歴人マガジン

城郭研究家・西股総生の【 戦国の城・ネコの巻 】第2回「深大寺城どうでしょう?」

今回は『歴人マガジン』の編集部におじゃましてみました。去る2月19日に行った城歩きイベント『リアルぽちっと深大寺城・第2弾』を取材に来ていただいた、編集部の新人Mさんと対談するためです。

編集部M(以下M): 今日は雨の中、わざわざありがとうございます。コーヒーでも、どうぞ。
西股(以下西) : あ、お構いなく。ところで、Mさんは、城歩きの経験はあまりない、とのことでしたが。
 : 上田城や彦根城、小田原城、金沢城などは行ったことがあったのですが、土の城は今回の深大寺城が初めてですね。
西 : 土の城には足が向かない?
 : 天守がないと、見どころがよくわからなかったりして・・・。金沢城も、石垣や櫓はたくさんありましたけど、天守がないので「正直どこで盛り上がればいいのかな?」みたいな。
西 : えーっ、金沢城なんて、石垣見てるだけで一日飽きないのに・・・。
 : えーっ、そうなんですか?(笑) でも、その見どころが最初に行ったときに全然わかってなくて。戦国時代の城は土の城なんだ、天守なんか建っていないんだ、ということは、本を読んだりして何となく知ってはいるんですけど、具体的なイメージがないですよね。写真で見てもただの山か雑木林で、何もなさそうというか。

深大寺城は一見ただの雑木林。
盛り上がりポイントある?

西 : ああ、確かに、観光地として、お客さんがバンバン訪れるわけでもないですしね。「どこで盛り上がればいいの?」感も、いっそう強いかも。
 : そうそう、一人で行ってたら絶対、盛り上がりポイントわからないです(笑)
西 : で、先日の深大寺城はいかがでした?
 : 面白かったです! というか、正直ビックリしました。東京の、都心から近いこんな便利なところに、戦国時代の城がちゃんと残っているというのに、まずビックリです。
西 : 首都圏は、歩きやすくて見ごたえのある城の宝庫なんですよ。
 : それに、城歩きのイベントって、歴史に詳しい年輩の男性が参加するものっていうイメージがあったんですけど、実際にうかがってみると、若い方が多いし、女性も多かったですね。男女半々くらいでしょうか。
西 : ここ数年で、若い女性が城を歩くのは当たり前になりましたからね。いろいろな方とお話をしていて思うんですけど、城や歴史に興味をもつのに、性別や年齢は関係ない。なのに、歴史講座や城歩きツアーをやると、年輩の男性ばかり来るというのは、企画の方に問題があるんだろうなと・・・。

深大寺城イベントの模様。
女性も雑木林の中をずんずん分け入って空堀を見ています

 : そうですね。私のように城歩きの経験が少ない人間は、ちょっと興味をもっても、イベントやツアーに行くと、まわりは詳しい人ばかりなんじゃないかって、気後れしちゃうかもしれません。自分だけ何も知らなくて、話についていけないんじゃないか、みたいな。初心者限定、女性限定のイベントなんかがあると、もっといろいろな人が来やすくなるのかもしれませんね。
西 : なるほど。今回の深大寺城は、大丈夫でしたか?
 : はい! 説明を聞きながら実際に現地を歩くことで、空堀や土塁の意味を体感できました。一人で行ったとしたら、ああ、土塁がある、これが空堀なんだなあ、で終わってしまうのでしょうけれど、今回は西股先生とといっしょに歩いたので、何がどう面白いのか、自分は何がわかっていなかったのかを、実感できました。

築城者の考えや城兵の気持ちが伝わるよう、土塁を上ったり下りたり。戦国の風を体感できる瞬間
建物の柱穴跡に置かれた石の上にみんなで乗って説明を聞いています(笑)

ツアーでは、突然襲われたり・・・。

西 : 深大寺城歩きのイベントは5月14日にもう1回企画していますが、皆さんに楽しみながら戦国の城を体感していただけるよう、工夫してみようと思っています。
 : 私はまだ土の城は深大寺城しか行っていないので、他の土の城にも行ってみたいです。一つしか行っていないと、その城ならではの特色はわかりづらいかもしれませんね。
西 : ふむふむ。あ、そうそう、今日出がけにちょっと思いついて、何枚か持ってきたんですよ・・・。(と、5~6枚の縄張り図を机の上に広げる)

会議室に広げられた、城マニア垂涎の縄張り図たち。興奮。

 : うわー、これ面白い!
西 : 今度出る『首都圏発 戦国の城の歩きかた』で紹介している城の一部と、いま別の雑誌に記事を書いている城なんですけどね。ずいぶん食い付いてますね(笑)
 : だって、面白いんですもん! どの城も縄張りが違っていて、それぞれに個性的というか・・・。どうして、こんなに違うんでしょうねえ。
西 : ああ、たとえばこの城だと、ココから鉄砲を撃ちまくるつもりで造っているんですよ。だから、堀と土塁をこう組み合わせて、ここに竪堀を効かせていて、それからこっちの場合だと・・・、(と、ひとしきり説明)
 : うわ、なんか私いま、とっても贅沢なレクチャー受けてますよね(笑)でも、こうして説明していただくと、一つ一つの城が個性的なのには、ちゃんと理由というか、必然性があるんだなあ、と思います。
西 : そうですか。でも、一つ一つが他と異なっていて無限に個性的、というのが城のいちばんの魅力だと、僕は思いますよ。最初に話に出ていた天守だって、一棟一棟形が違っていて、とても個性的。しかも、どうしてその形になったのかという理由、必然性がちゃんとある。
 : へえー、そういうものなんですね。もっといろんな城を見てみたくなりました!

というわけで『戦国の城・ネコの巻』、次回は「天守って何だ?」をお送りします。

「戦国の城・ネコの巻だにゃあ~」

画像協力:いなもとかおり

☆5月14日(日)「リアルぽちっと深大寺城」第3弾開催!
詳しくはこちら → 『リアル「ぽちっと深大寺城」第三弾』
(講師:西股総生 案内・企画:いなもとかおり)

[お知らせ]
4月21日発売!

「首都圏発 戦国の城の歩きかた」
(ベストセラーズ)

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