2019年6月に歌舞伎座で上演された、三谷幸喜による新作歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』。江戸時代にロシアへ漂流した大黒屋光太夫たちが仲間とともに故郷を目指す冒険譚を描き、劇場を笑いと感動の渦に巻きこんだ話題作が、シネマ歌舞伎となって2020年10月2日(金)より劇場公開されます。
累計発行部数200万部を誇るみなもと太郎の人気歴史ギャグ漫画「風雲児たち」を原作に、大河ドラマ「新選組!」「真田丸」の脚本でお馴染みの三谷幸喜が作・演出をつとめた本作は、歌舞伎を観たことのない歴史ファンにもおすすめの作品です。
三谷幸喜が描く、ロシアからふるさと日本を目指す予測不能の歌舞伎ロードムービー
鎖国によって外国との交流が厳しく制限される江戸時代後期。大黒屋光太夫らを乗せた、商船・神昌丸は伊勢から江戸へ向かう途中で激しい嵐に見舞われ、大海原を漂流することに。海をさまよう神昌丸には17人の乗組員たち。彼らは、再び故郷の伊勢へ戻るため方角もわからない海の上で陸地を探し求める。漂流を始めて8か月―。神昌丸がようやく発見した陸地は日本ではなく、なんとロシア領のアリューシャン列島アムチトカ島。異国の言葉と文化に戸惑いつつも、島での生活を始める光太夫たち。厳しい暮らしの中で次々と仲間を失いながらも、光太夫たちは力を合わせ、日本への帰国の許しを得るため、ロシアの大地を奥へ奥へと進んで行く。行く先々でさまざまな人の助けを得て、ようやく光太夫はサンクトペテルブルグで女帝エカテリーナに謁見することが叶うのだが…。
シネマ歌舞伎とは?
歌舞伎の持つ本来の面白さ、美しさ、そして心を打つ感動の場面の数々を身近に感じてもらいたいという願いのもと2005年にスタートしたシネマ歌舞伎は、歌舞伎の舞台公演を撮影し、映画館のデジタル上映で楽しむことができる新しい観劇スタイルです。俳優の息遣いや衣裳の細やかな刺繍まで見ることができる映像の美しさは、生の舞台とはまた違ったシネマ歌舞伎ならではの魅力となっており、従来の歌舞伎ファンもスクリーンへ足を運んでいます。歌舞伎には興味があるけど、劇場に行くまでの一歩が踏み出せない…そんな歌舞伎初心者はまずシネマ歌舞伎で歌舞伎の魅力に触れてみるのはいかがでしょうか?
作品の見どころ
松本幸四郎、市川猿之助、片岡愛之助ほか豪華キャストが出演
遭難船・神昌丸の船頭である主人公・大黒屋光太夫を演じるのは、古典から新作歌舞伎まで意欲的に取り組み、襲名披露を経てさらに活躍の幅を広げる松本幸四郎。三谷幸喜が初めて手がけた新作歌舞伎『決闘!高田馬場』に引き続き、本作でも主演をつとめます。神昌丸の乗組員・庄蔵と女帝エカテリーナの二役を演じるのは、三谷作品の現代劇やドラマでも活躍する市川猿之助。同じく神昌丸の乗組員・新蔵を演じる片岡愛之助は、三谷幸喜が脚本をつとめた大河ドラマ「真田丸」やNHK時代劇「風雲児たち〜蘭学革命篇〜」に出演しています。エカテリーナの最側近であるポチョムキンと、神昌丸の船親司である三五郎という本作に欠かせない役どころを演じるのは、「王様のレストラン」をはじめ三谷幸喜作品にも度々参加している松本白鸚。さらに、三谷作品でおなじみの八嶋智人が、光太夫たちの日本への帰還の手助けをする博物学者キリル・ラックスマンと息子のアダム・ラックスマンの二役で歌舞伎に初挑戦しています。また、歌舞伎座上演時に「教授風の男」として物語をナビゲートする役どころを演じていた尾上松也は、シネマ歌舞伎版で「語り」として声で物語の世界を案内します。
三谷幸喜が13年ぶりに手がけた新作歌舞伎
三谷幸喜が初めて歌舞伎の作・演出を担ったのは2006年に渋谷・PARCO 劇場で上演された『決闘!高田馬場』。「高田馬場の決闘」を題材にし、耳に残る印象的なオリジナルテーマ曲や、主演を勤めた松本幸四郎 (当時:市川染五郎)や市川猿之助(当時:市川亀治郎)らが早替わりで複数の役を演じる演出が注目を集めました。それから約13年の時を経た2019年6月、松本幸四郎と再びタッグを組み、『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』で満を持して歌舞伎座に初登場。 本作は2019年の大谷竹次郎賞(新作の歌舞伎および歌舞伎舞踊の脚本を対象とし、娯楽性に富んだ優れた歌舞伎脚本に贈られる賞)を受賞しています。三谷幸喜は、今回のシネマ歌舞伎版で監修としても映像編集に参加。舞台と映像の世界で第一線を走り続ける三谷幸喜が、自らの舞台作品を映画としてみなさんに届けます。
歌舞伎のホンを書いて演出もし、映画の脚本を書いて監督もする人間としては、 自分の関わった歌舞伎がシネマ歌舞伎として生まれ変わり、 各地の映画館で上映されるなんて、もう夢のような話で、 ワクワクを通り越してガクガクしています。 せっかくなので、舞台中継を映画館で観るという「体験」を越えて、 歌舞伎でも映画でも漫画でもない(原作はみなもと太郎さんの長編漫画です)、 新しい「月光露針路日本 風雲児たち」をお目に掛けたいと思っています。 お楽しみに。 三谷幸喜
原作は総発行部数200万部突破の歴史大河ギャグ漫画「風雲児たち」
本作の原作「風雲児たち」は、1979年に雑誌「月間少年ワールド」に掲載され、現在も「月刊コミック乱」(リイド社)で「風雲児たち 幕末編」の連載が続く総発行部数200万部を突破した歴史大河ギャグ漫画。手塚治虫文化賞、文化庁メディア芸術祭・優秀賞も受賞し、連載開始から約40年を経た現在も熱狂的なファンを増やし続けています。2018年には以前から「風雲児たち」のファンであることを公言する三谷幸喜が脚本を担当し、NHKの正月時代劇「風雲児たち〜蘭学革命篇〜」としてテレビドラマ化。そんな「風雲児たち」の数あるエピソードのなかから、今回はロシアに漂流した大黒屋光太夫の物語が新作歌舞伎化として登場します。
女帝エカテリーナに謁見!波乱の人生を歩んだ大黒屋光太夫
本作の主人公は、現在の三重県鈴鹿市に生まれた船頭・大黒屋光太夫。彼は外国との交流が厳しく制限されていた江戸時代にロシアへ漂着し、帰国した最初の日本人でした。天明 2(1782)年、物資を届けるために伊勢国を出帆した商船・神昌丸は、江戸へ向かう途中で激しい嵐に見舞われ、やがてロシア領のアリューシャン列島アムチトカ島へと流れ着きます。神昌丸の船長を務めていた光太夫は、船員とともに帝都サンクトペテルブルクを目指し、ついに女帝エカテリーナに謁見。帰国の許可を得ると、漂流から約9年半後の寛政4(1792)年にようやく帰国しました。出帆時には17名だった神昌丸の乗組員は帰国時には3名になっていたといいます。そんな光太夫の波乱に満ちた人生は、小説や映画などでもたびたび取りあげられています。
シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』(みたにかぶき つきあかりめざすふるさと ふううんじたち)
原作:みなもと太郎
作・演出:三谷幸喜
出演:松本幸四郎、市川猿之助、片岡愛之助、八嶋智人、坂東新悟、大谷廣太郎、中村種之助、市川染五郎、市川弘太郎、中村鶴松、片岡松之助、市川寿猿、澤村宗之助、松本錦吾、市川男女蔵、市川高麗蔵、坂東竹三郎、坂東彌十郎、松本白鸚、(語り)尾上松也
撮影公演:2019年6月歌舞伎座公演 本編尺:138分
上映劇場・上映スケジュール:https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/44/
<鑑賞料金>
一般 2,200円(税込) 学生・小人 1,500円(税込)
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