ語は「孤立した言語」とされているのです。
また、アイヌ語にも方言があり、大きく分けて「北海道方言」「千島方言」「樺太方言」の3つがあります。中央政府や大きな支配者がいなかったため、いわゆる「共通語」のようなものはありません。

消滅の危機にある言語

平成21年(2009)アイヌ語は国際連合教育科学文化機関により「極めて深刻な消滅の危機にある言語」と分類されました。日本では危機的状況にさらされている言語が8つあり、アイヌ語はその中でも最も危機に瀕(ひん)している状態です。

このような状況になった原因は、アイヌ語を継承しているアイヌ民族がとても少ないからだといえます。平成19年(2007)時点の推定では、アイヌ人口の約1万5000人中、10人しか流ちょうにアイヌ語を話せる人はいなかったといいます。千島列島・樺太では母語をアイヌ語とする人たちが消滅しており、北海道でも平均年齢80歳を超えた10人以下の話者しかいないのだそうです。

アイヌ語をもっと知りたい!

アイヌ資料館
萱野茂二風谷アイヌ資料館です。

アイヌ民族の言語として継承されてきたアイヌ語ですが、現在ではその話し手も少なくなっており、稀少な言語とされています。

独特な響きを持つ言葉

アイヌ語は個性的なリズムを持っています。私たちにとってアイヌ語はとても複雑で難解ですが、子音と母音が複雑に絡み合うその言葉は、ときには歌を歌っているようなイメージで、繰り返される単語になんとも言えない優しい響きを感じます。

こちらに、アイヌ語で話している昔話をご紹介しますので、ぜひ、アイヌ語の響きを聴いてみてください。

■この木たおれろ(アイヌ語音声+日本語字幕)

口承文芸のユーカラとは?

アイヌ民族に伝わる叙事詩のことを「ユーカラ」と呼びます。アイヌには文字がないため、口承でこれらが子どもたちに伝わっていきました。
近代アイヌ研究で知られる言語学者、民俗学者の金田一京助氏によれば、ユーカラには「人間のユーカラ」「カムイユーカラ」の2種類があるそうです。「人間(=アイヌ)のユーカラ」はポンヤウンペという少年の冒険譚が主になっている英雄叙事詩で、「カムイ(=神格を有する高位の霊的存在)ユーカラ」はカムイの一人称で語る神々の世界の物語。アイヌの人々はユーカラによって神や自然、人間の関係といったものを教えていきました。
現在ではユーカラの保存・復興活動も行われており、アイヌ語での弁論や口承文芸の披露が行われる機会も増えているようです。

アイヌの言葉を覗いてみよう

トナカイ

独自の特徴や表現を持つアイヌ語ですが、実は日本語の中に溶け込んだ言葉がいくつか存在しています。どのようなものがあるか見ていきましょう。

現代に生きるアイヌの言葉

現代でも標準和名としても使われているアイヌ語には、以下のようなものがあります。

■シシャモ
「susam(スサム)」からきており、語源は「susu=楊」「ham=葉」とされています。
シシャモに関しては、神様が人間達に食べ物を与えようと楊の葉を川に流したらススハムになったという話や、神木・楊の葉が水中に落下し朽ちるのを悲しんだ神が魚に変えたという話など、複数の伝説が残されています。

■トナカイ
「tunakay(トゥナカイ)」もしくは「tunaxkay(トゥナッカイ)」 からきています。この「トゥナカイ」は北方民族からの外来語のようです。

■ラッコ
「rakko(ラッコ)」が起源とされ、アイヌ語では本種を意味します。

■オットセイ
「onnep(オンネプ)」からきています。中国語を経由して「オット」に変化し、そこから「オットセイ」になったといわれています。

北海道の地名はアイヌ語が由来?

北海道にはそのままでは読めないような難読地名が多くなっており、その中にはアイヌ語由来のものがたくさんあります。

■忍路(おしょろ)…「オショロ(尻のような窪み)」という意味があります。
■馬主来(ぱしくる)…「パシクル(カラス)」からきています。
■長万部(おしゃまんべ)…「オ・サマム・ペッ(川尻が横になっている川)」に由来しています。
■白人(ちろっと)…「チロ・ト(鳥の沼)」よりついたものです。
■知方学(ちっぽまない)…「チプ・オマ・ナイ(舟のある川)」に由来します。
■分遣瀬(わかちゃらせ)…「ワッカ・チャラ・セ(水がちゃらちゃら流れる)」からきています。

消滅の危機にある言語

二風谷イタ
二風谷イタは、アイヌ文様の彫刻がされた伝統的工芸品です。

「孤立した言語」とも言われ、消滅の危機にあるアイヌ語ですが、その中には現代でも使われている言葉がいくつかあります。自分でも気づかないうちにアイヌ語を使っていたという方も多いことでしょう。この機会に、その独特な響きや魅力に触れてみてはいかがでしょうか?

 

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