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【マラソンの父:金栗四三】大河ドラマ『いだてん』の主人公に迫る

ストックホルムオリンピック帰国後の金栗四三。

2018年3月現在、マラソン男子の世界公式記録は2時間2分57秒ですが、オリンピック史上最も遅いマラソン記録は何時間か、ご存知でしょうか。それは、なんと54年!そしてこの記録を樹立した人物こそ、2019年に放送されるNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主人公のひとり、金栗四三(かなくりしそう)です。日本の“マラソンの父”と称され、あの「箱根駅伝」の発案者ともされる金栗四三とはいったいどんな人物だったんでしょうか?

マラソン足袋で世界記録を更新!

1891年(明治24)、熊本県玉名郡春富村(現在の和水町)に生まれた金栗がマラソンをはじめたのは、東京高等師範学校(現在の筑波大学)の2年生になったとき。その基礎となったのは、往復12キロの道のりを毎日走った玉名北高等小学校への通学路だったと、金栗はのちに回想しています。
1910年(明治43)に東京高等師範学校に入学すると、講道館柔道の創始者としても知られる、校長の嘉納治五郎によってマラソンの才能を見出されました。

1914年(大正3)、世界記録を樹立しゴールする瞬間。

金栗はその後、日本のオリンピック初参加に向けた国内予選会に参加。東京・大塚にあった播磨屋という足袋店の主人・黒坂辛作に作ってもらった、特製のマラソン足袋を履くと、2時間32分45秒という、当時の世界記録を27分も縮める大記録で完走します。

金栗の履いたマラソン足袋。

最高気温40度!過酷すぎるオリンピック

そして、短距離の三島弥彦とともに日本人初のオリンピック選手となった金栗は、1912年(明治45)、スウェーデンのストックホルムで開催されたオリンピックに、意気揚々と参加します。

ところが、マラソン競技の当日は、最高気温40度という猛暑に見舞われたことから、参加者68名のうち半分が途中棄権してしまいます。金栗もレースの途中で倒れてしまい、ゴールすることはできませんでした。

ストックホルム大会開会式の入場行進で「NIPPON」のプラカードをもつ金栗。

このとき金栗が倒れた直接の原因は日射病とされていますが、レース以外にもいくつかの要因が考えられています。
たとえば当時、日本からスウェーデンへは船と列車で20日もかかったことから、移動による体への負担は相当なものでした。また、オリンピック開催期間中、ほぼ白夜であったことから睡眠障害に陥っただけでなく、食事面での苦労も大きかったようです。

棄権ではなく失踪扱いだった!?

このようにさまざまな要因が重なった結果、金栗はゴールテープを切ることができませんでしたが、実はレースを途中棄権してはいませんでした。コースの近くにあった農家で介抱された金栗は、意識が戻ると、競技場へは向かわずまっすぐ宿舎に帰ってしまったことから「競技中に失踪し行方不明」として扱われていたのです。

半世紀ぶりにストックホルムを訪れ、
ゴールテープを切る金栗。

後年になって、これに気づいたスウェーデンのオリンピック委員会は、オリンピック開催55周年を記念する式典に金栗を招待します。
これを受けて金栗は再びストックホルムへおもむくと、1967年(昭和42)3月21日、用意されたゴールテープをゆっくりと切り、54年8か月6日5時間32分20秒3という、オリンピック史上最も遅いマラソン記録を樹立するに至りました。

「箱根駅伝」誕生にも貢献

日本のマラソン、ひいては体育普及のため
レースを企画し、自ら走った金栗。

ちなみにストックホルム大会の後、金栗は2度のオリンピック出場を果たしますが、いずれも結果を残すことができませんでした。

しかし引退後は、世界を舞台に戦った経験をもとに、日本スポーツの基礎を築くことに奔走します。さらに、世界で通用する長距離選手を育成したいという思いから「アメリカ大陸横断駅伝」を発案。この計画が実現することはありませんでしたが、その選考会をきっかけに誕生したのが、今や日本の正月の風物詩となっている「箱根駅伝」です。

母校・玉名高校の生徒たちと。

1983年(昭和58)に亡くなるまで、各地のマラソン大会へ出かけては選手たちを激励し、笑顔でレースを見守っていたという金栗四三。悲運に見舞われながらも決してあきらめることなく、最後までゴールを目指そうとしたその人生がどのように描かれるのか。2019年の大河ドラマに期待したいですね。

(スノハラケンジ)

写真提供:玉名市

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