自分の知っている城が数値化してあると、共感したり気づけたりして楽しい。本書は登場する32城が「防御能力」「規模」「政治的価値」「歴史性」「城址保存度」「観光地評価」の6項目で10段階評価され、レーダーチャート化されている。その城の歴史的ストーリーなどとともに、客観的な評価を知り比較することができる。
取り上げられているのは、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の城。三英傑がどんな城づくりをし、城をめぐってどのように戦い、歴史がどう変化していったのかもわかる。
「覇王・織田信長」の章、「覇王と戦った城」では、小谷城が取り上げられている。小谷城というと、信長と敵対した浅井長政が姉川の戦い後に籠り落城した城、として登場することが多い。敗者の歴史はあまり語られることはないのだが、小谷城を知るには、やはり信長が台頭する前の北近江の情勢、浅井氏、朝倉氏について知っておいたほうがいい。そのあたりのことも本書には書かれていて、うれしくなる。
ちなみに、小谷城の観光地評価は10段階中の「5」。本書が出版されたのはちょうど大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」が放送された年なのだが、このドラマをきっかけに小谷城は整備されかなり登城しやすくなった。今ならばもう少し高い評価がついたかな、などとツッコミを入れるのも楽しいものだ。ちなみに防御能力は「7」。朝倉氏が手を入れた部分も含めこの時代の山城として考えると、私ならきっと、もう少し高く評価してしまう。
「神君・徳川家康」の章、「神君に攻められた城」で掛川城が取り上げられ、今川氏の末路が語られているのもおもしろい。掛川城というと、家康の関東移封後に築かれた山内一豊の城として語られがちなのだが、本来は今川家重臣の朝比奈氏により築かれ、家康が今川氏真を追いつめ没落に追いやった城なのだ。桶狭間の戦いで今川義元が没すると人質だった家康は今川家から独立し、三河へ戻りやがて遠江へと勢力を拡大した。駿河に侵攻した武田信玄から逃れた氏真が籠城し家康と戦ったのが、掛川城だった。
掛川城の北東、第一小学校北側の天王山龍華院に掛川古城という城があるのだが、これは家康による今川攻めの際、家康が掛川城攻略の本陣地とした城だ。文明年間(1469~87年)に朝比奈泰煕が築き、掛川城に本拠が移された後も出城として維持されたといわれる。大規模な空堀も残り、訪れる甲斐がある。本書に書かれているような歴史的ストーリーを知ると、近隣の城を訪れるのも楽しくなるというものだ。
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(文・写真/萩原さちこ)
【城メグ図書館】
第1回:あんな城やこんな城も登場!『真田太平記』
第2回:名城を逸話で語る!『日本名城伝』
第3回:信長の安土城はこうして生まれた!『火天の城』
第4回:スタート地点は安中城!『幕末まらそん侍』
第5回:『旅好き女子の城萌えバイブル』&『城めぐり手帖』
第6回:躍動感がとてつもない!『センゴク天正記』