忠臣蔵で有名な松の廊下のシーン。吉良上野介に激昂した浅野内匠頭が斬りかかりますが、この時、江戸城内はちょうど朝廷からの使者を接待している最中。そんな折の事件は幕府の面目に関わるとして、時の将軍・綱吉は激怒。前例にない即日の切腹を言い渡します。
抜刀した浅野内匠頭を周囲は「殿中でござる」と言って取り押さえますが、江戸城内で抜刀すること自体、理由の如何を問わず重罪だったようです。もちろんこうしたルールだけでなく、守るべきマナーと言うべきしきたりもたくさん。それは戦闘を担う武士だからこそ必要な心構えに由来するものも多くありました。
そこで、武士がお城で過ごす上で守るべき作法を5つ紹介します。作法を通して武士の生き様をぜひご堪能ください。
人に背中を見せるな・人の背中を見るな
まず基本的な振る舞いから。武士は背後から斬りかかられることを避けるため、人に背中を見せないよう立ち振る舞わなければなりません。そのため部屋から退出する時も後ずさりで出る。反対に人の背中を見ることも害意を表す無作法な行為とされ、人とすれ違った時に振り返ってはいけませんでした。
すれ違う時は左に避ける
刀は武士の魂。他人がおいそれと触れてはいけないもので、万一不用意にぶつかれば、誇りを賭けて戦わねばなりませんでした。そうした事態を避けるため、基本は左側通行。狭い道や廊下などですれ違う時にも刀が触れないよう左に避けることが作法でした。ちなみに相手の身分が上の時は完全に左側にはけて、頭を下げて通り過ぎるまで待ちます。
履物は外向きに並べる
いよいよ城に上がります。この時に履物を脱ぐ必要がありますが、脱いだ履物は揃えて外向きに並べることが作法とされました。これは城の内外で変事が起きた場合、すぐ外に出られるように準備しておくというもの。
武士はいつかいかなる時にも備えていることが求められたことが、ここからうかがえます。
「近う寄れ」にはあくまで振りで対応
城主など上役と対面する時には一定の距離を取って座しますが、その時「近う寄れ」と声を掛けられることがあります。
が、これを鵜呑みにしてホイホイ近づくことは大変な無礼とされたようです。相手の好意を邪険にしないよう近づく素振りは見せるものの、実際には近寄らないことが作法とされました。
これは間合いを詰めないことで害意がないことを示す意味もあったようです。
畳の縁は踏むな?
城内の作法として有名なもののひとつに「畳の縁は踏まずに歩け」というものがあります。
これは床下からの攻撃を避けるため、またその家を象徴する図案で飾られている縁を踏むことは失礼だからという考えがあるようです。
ただし武家の礼法を現在に伝える小笠原礼法では、敷居は踏んではいけないが畳の縁を踏むことについては禁じていないとのこと。
流派によって違うのかもしれません。
以上、日常でも使えそうな城での作法を5つ紹介しました。
現代では意味自体は失われているものの、実行すると行儀が良いとみなされたり、なんとなく立ち居振る舞いが美しく感じるものが多い印象です。
知ってる人から見れば「コイツ、わかってるな」なんて、良い評価をもらえそう。ぜひお試しください。
(Sati)
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