江戸時代の実話をもとにした映画、『殿、利息でござる!』が5月14日に公開。羽生結弦が演じる“伊達政宗の子孫”にも注目。

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江戸時代の実話をもとにした映画、『殿、利息でござる!』が5月14日に公開。羽生結弦が演じる“伊達政宗の子孫”にも注目。

5月14日に公開の『殿、利息でござる!』は、江戸時代の仙台藩で250年前に起きた出来事を映像化した歴史映画だ。試写会で観て驚いた。コメディ映画かと思っていたらコメディではない、ガチな内容だったからである。

舞台は重い年貢や労働に苦しみ、破産する人、夜逃げする人が相次いで、さびれ果てた宿場町。ふつうの時代劇であれば、そこに腕利きのサムライが現れ、悪人たちを懲らしめて村を救う・・・といった展開を予想しがちだ。しかし、この映画は史実なので、そういうカッコいい展開にはならない。

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主人公は町人や商人といった庶民。主人公の十三郎(じゅうざぶろう)を阿部サダヲ、その相棒の篤平治(とくへいじ)を瑛太が演じる。基本的に侍(仙台藩の役人)には逆らえない人たちだから、どうにかして、お上(かみ)に自分たちの声を聞いてもらおうとする。

やがて考え出したのは「藩に大金を貸し付けて利息をとる」というアイデア。もちろん小金では役人たちは動かないから、1000両(3億円)を用意するという、とてつもない目標を立てるのだ。

「前代未聞の頭脳戦」と銘打たれるだけあって、地味ではあるが、町人たちの身体を張った行動は、いちいち泥臭く、リアリティがある。観る人の多くは彼らに共感を覚えるはずだ。江戸時代の百姓や町民が重い年貢に苦しんでいたことは誰もが知っているが、その年貢を支払う側を取り上げた作品は、今までにあまり作られてこなかった。

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そんな、「ありそうでなかった」作品が、21世紀になって極めてリアルに映画化されたのは興味深い。何より面白いのは、この話が実話であることだ。

映画『武士の家計簿』(2010年)を見た人から『私の住んでいる仙台でも同様の面白い話があるので、ぜひ本にして、映画にしてください!と連絡をいただいたんです。その熱意が伝わって、書くことにしました」と話すのは、この映画の原作となった『無私の日本人』の著者で、歴史学者の磯田道史さんだ。

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磯田さんは仙台市民から紹介された古文書『國恩記』を、東大の図書館で読むうちに涙がポロポロこぼれ、隣にいた学生に怪訝な顔をされた、とも語る。(写真は松竹本社にて)

この奇跡の感動物語を、後世に伝えなくては、と思って原作を書いたんです。そして監督(中村義洋)が撮り上げた作品をみて、ボクは鳥肌が立ちました。すごい映画でした。女優さんだけでなく、広告代理店のおじさんまで試写室で泣いていました。ただの人情映画ではありません。資本・価値・貨幣・家族・共同体・権威・支配・・・いろんな問題を問うた大きな作品です。この映画を観てください。そして感じたことを人に語ってください。ぼんやりとした何かを変えるために」(本作のプレス資料より抜粋)

そんな磯田さんの思いを、ぜひ受けとめてみて欲しい。さて、この映画のもうひとつの見どころが、フィギュアスケート選手の羽生結弦(ゆづる)さんが伊達重村(だて しげむら)という殿様役で出演していることだろう。羽生さんは、ご自身の故郷である仙台に実在した人物たちの感動秘話に出演を快諾したという。

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重村は、あの「独眼竜」伊達政宗の子孫であり、仙台藩の第7代藩主である。
この映画に登場する重村は、羽生さんが演じるだけあって気品が漂い、本当の名君に見える。史実の重村が名君だったかといえば、そうとも言い切れないのだが・・・まあ、そんなことを考える暇もないほど、彼の出演シーンは素晴らしく、爽快なインパクトがある。
主演の阿部サダヲさんも、撮影当日まで羽生本人と全く会わなかったというから、そのシーンはとても臨場感に溢れている。一見の価値ありだ。

タイトルから、コメディ映画のように思う方もいるだろうし、実際にコミカルなシーンも散りばめられている。一方で、250年前に実在した人たちが私利私欲ではなく、郷土のため、人のために奔走する姿を観ていて涙が浮かんできた。これぞ日本人にしか作れない、日本人のための映画だろう。歴史好きの方にも、そうでない方にも勧めたい作品である。(哲舟/上永哲矢)

■『殿、利息でござる!』公式サイト
http://tono-gozaru.jp/

(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

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