戦国の世が終わり、平和で文化的な生活を享受できる江戸時代に入ると、町民の中でもオシャレを楽しむ人が多くなってきました。江戸の町で人気のヘアスタイルをご紹介します!
スタンダードながらも自由度の高いヘア「丁髷(ちょんまげ)」
江戸っ子ヘアは髷で個性を!
江戸っ子が絶対に譲ることができないオシャレポイントは、やはり「髷(まげ)」。特に頭頂部から前頭部の「月代(さかやき)」を剃りあげる髷がオーソドックスで、一番人気です。元々は、合戦時に被る兜で頭頂部が蒸れるのを防ぐ目的で生み出された髪形であるとはされていますが、戦の心配が無くなった江戸では、髷の太さや角度などに変化を出し個性を表現していきました。頻繁に剃ったり抜いたりしなければならないなど、手間が掛かる髪型ではありますが、それでもお手入れを欠かさないのが嗜みです。
気軽なヘアで色気も演出「総髪」
月代を剃り上げずに髷を結うのが「総髪(そうはつ)」であり、女性の場合は同じ漢字でも「そうがみ」と読みます。月代の手入れが不要なので、手間も散髪代も掛からないお手軽ヘア。
江戸時代前期は医者や学者などの髪型でしたが、江戸時代後期は一般的な髪型として普及しており、坂本龍馬や徳川慶喜も総髪でした。
華やかさの中に光る力強さ「銀杏髷」
現代では大相撲の関取が結う髪型として知られる「大銀杏」の元となった「銀杏髷(いちょうまげ)」。髷が長めの武家の「銀杏髷」と、小振りな「小銀杏」を好む町人の銀杏髷では違いがあり、職業別にも細分化されています。
若者に人気のモテスタイル「本多髷」
月代を広めにとり、「金魚本多」「浪速本多」と様々なスタイルがある「本多髷」。粋な江戸っ子のヘアスタイルとして知られており、若旦那などがこぞって本多髷を結っていました。「吉原では本多髷でないと相手にされない」、といった噂も流れ、吉原に通う旦那衆の間で人気に。
歌舞伎者が好むワイルドさ「茶筅髷」
型に嵌らない奇抜なスタイルが特徴の「傾き者(かぶきもの)」の中で人気のヘアスタイル「茶筅髷(ちゃせんまげ)」。僅かに月代を剃るか一切剃らずに後ろ髪を紐で縛り、毛先を散らすのが基本です。室町時代から江戸時代初期に掛けて流行しており、織田信長の青年期の髪型として有名。
男女共に「粋なオシャレヘア」が重要だった江戸時代。過ごす時間が長い散髪屋は多くの人が集まり、地域のコミュニティポイントとなっていました。現代で言う「ヘアカタログ」も発行されており、江戸っ子は流行に敏感だったようです。
参照元:「コトバンク:©須貝 稔」
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