【東京ゲームショウ2019にて】越後谷プロデューサーが『三國志14』にかける思い

エンターテインメント

去る9月12日から15日まで、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2019」。4日間の来場者数は26万超と、今年も大きな盛り上がりを見せていた。

生来ゲーム好きの筆者も2日目(9月13日)のビジネスデイに会場へ。来春(2020年1月16日)発売予定の『三國志14』をはじめ、おもに歴史に関連する新作ゲームの情報などを写真とともにお届けしたい。

ということで、真っ先に向かったのは「コーエーテクモゲームス」のブース。「歴史ゲーム」といえば、もうここしかないというほどの圧倒的な存在感がある。毎年ステージイベントも盛大に催され、同社のゲームの生みの親であるシブサワ・コウ氏をはじめとする制作陣や、ゲストたちが楽しいトークショーなどを行っている。

ステージ前のコンパニオンさんにスマイルをもらい、『仁王2』の迫力あるオブジェなどを眺めつつ、『三國志14』の試遊コーナーに辿りついた。『三國志14』は同社の看板作品、「三國志」シリーズの約3年ぶりのナンバリングタイトル。初代『三國志』から数えて14作目、来年で35周年を記念する作品でもある。

開発も大詰め、ますます期待が高まる『三國志14』。日田慶治氏の迫力あるメインビジュアル、坂本英城氏によるBGM。システム面では一枚マップによる「国盗り要素」の再現、武将の大幅増加など、さまざまな特徴やウリとなる部分が多くのメディアで紹介されている。

さて、そんな大作を手がけるのは、いったいどんな方なのか。『三國志14』のコーナーで、プロデューサー・越後谷和広(えちごやかずひろ)さんにお会いできた。しばしお時間をいただき、ゲーム開発の背景や「三国志」への思いをうかがった。

株式会社コーエーテクモゲームス エンタテインメント事業部 シブサワ・コウ ブランド シニアマネジャー プロデューサー 越後谷和宏さん

 

――最初にうかがいたいのですが、越後谷さんはどんなきっかけで「三国志」に触れられたのでしょうか。

越後谷:最初は、父が読んでいた横山光輝さんの漫画版『三国志』です。60巻のコミックスではなく「コミックトム」という雑誌で連載中のものだったので、続きが気になってワクワクしながら読みました。そのあとは中学生時代に通っていた塾の先生のうちにパソコンがあって、そこにあった初代『三國志』で遊びました。いつしか勉強よりもそっちに夢中になっていました(笑)。

――その出会いが、今につながっているんですね。

越後谷:私は秋田で生まれて、横浜の大学へ通うようになったんですが、なんとなく「ゲームをつくりたいな」と思って、入社試験を受けて採用されたのが今いる会社(コーエーテクモゲームス)でした。でも就職活動をするまで会社が横浜にあることも知らなかったんです。「三國志」シリーズは4作目ぐらいまで遊びましたが、それからしばらくは「三國志」のことも忘れていた時期でした。

――入社後は、やはり「三國志」シリーズを?

越後谷:いいえ。何人かの同期は「三國志」シリーズの制作チームに入りましたが、私はまったく縁がありませんでした。これまでに関わった作品としては『ゴルフ大会』、『三國志英傑伝』、『真・三國無双2 猛将伝』などで、ほかにも『戦国無双』や『太閤立志伝IV』ではメインプランナーを務めました。どちらかといえばアクション系や「無双」系が主流だったんです。今回の『三國志14』で、初めて本格的に「三國志」シリーズに関わったことになります。

――「無双」系といえば、前作『三國志13』(2016年)では「無双」シリーズの立ち上げに大きく関わられた、鈴木亮浩(あきひろ)さんがプロデューサーを務めておられましたね。

越後谷:そうです。当時、私も鈴木たちが開発した『三國無双』の現場を、同じチームにいたので真横で見ていました。『真・三國無双』が出るまえの対戦格闘ゲームです。開発中は、私の好きな張飛が弱かったんですよ(笑)。テストプレイをすると、張飛はパワーはあるけどモーションが大きくて当たる前にやられることが多かったんです。「もっと強くしてバランス良くして」と伝えた覚えがあります。懐かしいですね。

――あ、越後谷さんは張飛がお好きなのですね。

越後谷:はい。「横山三国志」では、最初のほうからデカキャラとして登場するんですが、強くて正義感にあふれ、とてもインパクトがありましたね。強いけど酒で失敗したりするなど欠点が多いのも魅力だと思っています。晩年は張郃を破るなど知略面でも成長を見せます。「正史」を読むと、部下にやさしくなかったという記述もあるので、少し見方が変わったところもありますが、やはり魅力的なキャラクターであることは間違いないです。ほかには、呂布も大好きですね。強いのに脆い、張飛と似たところがあって。万能キャラよりも欠点のある人のほうを愛してしまいますね。

当然ながら、今回も呂布が戦場で大活躍する(東京ゲームショウ2019『三國志14』試遊台にて。画面は開発中のものです)

――張飛や呂布などの猛将は、今回の『三國志14』でも大いに活躍するかと思いますが、その武将数が過去最多の1000人に達するそうで驚きました。コーエーテクモ「三國志」公式Twitterでは、広報スタッフの方から登場武将が紹介され、それに対してファンの方が名前を予想するといった交流で盛り上がっていますね。

越後谷:はい、ファンの皆さんとの交流にもなって、思いのほか盛り上がってくれています。武将数については、まず過去最多をめざしたいということはもちろんですが、システム面では必然でもあるんです。今回はゲームを進めるうえで、武将の「質」も重要ですが「数」も大切な要素です。頭数をそろえたほうが有利になっているため、それを踏まえての増加です。Twitterでも話題のように、前作から150人も増えるので、相当にマイナーな武将もたくさん加わります。

曹操の挙兵を援助した衛茲(えいじ)。おそらくシリーズ初登場か。コーエーテクモ「三國志」公式twitterより

――千万(せんばん)、張昌蒲(ちょうしょうほ)など、相当に三国志に詳しい人でも「あれっ、誰だっけ、このひと?」と思わせるような。

越後谷:三国志の物語を紡ぐのは君主、武将から名もない兵士や民衆までさまざまです。そうしたなかで「正史」などに1回でも名前が出てきているのは、やはり相当な人物だったわけですよね。大きな歴史のなかではマイナーかもしれませんが、そういう人たちをゲームに登場させてスポットを当ててあげたいと。たとえ能力は低くても、ゲームをプレイするなかで役に立って「居てくれてありがとう」と思っていただける展開があるのではないかと考えています。

――武将の能力値を決定するのも毎回、苦労されておられると思います。

越後谷:能力値については「正史 三国志」や「三国志演義」はもちろん、最近のファンの方々の評価や考察なども含めて厳正に決めています。たとえば、関羽は初期作品ではスーパーマンみたいな万能型でしたが、近作では武力型の武将に変わってきています。でも、それでも「納得できない」「この人の武力はもっと高い」といったご意見も毎回いただきます。もちろん、そういったご意見は毎回、ありがたく拝見しています。それも踏まえたうえで、私たちなりの基準をもとにしっかりと能力設定を行なっています。スタッフの中には専門家に負けないぐらい、三国志の知識が豊富な者たちも何人かいます。もちろん特定の部分や武将だけに詳しい者もいますし、制作陣だけで50~60人ものスタッフが専門家チームのようになって何度も議論をしていますから、ゲーム上の武将たち、一人ひとりのパラメータにはスタッフの「魂」がこもった数字であると考えていただければと思います。

――越後谷さんがプロデューサーとして重視した部分はどんな点でしょうか。

越後谷:原点に立ち返って、シンプルにわかりやすく、といったところでしょうか。「三國志」は長く続いているシリーズですし、ずっと関わり続けているメンバーもいます。ただ、それだけにマニアックになりすぎてしまったところもあると思います。私は今まで深く関わってこなかった分、一歩引いた視点から見られますので、開発側の「常識」となっているところでも、私が見て「分からない」「理解が難しい」と思ったときは「もっと分かりやすくしてほしい」と、積極的に意見を伝えるようにしています。私が当時、楽しんだのと同じで、とくに中学生や高校生が遊んで楽しいと思ってくれるものにしたいですね。

――越後谷さんが初代『三國志』を遊ばれたのは中学生時代でしたね。私も高校時代でした。

越後谷:そうなんです。「三國志」や「信長の野望」シリーズの魅力として、プレイすることで歴史に興味が持てる、それをきっかけに、もっと詳しくなれるところだと思うんです。学校の歴史の成績が上がったという方もいらっしゃるかもしれない。『三國志演義』がもっと面白くなるし、「じゃあ正史も読んでみよう」となる。それぐらい、誰もが面白く遊べて役に立つものであってほしいというのが私の願いです。

――発売まで数カ月。今後の開発にかける思いと、皆さんへのメッセージを。

越後谷:日本以上に本場の中国や、台湾、韓国などでの期待の高まりを感じています。改めて「三國志」シリーズに対する熱や影響が根強いもので、凄いものだなあということを噛み締めているところです。それに応えられるよう、発売日まで全力を尽くして仕上げたいと思っています。10月11日からは、コンピュータのAI強化のためのプレイデータ収集版も配信します。皆さんのプレイが製品版『三國志14』に関わりますので、ぜひプレイしていただければと思います。よろしくお願いします。

インタビュー後、いざ試遊!

インタビューを終えて、改めて制作チームの三国志への情熱や愛を感じた。その結晶である『三國志14』、私もさっそくプレイさせていただいた。試遊版ということで、プレイできるのは曹操軍だけ、呂布軍の本拠地・濮陽(ぼくよう)を落とすのが目的という具合に簡略化されている。

(東京ゲームショウ2019『三國志14』試遊台にて。画面は開発中のものです)

目的が「濮陽の攻略」なので、とにかくそこへ向けて曹操や配下武将たちに兵を割り振って出してみた。しかし、思いのほか、部隊の行軍にまとまりがない。武将たちの性格によって部隊の動き方も異なるそうなのだ。まごまごしているうちに、呂布も応戦のための兵を出してきた。思いのほか大軍で、まともに当たれば太刀打ちできそうにない。しかし、部隊への指示の仕方が悪いのか、それとも遅いのか、あっという間に包囲され、次々と壊滅させられた。

(東京ゲームショウ2019『三國志14』試遊台にて。画面は開発中のものです)

そのうえ、背後からは袁術軍が攻めてきて完全な挟み打ち。なるほど、これはある程度、武将たちの数がいないと、とても対応できない。陳留から留守部隊を出撃させるが、袁術も大軍なので歯が立たずに全滅の憂き目にあった。そして呂布軍の集中砲火で陳留城を落とされ、あえなくゲームオーバー。初プレイは惨憺たる結果に終わる。おそらく囮(おとり)の部隊でフェイントをかけて、CPUの裏をかかないと勝利できないようだ。この歯応えがいい。ぜひとも製品版ではリベンジしてみたいと思う。

名残り惜しくも、ほかの出展社のブースも見てみよう。

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