上杉謙信と武田信玄は戦国時代最大の好敵手として知られています。
その二人が直接対決した1561(永禄4)年の第四次川中島の戦いは戦国史上最大の激戦であったと伝えられています。しかしそもそも謙信と信玄はなぜ戦うことになったのでしょうか?
戦の始まり、川中島に両雄見える
甲斐を統一した信玄は、次の狙いを国衆が相争う信濃に定めます。
信玄の前に信濃の武将たちは敗れ、領地を追われました。村上義清や高梨政頼などは謙信を頼り、謙信は信濃国衆の領地を取り返すと約束します。これが謙信と信玄が戦うきっかけとなりました。
謙信と信玄が最初に戦った第一次合戦、通称布施の戦いが始まったのは、1533(天文22)年。
信濃国衆を応援する謙信と信濃一統を狙う信玄がそれぞれ軍を率いて、川中島に出陣したのです。
この時は、北信濃の諸城の攻略をし合うだけで、直接戦うことはありませんでした。
信濃国衆支援の謙信と信濃支配を狙う信玄という構図はこの後も続き、謙信と信玄は度々川中島に出陣することになるのです。
第四次合戦始まる
1561(永禄4)年、謙信は関東管領に就任し、関東遠征を決行すると、北条氏康を小田原城に籠城させました。
その隙をついて、信玄は川中島に海津城を築きます。この信玄の動きに対し、謙信は急ぎ越後に帰還、再び川中島に向けて出陣したのです。
川中島が信玄の手に渡れば、謙信は背後を脅かされ、関東への遠征が難しくなります。
また信濃の国衆との約束も果たせません。謙信は海津城を落とすべく、1万3千の大軍を率いて川中島の妻女山に陣を張りました。
一方の信玄も2万の軍を率いて甲斐から出陣し、第四次川中島合戦の幕が開けたのです。
川中島に着いた信玄は茶臼山に布陣しますが、睨み合いの末、信玄は海津城に入城しました。
しかし、それでも膠着状態が続くのです。
業を煮やした信玄は、謙信撃滅の策を家臣に求めます。
そこで、山本勘助が別動隊によって謙信本陣を急襲、追い出された謙信を信玄が八幡原で挟撃すると献策します。世にいう啄木鳥戦法です。
信玄はその策を採用し、別動隊を編成。夜陰に乗じて、謙信本陣に向かわせました。
この時、謙信は炊煙の多さから信玄の動きを察知しており、密かに妻女山を下りて八幡原に進軍したのです。
霧煙る早暁の八幡原で、機先を制したのは謙信でした。
手薄になった武田本隊に車懸りの陣で襲い掛かります。武田軍は危機に陥り、 信玄の実弟・信繁、諸角虎定などの有力武将が相次いで討死していきます。啄木鳥戦法を献策した軍師・山本勘助も永禄4年9月10日に討死したとされています。
信玄は窮地に陥りました。そこに信玄の首を狙う白頭巾の武者が一騎駆けしてきます。
三太刀七太刀
白頭巾の武者の刃を信玄は軍配で防ぎます。この折に信玄が負傷した、軍配に3回の攻撃で7つの傷がつけられたと言われており、その太刀裁きから武者は謙信だといわれています(謙信配下の猛将・荒川長実だという説も)。
ただ、信玄が窮地に陥ったのは確実で、信玄は本陣まで崩される苦戦を強いられたのです。
謙信の猛攻の前に劣勢に立たされた信玄ですが、別動隊の到着によって形成が逆転します。
数に勝る武田軍の挟撃に、上杉軍も撤退を余儀なくされ、逆に謙信が劣勢に立たされました。この時、殿(しんがり)を務めた謙信配下の甘粕景持が武田軍の猛攻を凌ぎ切り、謙信の帰還を助けたのです。
この戦いで、上杉軍の戦死者3千、武田軍の戦死者4千とも言われています。
戦いの意義とは
第四次川中島合戦は激戦となった割に、両軍とも得る所はありませんでした。
ただ、謙信・信玄が互いにその力量を認め合ったのは確かです。以後、謙信と信玄が直接激突する事態は発生していません。戦国史上最大の激戦である第四次川中島合戦は、謙信・信玄という二人の英雄が互いの器を確かめあった戦だったといえるのではないでしょうか。
(黒武者 因幡)
大河ドラマ「風林火山」では最終回で第四次川中島の戦いが描かれています。信玄役・市川亀治郎さんと謙信役・GACKTさんの一騎打ちは必見です!
【ストーリー】
戦国時代の乱世、最強軍団といわれた甲州武田軍。その軍旗は「風林火山」。 武田軍の孤高の軍師・山本勘助(内野聖陽)は、武田信玄(市川亀治郎/市川猿之助)こそ唯一の覇者と信じ、天下取りの夢を賭けて、さまざまな軍略をめぐらせる。しかし、その行く手には越後の龍・上杉謙信(GACKT)が立ちはだかる・・・。放送日:2017年2月18日(土)スタート 土曜 朝7:00~ 3話連続
番組ページ:http://www.ch-ginga.jp/movie-detail/series.php?series_cd=1845
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