先日訪れた九州で、行く前から誰に聞いても「あー阿蘇はいいですよ〜」とのコメントばかり。
期待は高まるばかりでしたが、やはり阿蘇はその期待を裏切りませんでした。
この阿蘇山一帯は、10万年前にできた、世界最大級の火山カルデラという地形。この大自然を目の前にして、人々はそこに神の意思を感じたのでしょう。
古くから伝わる阿蘇開拓の神様として「健磐龍命(タケイワタツノミコト)」の伝説なども残っており、なんと紀元前281年に創建された阿蘇神社という神社をはじめ、パワースポットも多数。また活火山帯であることから、温泉も各地で湧き出ており、毎年多くの観光客で賑わっています。
そしてこの素晴らしい阿蘇のふもとの奥に、黒川温泉という古い歴史をもつ温泉街があり、そこに私は一泊しました。
山深い街道と、筑後川の源流になる渓流を挟んで二十数件の旅館が建つ小さく美しい温泉街は、存続の危機を乗り越えるべく、1980年代より地元の方々が「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」というキャッチフレーズで一致団結。力を併せて地道にPR活動を続けてきた結果、一年を通じて世界からも観光客が訪れる九州でも有数の人気温泉街に。
町の人達が協力して整備した自然の景観と、丁寧に自然と調和しながら生きる温かさが作り出した、なんとも安らぐ雰囲気が多くの人に愛され、リピートしてきたのでしょう。
今回私がここに泊まろうと思ったのは、本年4月公開されたクリエイティブプロジェクト「KUROKAWA WONDERLAND」を知ったことがきっかけ。
恥ずかしながらこの温泉について詳しくなかった私ですが、友人が参加し、世界各地のコンテストでアワードを獲得という快挙を成し遂げた作品を観て「ここは外せない」とルートを組んだのです。まずは本編映像をご覧ください。(6:59)
KUROKAWA WONDERLAND from Yasuhiro Tamura on Vimeo.
この「KUROKAWA WONDERLAND」は「黒川温泉の人たちと協力しあい、黒川のPRにもつながる自分たちのポートフォリオを協働で制作する」というプロジェクトで、クリエーター側はノンバジェット、黒川側は撮影期間中の宿泊施設、食事などのすべてのアテンドを提供する、というユニークな取り組みでした。
音楽・映像・web・写真・ヘアメイク・スタイリストというそれぞれのクリエイターがとことんまで本気で取り組んだ成果が、このwebサイトに集約されています。
最新式のドローンやカメラを駆使した大自然の風景や、この地の歴史や伝説と共に生きてきた人々の温かい生き方が、さまざまなクリエイティブにより余すところなく表現され、みなさんをあたかもそこにいるような不思議な感覚にさせてくれたのではないでしょうか。
さらに凄いことに、本編とは違う監督が撮影した、インタビューや制作風景のメイキングムービー、webサイトも他の映像賞を受賞、各業界で大きな話題に。
ちょっと長い(約15分)ですが、本編を観たあとに見ると、さらにこのプロジェクトの素晴らしさを感じることができるはず。
こちらもぜひご覧になってみてください。(15:04)
KUROKAWA Co-Creation Story from Kazuhito Takazawa on Vimeo.
地方の人口減少が深刻な社会問題となっている昨今、各地方にある素晴らしい歴史的資産を守り、新しい取り組みに挑戦しながら後世に伝えたいという地域の思い。
そしてその思いを仕事ではなく、自らのクリエイティブを存分に活かした作品を作って応援したいというクリエイターの思い。
この二つの思いが繋がったことが、これだけクオリティの高い作品を作る原動力になったと感じます。
実際に私はこのwebを観たことがきっかけで、黒川温泉を知り、そして訪れ、予想どおり最高な時間を過ごせました。
みなさんもご覧になっていただき、さらに機会があれば黒川温泉に訪れ、その素晴らしさを実感してほしいです。
このプロジェクトにより観光客が増え、温泉は観光客が増えることで町を守っていくことができ、さらにクリエイターは、制約がないからこそ存分に思いを込めた作品を作り、それが世の中に出るチャンスにもなる。まさに一石三鳥のプロジェクトなのです。
このプロジェクトを観光客の誘致に悩む地方の方、また現役クリエイターはもちろん、これからクリエイターを目指す人など、多くの方に知ってもらえたらと思います。
将来、こういった素晴らしい映像が日本各地で製作され、私らはどこに行くか迷ってしまう、そんなふうになったらいいなあ。
だって日本には、私らの知らない素晴らしい場所がまだまだたくさんあり、そこにはその土地を愛して住まう人がたくさんいるのですから。
参照元:
「黒川温泉」黒川温泉観光旅館協同組合オフィシャルサイト
「KUROKAWA WONDERLAND」オフィシャルサイト
「KUROKAWA Co-Creation Story」ドキュメンタリーサイト
「あそぶらりネット」阿蘇市観光協会オフィシャルサイト
副編集長Y
コメント