清朝初期を舞台に、侍女と王子の間に芽生えた一途な愛の行方をロマンティックに描いた宮廷歴史ドラマ「王家の愛-侍女と王子たち-」。今回は、王子ドルゴンと惹かれ合うヒロインのスマラを演じたドゥ・ルオシーのインタビューをお届けします。
◆「王家の愛」の主人公・スマラ役に出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
以前、スマラが登場する小説を読んだことがあり、とても感動したので、今回スマラ役が決まった時はとても嬉しかったです。彼女の功績については後々評価されますが、当時は、野に咲く花のようにとても弱い立場にありました。スマラは彼女自身のパワーで多くの人を変え、救います。彼女の持つ前向きなエネルギーと磁力にとても感動したことを覚えています。このようにとても偉大な女性を演じることができて光栄に感じました。
◆演じられた中でお気に入りのシーンやセリフはありますか?
今思い出してもすばらしいセリフやシーンがたくさんありました。撮影期間中、最初の33日間はウランブトンという内モンゴルの草原で撮影をしましたが、景色は本当に美しく、無限に広がる草原を馬で駆け抜けました。自分自身が大自然と一体化するのには、苦労の連続でした。特に印象に残ったのは、毎日のように四季の移り変わりを体験したことです。草原の気候は朝晩の気温差が激しく、早朝や夜はダウンジャケットが必須なのに昼間は半そでで過ごせる日もあります。1年間の四季を33日間の撮影期間で堪能できました。騎馬の一群に追われるシーンでは、激しい風と砂ぼこりが起き、いきなり突風に襲われ、危うく風に吹き飛ばされそうになり、みんなで抱き合って支え合ったこともありました。
◆共演者の方との記憶に残っているエピソードがあれば、お聞かせください。
私はホンタイジ役のフー・ダーロンさんとの共演が初めてだったので、撮影当初は緊張しましたが、とても真面目な方だと感じました。時々、冗談を言って笑わせてくれることがとても楽しかったです。
撮影が進んでいく中で、彼はギターを弾くことが好きだと知ったのですが、仲間たちを集め、バンドを組んでよく現場で演奏していました。男性スタッフと一緒にサッカーやバスケもしたり、クランクアップの頃にはみんなが兄弟姉妹のような関係性になったと思います。女性チームは、火鍋を囲んで、健康法や美容法についてよく話していました。
2か所目の撮影現場の横店(ハンディエン)は、辺鄙な場所にあり、撮影後は部屋に戻るしかなかったので、時々みんなで集まって火鍋を囲み、おしゃべりをしたものです。芝居について遅くまで語り合いました。とてもエネルギッシュな撮影チームでしたね。まるで大学時代に戻ったかのような楽しく懐かしい日々です。
◆撮影中一番苦労されたことはなんですか?
最も辛かったことは、自分の心の葛藤でしょう。常にこの役をよりよく演じたいと願い、毎晩部屋に戻るとセリフを徹底的に覚え、翌日に備えます。私の出番は、全部で600~700のシーンがあり、セリフ量もたくさんありました。さらに時代劇なので、当時の言葉遣いや専門用語、独特な呼称などをしっかり覚えなければなりません。セリフを覚えることで、当時の礼儀など、理解を深めることができました。
◆特に印象的なシーンはどの場面ですか。
内モンゴルで撮影したシーンです。スマラは両親を失い、苦しみ、傷ついて大きな湖のほとりにたどり着きます。そして湖の中で、“父さん、母さん”と叫ぶのですが、監督は視覚的なインパクトを大事にするため、あらゆる撮影方法を試みました。クローズショット、ロングショット、空撮なども含みます。私はずっと、湖の中での演技を繰り返さなければなりませんでした。あの日の気温は0度かそれ以下で、水温は更に低く、衣装はとても重いモンゴルの装束で、最初に湖に入った時点で衣装がずぶ濡れになり、水位は腰から胸のあたりまで達して、濡れた衣装は更に重くなりました。まるで全身を衣装に引きずられるような感じになり、2回目では水の中で動けなくなってしまいました。何テイクも撮り直して、とても寒くて疲れましたが、スマラの感情が少しずつ高ぶっていく重要なシーンだったので、最善な状態を見せられるよう臨みました。それまで彼女はすべての思いを抑え込み、感情を爆発させることはありませんでしたが、唯一、あのシーンで自分の感情を長く吐き出すので最高の演技をする必要があったのです。すべてのテイクを撮り終えたあとはすっかり力が抜けてしまいました。撮影中は特別な感覚などありませんでしたが、とても印象的なシーンとなり、撮影後には熱を出してしまいました。
◆木に吊るされるシーンや、池のシーンも印象的でしたが、撮影はどのように進みましたか。
そうですね。殴られたり木に吊るされたり、時には首を絞められたりもしました。撮影はCGを一切使用していないので、池に沈むシーンはスタジオで撮影しました。沈んでいく様子を撮るために足を縛られました。セットのプールの深さはよく覚えていないけど、4~5メートルくらいはあったと思います。とにかく深くて、私の足に結んだ縄をアクション担当者が引いて、水中に引き込みます。1回目と2回目は問題なく進みましたが、3回目は視覚効果のために早く引く演出でした。縄を引く速度が速すぎたため、耳に直接水圧がかかり中耳炎になってしまい、その後の検査で半分聴力を失っていることが分かりました。今は徐々に回復しています。医師から聞いた話によると、あの期間あまりにも仕事が多忙でプレッシャーが大きかったことも影響しているようです。
俳優が1つの作品の中で生き生きとした演技をするためには強烈でスリリングな体験が必要なこともあるのだと。今日、インタビューを受ける前に記憶をたどりましたが、「王家の愛」の制作過程は絶対に忘れられないと改めて思いました。
◆スマラはまっすぐで信念に従う女性だと思いますが、ルオシーさんの理想の女性像をお聞かせください。
私にとって理想の女性像は彼女のような人です。彼女は強く、いかなる困難に遭遇しても、どんな絶望的な状況の中でも希望を見いだします。彼女と共に過ごせば、きっと人生は期待に満ちあふれると思いました。そして、スマラは献身的な人でもあります。人助けが好きで、誰かのために自分を投げ出せる人です。今の世の中で彼女のように行動する人は貴重で、私たちは学べるところがあると思います。愛と忠誠、そして家族のためなら、スマラは自分のことなど考えず、兄や幼なじみのためにも恐れることなく行動します。人から何度傷つけられても、徳をもって恨みに報いる高潔な精神は本当に得難いものです。多くの女性のすばらしい資質を体現していると思います。「千と千尋の神隠し」の主人公の少女のように、ひたむきな精神を備えているからこそ、多くの人が彼女によって変化を遂げ、恨みを愛に変えるのだと感じました。「王家の愛」の結末でもやはり、彼女自身が恨みを愛に変え、その愛が恨みと憎しみを解いていきます。愛はすべてを癒すと言えるでしょう。愛のある女性は私が理想とする姿です。
◆スマラとの共通点がありましたら、教えてください。
最初に脚本を読んだ時は雑草のような精神が私に似ているとずっと思っていました。困難に遭遇した時、私も常に苦しい中でも解決方法を探し、困難に押しつぶされないようにしてきました。そして、家族に対していつも何かしてあげようとする献身的なところ。女性としての正義感。弱い者の味方となって手を差し伸べたり、助けを必要としている人の味方になったり。私自身もそんな性格で、学校でも普段の生活でもそのように過ごしてきました。助けが必要な同級生や友人、家族に手を貸したがるほうでした。問題を解決することも好きで、それを煩わしいと感じることもありませんし、自分には関係のないことだなどと思ったりもしません。問題があれば解決できると信じるし、解決できれば自分もうれしくなります。誰かの役に立てたり喜ばせることで、自分に価値があると感じることができるからです。スマラも家族や愛する人を守ることに、なりふり構わず執着するところがありますね。
◆夫婦共演でも注目を集めたと思いますが、演じてみて難しかった点やエピソードがありましたら、お聞かせください。
夫婦共演で忘れられない思い出はお互いが支え合えたことです。大きな規模のドラマなので撮影期間も長く、その間はもちろん苦労もたくさんありました。俳優にとっては体力と精神力を試されているようなものです。イークァンはドルゴンを演じ、私はスマラを演じましたが、劇中でスマラの身分は最も低く、誰かに会う時はいつも跪いて礼をせねばなりません。辛く苦しいことも劇中でたくさん体験します。夫はそのことで私の心配をしていました。よく覚えているのは冷たい水の中で撮影したあと、夫はそばにいてくれて抱き締めてくれたことです。タオルを用意してくれるスタッフがいても安心できなかったようですね。翌日も同じようなシーンがあると分かると、やはりそばで待ってくれて、しょうが湯を入れてくれるなど、とても私を気遣ってくれました。
困難なことも当然あります。私たちは主役でセリフが多かったので、撮影中は別々の部屋に滞在しました。たとえ夫婦でも、お互いの邪魔にならないようにしたのです。芝居を作り上げる時、私たちは独立した2人の俳優であり、お互いを尊重します。私は彼の創作空間を尊重し、彼も私の創作に対する積極的な姿勢を尊重してくれます。電話で翌日の重要なシーンの確認やセリフの練習もできますし、時には夫が私の部屋に来てセリフの読み合わせをしたり、私が彼の部屋へ行って翌日の撮影でどんな演技をすべきか打ち合わせたりもできます。部屋で2人きりでセリフの練習をするのは、普通ならあまりよくないことですけど、私たちは夫婦ですからね。
◆プライベートでは、どんなことをしていますか。趣味も教えてください。
旅行へ行くことが好きです。あとは料理も好きです。以前は、料理は趣味とは言えませんでしたが、最近は作る機会が増えて、趣味となりました。それから読書ですね。好きな本は…いろんなジャンルの本を読みます。音楽を聴くことも好きです。それから映画を見ること、友達とのおしゃべり、おいしい物を食べること、小動物を飼うことも好きです。
◆次は、どんな役柄をやってみたいですか。
今後どんな役を演じたいかと最近ずっと考えていました。挑戦してみたいのは、弁護士や裁判官など、エリートと呼ばれる職種の人物。時代劇ならものすごい悪役ですね。もうずっと悪役を演じていないのでどっぷりつかってみたいです。
◆最後に、日本のファンの方々に「王家の愛」の魅力とメッセージをお願いします。
「王家の愛」の魅力は、愛さえあれば、どんな困難な問題も乗り越えて、希望に満ちた人生を送れるというメッセージと、小さな草花のような存在でも無限のパワーを発揮できるというストーリーにあります。波乱万丈で手に汗握る、そして愛憎も描かれたワクワクする作品に仕上がっています。そして、全編ロケで撮影しているので、当時の雰囲気が伝わってくると思います。ぜひご期待ください。
★イエン・イークァン(ドルゴン役)のインタビューはこちら
「王家の愛-侍女と王子たち-」
放送日時:2020年5月25日(月)放送スタート 月-金 夜11:00~
リピート:2020年5月26日(火)放送スタート 月-金 午前9:30~
番組ページ:https://www.ch-ginga.jp/feature/oukenoai/
出演:ドゥ・ルオシー(スマラ)、イエン・イークァン(ドルゴン)、フー・ダーロン(ホンタイジ)、リウ・チエンハン(ブムブタイ) ほか
制作:2018年/全40話/原題:苏茉儿传奇~The Legend of Jasmine
画像:「王家の愛-侍女と王子たち-」©2018 BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
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