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【 活字にこだわった家康 】 武士の勇猛さとインテリさを印刷物から見る「武士と印刷展」が開催

武士の勇と知とを印刷物から紹介する「武士と印刷」展が開催

武士とは字の通り、戦う者。けれど同時に、為政者として知的な面も持っていました。

武と知、それぞれの面が特に強く表れているのが、当時の印刷物。
江戸時代の浮世絵では勇猛な武士の姿が大量に刷られた一方、当の武士が刷らせたのは地図や訳書など、知的なものが多くありました。対照的な印刷物を通して武士のふたつの面を紹介するのが、東京都文京区の印刷博物館で開催される企画展「武士と印刷」です。
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この記事では本展での展示物の見どころと、そこからうかがえる武士の姿をご紹介します。

大猪を素手で投げる堀尾吉晴の勇名

「稲葉山中におゐて荒猪を生捕たる強勇を大将の目にとまり臣下とす」 弘化 4~嘉永 5(1847~1852)年頃 所蔵:印刷博物館

「稲葉山中におゐて荒猪を生捕たる強勇を大将の目にとまり臣下とす」
弘化 4~嘉永 5(1847~1852)年頃 所蔵:印刷博物館

「武士と印刷」展で展示される浮世絵は、歌川国芳のものを中心に約150点(展示替あり)。
そのうちのひとつが、戦国武将・堀尾吉晴を描いたものです。堀尾吉晴は、大きな猪との取っ組み合いの末に生け捕り、その武勇が気に入られて信長に取り立てられたと言われています。
こちらの浮世絵は、そのシーンを描いたもの。たくましい腕と、派手に転がった大猪とが、吉晴の強さを巧みに描いていますね。

「刷らせた」武士-藩主自らが翻訳した日本初のヨーロッパ地誌

一方、武士が編纂させた書物は約160点が展示。武勇を描いた浮世絵に対し、知の結晶と言うべきものです。
『泰西図説』とも呼ばれる『泰西輿地図説』は、ドイツ語の書籍をオランダ語訳したものを、さらに日本語訳して出版されました。ロンドンやパリなどの地図が描かれた、日本初のヨーロッパ地誌です。

『泰西輿地図説』 寛政元(1789)年 所蔵:印刷博物館

『泰西輿地図説』
寛政元(1789)年 所蔵:印刷博物館

元オランダ通詞の助力も得て、日抄訳したのは、福知山藩主・朽木昌綱
昌綱は蘭癖大名ともいわれるほど蘭学研究に熱心で、他にも様々な蘭学書を残しています。
外国語とその学術書に精通していたからこそ実現した『泰西輿地図説』。知者としての武士の一面がよく伝わってきます。

「刷らせる」ことを支えた活版印刷

武士は書物をただ刷らせるだけでなく、技術も支えました。そのひとつが活字です。
印刷事業に特に熱心だった徳川家康は、10万個にも及ぶ銅製の活字を作らせます。現存する一部が、重要文化財にも指定されている駿河版銅活字です。

駿河版銅活字(重要文化財)慶長11~元和2(1606~1616)年所蔵:印刷博物館

駿河版銅活字(重要文化財)
慶長11~元和2(1606~1616)年
所蔵:印刷博物館

駿河版銅活字によって家康は、仏教や政治に関する漢籍を印刷させています。印刷物も現存。『大蔵一覧』は日本初の銅活字による印刷物としても、歴史的な価値を持っています。

「武士と印刷」展は2017年1月15日まで開催

印刷博物館の「武士と印刷」展は、平成28(2016)年10月22日(土)から翌年の1月15日(日)まで開催されます。
動と静、武と知。武士のふたつの面を印刷物から表すという類を見ない展示、どうぞお見逃しなく。

企画展示「武士と印刷」
会期:2016年10月22日(土)~2017年1月15日(日)
休館日:毎週月曜日
(ただし1月9日(月・祝)は開館。12月29日(木)~1月3日(火)、1月10日(火)は休館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場:印刷博物館
詳しくはHPをご覧ください。

(Sati)

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