いろはのコラムも完結し、幕末の基本は押さえたということで、今回からは知られざる人物にスポットを当ててみる。
写真から漂う、ただ者ではない雰囲気。幕末初期に世の中をかなりこねくり回した男。まずはその出自から追ってみよう。彼は武士ではない。
結構金持ちの家だったそうな。子供の頃から神童と呼ばれ、運動神経もバツグン。長身で容姿端麗、とても酒屋レベルで終わる男ではなかった。
そんな清河がティーンの頃に思っていたことー
どでかい野望を持った18歳は、故郷を離れ江戸に出る。当時有名だった塾と剣の道場に通い、メキメキと頭角を現す。そして最終的には坂本龍馬も通った千葉道場で最高位の免許皆伝を得ただけでなく、当時の最高学府、昌平坂(しょうへいざか)学問所にも入学。
いまで云うところのー
その後、清河は江戸で自分の塾を開く。しかも剣と学問が同時に学べるところはこの「清河塾」だけだったようだ。ここに幕臣や薩摩藩士などが集まり、外国に日本を侵略されない方法を練りに練った。清河はどんどんカリスマ性を身につけ、大きな影響力を持ちはじめる。そして、ある企画を実行に移す。
徳川の将軍が京都に行くときの護衛という名目で、清河が浪士募集を幕府に献策。これに集まったのが近藤勇や土方歳三。
つまり清河はー
京都に着いた清河は、ここでとんでもないことをプレゼンした。
一同を寺に集め、「我々は幕府のために京都に来たのではない!尊王攘夷のために集まったのだ!」浪士一同、口アングリ。でもその雄弁と存在感に圧倒され、200人以上いた男たちは清河に賛同。攘夷実行に向け、江戸へ戻ることに。つまり清河は、幕府を騙し、幕府を利用することで「清河の私兵」を創り上げたのだった。ちょっとした革命だ。
そんな中、ごく数人が、「当初の目的と違う」と主張し、京都に残る。それが後の新選組になる。
結果、幕府は魔術的な反幕府運動をする清河を危険人物としてマーク。刺客を放ち、いまの東京麻布の橋の上で斬られて死ぬ。享年32。
いまでこそマイナーな人物だが、こういう激動型の人間が幕末にはいた。酒屋のせがれが時代を動かす、なんか痛快なのでちょっと知ってほしい清河八郎。
彼は幕末のー
【プロフィール】
渡部麗(わたなべりょう)
歴史クリエイター。
東京・御茶ノ水で歴史コミュニケーションメディア「レキシズル」を主宰。所有しているショットバーの水曜日を「レキシズルバー」として開放。歴史好きの交流を活性化しながら、畳敷きのイベントスペース「レキシズルスペース」で歴史をポップにわかりやすくプレゼンする「TERAKOYA」などを開催。
「レキシズル」オフィシャルサイト
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