【 日本初の夜這いは誰?】『古事記』でみる日本人の性生活

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学生の頃に教科書で読んだ『源氏物語』や『平家物語』。高尚なイメージのある名作古典ですが、実は、当時の日本人の豊かな性生活がユニークに描かれているのです。そんな古典の中の性文化を切り口に、日本人の歴史と性の本質に迫った下川耿史氏の『エロい昔ばなし研究『古事記』から『完全なる結婚』まで』(ベスト新書)が好評発売中。元明天皇の詔勅により太安万侶が『古事記』の編纂を始めた日とされる和銅4年(711)の今日、9月18日にちなみ、今回は『古事記』の中から、当時の日本人の性生活がわかるエピソードをご紹介します。

日本最古の歴史書『古事記』

国宝『古事記』写本
(真福寺蔵)

『古事記』は、神代における天地の始まりから推古天皇の時代まで、神話などを含む様々な出来事が書かれた、日本最古の歴史書です。
歴史書でありながら、文学的な価値も高く評価され、神道を中心に日本の宗教や精神文化に多大な影響を与えています。伊勢神宮に祀られた天照大神や、出雲大社の大国主命など、現在も多くの神社で祭神として祀られているのはそのためです。

構成は全3巻で、「上つ巻」には序と神話、「中つ巻」には初代から15代天皇まで、「下つ巻」には16代から33代天皇までが書かれています。天武天皇の命で稗田阿礼が誦習していた『帝皇日継』(天皇の系譜)と『先代旧辞』(古い伝承)を、太安万侶が書き記し、編纂したといわれています。

日本初のストリップが芸能の始まり?

『古事記』といえば、「天の岩屋」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

(天照大神の実弟・須佐之男命の悪行に)堪忍袋の緒が切れた天照大神は、天の岩屋に籠ってしまった。このため世の中は真っ暗になり、さまざまな災いが勃発した。そこで天照大神を引っ張り出すために天宇受売命(あめのうずめのみこと)がストリップを演じることになったのである。
「(天宇受売命は)天の岩屋の戸にうけ(桶のこと)を置くと、その上に乗ってドーンドーンと踏みならし、おっぱいや女性器を丸出しにして踊った」
(『エロい昔ばなし研究『古事記』から『完全なる結婚』まで』)

この様子に八百万の神も大笑い。外の様子が気になった天照大神が戸を開けたところ、天手力男神(あめのたぢからお)がこじ開け、世界は救われます。

岩戸神楽ノ起顕
(三代豊国画)

日本初のストリップとも言えるこのパフォーマンスは、俳優(わざおぎ)の第一号として、エロっぽさを消し、宮中行事のひとつに加えられました。また、天宇受売命は芸能の神様として、鈿女神社など多くの神社で芸能の神様として祀られています。

夜ばいの第1号は、大黒さまだった!?

出雲大社にある大黒さまとうさぎの像。

大国主命、大穴牟遅神(おおあなむなぢのかみ)など様々な名前で呼ばれる大黒さま。ワニをだまそうとしたことがバレて、全身の皮をむかれたうさぎが、大黒さまの親切によって助けられる「因幡の白兎」も有名なエピソードですね。
実は、この時の大黒さまは、日本初の夜ばいに出かける途中だったのです。

兄弟に邪魔されながらも八千比売をものにした大黒さまは、八千矛神(やちほこのかみ)と名乗るようになったが、越後国の沼河比売とまぐわい(情交)をしたいと思って何度も出かけ、比売の寝ている家の戸を揺さぶって押し入ろうとした。その時比売は、「もうすぐあなたのものになりますから、今はおまちください」という意味の歌を歌った。こうして明くる日の夜、二人は結ばれたという。
(『エロい昔ばなし研究『古事記』から『完全なる結婚』まで』)

夜ばいは女性のもとに忍んで関係することとされていますが、本来はこのように女性の家や門前まで行くことを意味していました。しかし関係することに成功したケースが多かったためその意味を含むようになったようです。成功率の高さで言葉の意味が変わるとは、なんともリアルな話です。

月経でお預けを食らった倭建命

ヤマトタケル
(歌川国芳画)

12代景行天皇の皇子で、九州の熊襲征討、東国征討を行ったとされる倭建命(ヤマトタケルノミコト)。古代史における伝説的英雄も、『古事記』におけるエッチなエピソードには事欠きません。

東国征伐の途中、尾張国の美夜受比売(みやずひめ)の家に入った倭建命は、比売と交わりたいのを我慢し、討伐に出かけます。その甲斐あってか、駿河、相模、甲斐、信濃と怒涛の勢いで制圧し、比売のもとに戻ります。比売が食事のとき、大きな杯を持って献上しようとしましたが、比売の襲衣(おすい)の裾に月経の血がついていました。その月経の血をみて倭建命が歌を歌います。

「(ひさかたの)天の香具山の上をやかましい鳴き声をあげて渡って行く白鳥よ。……あなたと共寝しようと思ったけれど、あなたの来ている襲衣の裾に月が出てしまった」
これに対して比売が答えていうには、
「空高く光る日の神の御子よ。年が来て去っていくように月も来て去って行きます。まことにまことにまことに、あなたを待ちかねていたのです。だから私の着る襲衣の裾に月が立たないことがあったでしょうか」
(『エロい昔ばなし研究『古事記』から『完全なる結婚』まで』)

つまり月経もあなたと交わりたいという比売の思いにほだされて、二人は結ばれるのですが、「まことに」と3回繰り返すほど、比売の必死な様子が微笑ましくもあります。

この「月経」という言葉も『古事記』で初めて使われました。しかも『日本書紀』には見当たりません。538年の仏教伝来以来、女性の月経を不浄視する見方が広がりつつあった当時、堂々と月経の話が登場するのは、稗田阿礼が女性だったのでは?と言われる理由の一つになっています。

古典で明らかになる日本人のエッチな本質

他にも『エロい昔ばなし研究『古事記』から『完全なる結婚』では、『伊勢物語』のモデルと言われる存原業平が3000人以上の女性と関係したとされることや、馬のアソコにあだ名をつけて遊ぶ、江戸時代の尼僧たちが書かれた『きのふはけふの物語』など、古典を通して描かれる日本人のエッチな本質に迫ったエピソードが多数紹介されています。この機会にぜひ、日本人の裏の歴史に触れてみてはいかがでしょうか?

『エロい昔ばなし研究
『古事記』から『完全なる結婚』まで』
(下川耿史著・ベスト新書)

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