私たちが歴史を学ぶとき、教科書で目にする「歴史画」。美術品ではありますが、写真のない時代をイメージできる貴重な資料でもあります。
現在、東京国立近代美術館の「MOMATコレクション」展では、「絵になるサムライ」のコーナーにて、軍記物語を描いた作品が多数展示されています。
画家たちがどのような思いで彼らを描いたのか、本展の見どころとともにご紹介しましょう。
真田丸でもやっぱりイケメンだった!美将・木村長門守重成
木村長門守重成といえば、戦国時代屈指のイケメン武将として有名ですよね。豊臣秀頼を主君とし、1614(慶長19)年の大坂冬の陣で初陣を飾りました。あの真田丸の戦いにも加わっています。翌年、夏の陣で死を覚悟した重成は、斬られた首すら美しくあるために、戦に向けて食事を減らし、兜に香を焚きしめて出陣したと伝わります。
そんな重成の勇ましい騎馬姿ですから、これは惚れ惚れしてしまいますね。
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ちなみに重成の妻は、秀頼の乳母だった大蔵卿局の姪、青柳。本展には、夫の兜に香を焚く青柳を描いた作品「重成夫人」(植中直斎)も展示されています。どちらの作品も太平洋戦争下に描かれたのですから、意味深長ですね。
多くの画家に描かれた平重盛、その理由は○○だったから!
左に座っているのが、平清盛の嫡男である平重盛です。
晩年には京都東山の山麓に精舎を建て、念仏三昧の日々を過ごしました。精舎は広く、柱ごとにひとつ、全部で48の燈籠が連なって煌々と輝く様子は、まるで極楽のようだったと『平家物語』は伝えています。
近代には多くの画家が重盛を描いています。重盛が主題として好まれた理由は、彼が尊王派だったから。平家の棟梁である父・清盛を諫めたエピソードをもつ重盛は、逆臣を描くことがはばかられた時代にも絵にしやすかったのだそうですよ。
六波羅小松第の邸宅に48の灯籠(灯篭)を建てていたことから灯籠大臣とも呼ばれていた重盛。
重盛ファンには嬉しいことに、菊池契月の作品の他にも「燈籠大臣」(吉村忠夫)が展示されています。それぞれの作品での描かれ方を見比べてみるのもいいですね。
他にもたくさん!源平、戦国時代のサムライたち
義経と頼朝の黄瀬川での対面を描いた「黄瀬川陣」(安田靫彦)
鎌倉を拠点に兵を挙げた源氏の棟梁・源頼朝は、平家の追討軍を退け、黄瀬川に陣を張りました。そこへ生き別れていた弟・義経がはるばる奥州から馳せ参じたという場面ですね。作者の自作解説によれば、義経には先の運命を予感させる寂しさを、頼朝には明るい将来を背負った強さと華々しさを表したといいます。両者の構図、色彩、かたちの上での対照的な描写に加え、距離を広くとった配置によって、両者の心理的な隔たりをも表した画面となっているそうですよ。
その先の運命を知っているだけに、感慨深いですね・・・。
参照:MOMATの国指定重要文化財ページでは作品画像を掲載中
http://www.momat.go.jp/am/collection/masterpieces/
平家滅亡後、清盛の娘・徳子を訪ねた後白河上皇を描いた「大原御幸」(下村観山)
平清盛の娘で、高倉天皇の后であった徳子(建礼門院)は、壇ノ浦の合戦で幼い安徳天皇とともに入水するも助かり、出家して京都大原に隠棲しました。そこへ後白河法皇が訪ねてきます。建礼門院は、自身の生涯を振り返りながら、平家の栄華と滅亡について語りはじめるのでした。
6場面に分けて描かれた絵巻は、最初と最後に風景を配置し、まるで映画のようですよ。平家の栄枯盛衰に思いを馳せながら眺めたいですね。
他にも、上杉謙信の夜襲を描いた《謙信公》等も展示されています。
2月12日までの開催ですので、見たい方はこの機会をお見逃しなく!
MOMATコレクション「絵になるサムライ」
会場:東京国立近代美術館 本館所蔵品ギャラリー(3F 10室)
会期:2016年11月22日(火)~2017年2月12日(日)
開館時間:10:00-17:00(金曜日、土曜日は10:00-20:00)
※入館時間は閉館30分前まで
休館日:月曜
公式サイト:http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20161122/
(編集部)
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