【 あの武田信玄や穴山梅雪の書状が残る 】武田軍の名湯・下部温泉に、58代も続く湯守の宿あり!

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甲斐の名将・武田信玄。今年は大河ドラマ「おんな城主 直虎」で、松平健さんが貫録たっぷりに演じています。なんだか、マツケンサンバならぬ信玄サンバでも踊り出すようなノリの良さでも話題を呼んでいますが・・・。

戦国最強の武田軍を率いた、大人気の武田信玄ですが、「おんな城主 直虎」を観ていると、敵に回すとあれほど怖い男も居ないというか、恐ろしい存在だったんだなあということを実感させられますね。

さて、今日は久しぶりに「武将と温泉ぶらり旅」。昔から「武田信玄の隠し湯」という言葉があるように、信玄は大の温泉好き・・・だったかどうかは不明ですが、戦で疲れたり傷ついた兵を温泉で療養させるなど、それを有効活用した武将でした。現在では単に「信玄の隠し湯」を宣伝文句にしている温泉地もありますが、地元・甲府の近くには正真正銘ともいえる名湯が存在します。

そのひとつが山梨県・下部(しもべ)温泉です。9世紀前半に発見されてから実に1200年という歴史を持ち、戦国時代には武田家の管理のもと、温泉保養地として利用されるようになったといいます。

その古き温泉街のパイオニアが「古湯坊 源泉館」。現当主の依田茂さんは、なんと湯守として受け継がれる家の58代目だといいますから、その歴史の長さには驚くばかりです。温泉宿としては江戸時代からの営業となり、約250年で8代目。外観からは古さがそれほど感じられませんが、この宿には武田家との関係を示す数々の古文書が残っています。

まず、これが信玄の父・武田信虎から送られた土地と湯治場の免状。当時の領主だった佐野氏に対し、湯治場の統治を許可・任命するもので、大永7年(1527)の日付が入っています。このあたりは信虎が武田家中の争乱を制し、甲斐統一へ向けて国衆たちと盛んに争っていたさなか。

(武田信虎肖像 大泉寺所蔵)

信玄に追放されたことで、イメージの悪い武田信虎ですが、実際は先祖が成しえなかった甲斐統一を成し遂げた有能な武将でした。ちなみに上の書状が書かれた年、信玄はまだ7歳。信玄には、実は竹松という4歳年上の兄がいて、彼が本来の嫡男だったのですが、7歳で夭折したため、信玄が嫡男として育てられることになりました。

こちらが冒頭にも載せた武田晴信(信玄)からの土地免状。「永禄四年九月二十八日」という日付が記されていることに注目。永禄4年(1561)といえば、かの有名な「第四次・川中島の戦い」が行われた年で、この年の9月9日から10日にかけ、信玄は上杉謙信と戦いました。

そして、これらは右から家臣の馬場美濃守(信春)、穴山信友・信君(梅雪)の書状。特に馬場の書状は当地を治めていた石部氏に対し「川中負傷兵の治療に絶大な効果があった」という感謝状のようです。これらの現物は非公開ながら、本館のフロントにコピーが展示公開され、いつでも見られるようになっています。

さて、武田軍の将兵の傷を癒したとされる源泉は『古湯坊 源泉館』の別館にある混浴の大浴場に湧いています。ここには当時と変わりなく、大岩風呂の足元の岩盤から温泉が自噴し続けているのです。

普通のあたたかい温泉と違い、泉温は約30度という「ぬる湯」なので、入ってみると本当にぬるく感じます。すぐ隣には加温した温かい湯舟(上り湯)があるので、まずはそっちで温まってから源泉の湯舟に入ると、本当に気持ちよ~く浸かれるんです。とくに夏は最高。筆者は、熱い湯があまり得意ではないのですが、ここなら1時間浸かってられます。のぼせることもなく、気持ちいいんです。

※宿およびお客様の許可を得て撮影しています。通常は撮影禁止です

ここ、実は混浴。昔ながらの湯治スタイルですが、バスタオルや湯浴み着を着用するルールになっているので、女性客もよく利用しに来ています。みなさん長湯なので、自然と会話が弾んでしまうことも。ぬるい温泉には長湯しやすいというメリットがあり、結果的に体がよく癒されるとか。実際、その湯治効果は抜群。怪我や手術後の経過がいいという声が、常連客の会話からも多く聞かれます。

古湯坊 源泉館は、歴史ファン目線から見た宿としても魅力的。各部屋には武田家臣の名前がついていたり、廊下に二十四将の写真が飾ってあったり、鉱泉天然水・信玄が購入できたりします。べつに取材したから贔屓するのではなく、料金もお手頃(湯治プラン8,500円~)で、その点でも十分におすすめできる宿です。

この宿の隣には熊野権現があります。信玄の家臣・穴山梅雪の寄進によって建てられた社殿が、今もその姿を保ち、高台から温泉街を見守っています。信玄公認の名湯は、派手さ、賑やかさのない静かな湯治場として今も多くの人々に愛されています。

信玄や真田家ゆかりの名湯も!歴史好きにも見てほしい温泉ガイドブックが発売

さて、ここでひとつお知らせを。わたくし上永は、若いころから温泉巡りをライフワークにしているのですが、その温泉の本が2017年9月22日に発行されます。

ゴージャスな湯船、最高級のおもてなし、名前だけの名湯には一切興味なし! いまこそ注目すべきは、ノスタルジックで、シブくて、どこか懐かしい情緒が魅力の、ひなびた温泉。本邦初のひなびた温泉ガイドブック!です。

「しみじみシビレる!名湯50泉 ひなびた温泉パラダイス」
(山と溪谷社)
岩本薫 / 上永哲矢 著

歴史の本ではありませんが、今回紹介した下部温泉や、他に信玄の隠し湯として知られる湯村温泉や、真田家ゆかりの四万(しま)温泉や湯宿(ゆじゅく)温泉、徳川将軍家と関わりの深かった熱海温泉など、歴史のある名湯もたくさん紹介していますし、歴史を感じさせる撮り下ろしの写真もふんだんに使用しています。ご興味があればぜひご一読ください!

【文/上永哲矢(哲舟)】

下部温泉
http://www.shimobe.org/

古湯坊 源泉館
http://www.gensen1126.jp/
※現在、日帰り入浴は受け付けておらず、温泉の利用は宿泊客のみです。

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