いまや海外の文化人や実業家にも「Zen」として注目される「禅」。
そんな日本の禅の世界を紹介する特別展「禅―心をかたちに―」が東京国立博物館(トーハク)にて10月18日から11月27日まで開催されています。
同展は春に京都展が開催されましたが、このたびの東京展では新たに東京展限定の名宝もずらりと加わりました。
それでは早速、東京展の主な見どころを紹介していきます。
見どころその1:実は禅宗の大人物、達磨さん
禅とは簡単に言うと「文字や教典に頼らず、師との座禅や禅問答、あるいは日常生活の中で自分の心を見つめ直して人生の答えを見つけ出す」という教えです。
会場では江戸時代の名僧で臨済宗の中興の祖・白隠禅師(白隠慧鶴 はくいんえかく)の描いた、迫力満点の「達磨像(だるまぞう)」が皆さんをお出迎え!
達磨さんって禅に関係があるの?と驚きますが、実は達磨はもともとインドの僧で、6世紀初めに中国に渡って禅の教えを伝えた方。
彼から今日の中国と日本の禅宗が始まったと言えるため「達磨大師」「禅宗の初祖」と呼ばれる高僧なのです。
この達磨を描いた水墨画で名高いものが、画聖・雪舟の「慧可断臂図(えかだんぴず)」です。
慧可という僧が入門の決意を示すために自分の腕を切り落として達磨に見せた、という逸話を描いた、雪舟77歳の時の大作です。まるで太いマーカーで描いたかのような線が今見ても斬新ですね。
見どころその2:豪華で可愛い、狩野探幽の「水吞みの虎」
禅宗が日本に本格的に導入されたのは鎌倉時代です。禅僧たちは中国の最新思想や学問などを学んでいたことから、鎌倉幕府そして室町幕府に重用されました。
戦国武将たちも、禅僧を精神鍛錬や外交のブレーンとして積極的に採用しました。このため、戦国時代から江戸初期の禅宗寺院には武将の好んだ華麗な障壁画が多く描かれ、今に伝わっています。
こちらは南禅寺にある狩野探幽の代表作の1つ「群虎図」です。中でもこの水を飲む可愛い虎は「水吞みの虎」と呼ばれています。
「群虎図」は全期間を通じて公開されていますが、「水吞みの虎」の場面は10月18日から11月6日までの公開です。
見どころその3:室町将軍や織田有楽斎ゆかりの品々
東京展では、11月8日の後期展示からも多くの名品が公開されます。
その中で注目したいのは国宝「瓢鮎図(ひょうねんず)」、そして天下の名茶器「唐物文琳茶入 銘 玉垣文琳(からものぶんりんちゃいれ めい たまがきぶんりん)」です。
室町幕府4代将軍・足利義持が「つるつるのヒョウタンでぬるぬるのナマズを捕まえるにはどうしたらよいか?」という禅問答をしかけ、それに有名禅僧たちが冗談を交えて答えた・・・という話から生まれたのが「瓢鮎図」です。水墨画の大家・如拙(じょせつ)が絵を描き、31人の僧が詩文を添えています。
今で言うとツイッターなどをまとめたまとめ記事のようですね。固い「禅」のイメージがちょっと変わる文化財です。
禅の教えは、水墨画や茶の湯など日本の様々な文化に大きな影響を与えてきました。
東京展では禅が発展させた日本文化として「茶の湯」にスポットをあて、織田有楽斎と彼の愛した茶器を紹介しています。
そのうちの1つがこの「唐物文琳茶入 銘 玉垣文琳」です。
この茶器は、織田有楽斎が所有したのち豊臣家に伝わった茶入れで、大坂夏の陣で被災したところを徳川家康の命令で救い出されたというエピソードを持つ逸品です。
「玉垣文琳」「織田有楽斎像」はともに東京展のみの展示品ですので、この機会に是非とも観てみたいものですね。
期間中は僧侶が語る「禅トーク」や尺八コンサートなどたくさんのイベントも行われます。
なお前後期の大きな展示替含め、会期中には展示替が何回かありますので公式サイトの情報を十分にご覧になって下さい。
現代の迷える私たちも、心をとぎすまして武将たちの精神世界に分け入ってみませんか?
特別展「禅―心をかたちに―」概要
開催期間:平成28(2016)年10月18日(火)~ 11月27日(日)
主な展示替え:前期展示10月18日(火)~11月6日(日)/後期展示11月8日(火)~11月27日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
休館日:月曜日
開館時間:午前9時30分から午後5時
※会期中の金曜日と10/22(土)、11/3(木・祝)、5(土)は午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)「禅―心をかたちに―」公式サイト:http://zen.exhn.jp/
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