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【 後白河院や足利将軍も愛した 】貴重な絵巻が間近で見られる「絵巻マニア列伝」開催

物語を絵画化し、巻物の形態に仕立て、手に取って楽しむ「絵巻」。日本では、平安時代半ば頃、10世紀後半頃から美術作品として絵巻が制作され、受け継がれてきました。

今回、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館にて、3月29日~5月14日まで開かれる展覧会「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」では、後白河院や花園院、後崇光院、三条西実隆、そして足利歴代将軍など、とくに絵巻を愛した《絵巻マニア》たちに注目。彼らの絵巻愛を時代ごとに追いながら、鑑賞や制作の様相を紹介しています。

《絵巻マニア》筆頭の後白河院

絵巻制作の質・量ともに、ひとつの頂点を迎えた平安時代後期。そのブームの中心にあり、歴代の《絵巻マニア》の中でも筆頭に挙げられるのが、大河ドラマ『平清盛』でもおなじみの後白河院(1127~1192)です。

皇位継承とは無縁だった親王時代、現在の民謡、流行歌にあたる今様に没頭し、熱心に研究していた後白河院。芸能を愛し、絵にも深い審美眼をもっていたとされ、多くの絵巻を制作しました。中でも有名なのは、宮廷の儀式や祭礼などを描いた「年中行事絵巻」、天道・人道・餓鬼道・阿修羅道・畜生道・地獄道が描かれた「六道絵」で、蓮華王院(れんげおういん・本堂は現在の三十三間堂)の宝蔵には、和漢の典籍や宗教的な宝物、楽器など多様な文物のほか、多くの絵巻が収蔵されていました。

今回見られる「六道絵」の中の「病草紙断簡 不眠の女(やまいのそうしだんかん ふみんのおんな)」は、当時の奇病や風俗が描かれるなかでも、不眠症の女性がモチーフとなっています。

重要文化財 病草紙断簡 不眠の女
一幅 平安時代 12世紀
サントリー美術館
【全期間展示】

天皇から天皇、そして絵師へ引き継がれる芸術のリレー

鎌倉時代、歌道、学問、書道にすぐれ、特に和歌では『風雅和歌集』を監修するなど、芸術レベルの高かった花園天皇(1297~1348)。絵巻のほうも、宸筆の原本が今日に残る日記『花園院宸記(はなぞのいんしんき)』に、「予、幼年の時より絵を好むものなり」と書くほど、後白河院の遺した蓮華王院宝蔵の絵巻を熱心に鑑賞していたようです。

花園天皇と、父である伏見天皇のもとで絵画制作に従事していたのが、絵所預(えどころあずかり)の高階隆兼(たかしなのたかかね)。先日、東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の秘宝」でも話題になった隆兼の代表作「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)の制作には、「年中行事絵巻」などの宝蔵絵を研究した痕跡が残されています。

後白河院が築いた絵巻文化をさらに昇華させ、もうひとつの絵巻黄金期を生み出した、高階隆兼様式の作品群。今回見られる「石山寺縁起絵巻」は、石山寺の歴史や信仰だけでなく、当時の貴族や庶民の生活をうかがえるものとして貴重とされ、教科書や本でも多く引用されています。見かけた人もいるのでは?

重要文化財 石山寺縁起絵巻 
巻一(部分)七巻のうち一巻 絵:鎌倉時代 正中年間(1324~26)頃 滋賀・石山寺 【全期間展示】

「おなら合戦」など、ユニークな絵巻も

室町時代の後崇光院・後花園天皇父子もまた、絵巻に強い関心を持った絵巻マニア。絵巻に関する記事が豊富で、当時の伝来や制作環境、評価を知ることのできる第一級の史料『看聞日記』(後崇光院筆?)には、父子がさまざまなところから絵巻を借り出して鑑賞したり、親子間で絵巻を貸借していたほほえましい様子がうかがえます。今回展示される興福寺大乗院で重宝とされた「玄奘三蔵絵(げんじょうさんぞうえ)」(現・藤田美術館蔵)も、都に運ばれ、後花園天皇から父・後崇光院へと転貸されたものです。

また、古今の絵巻を楽しむだけでなく、気に入ったものは自ら模写していたという熱狂ぶりは、現代人にも通じるはず。男女入り乱れてのおならによる壮絶なバトルを描いた「放屁合戦絵巻」など、思わず笑ってしまうユニークな絵巻も必見です!

国宝 玄奘三蔵絵 
巻四(部分) 十二巻のうち一巻 鎌倉時代 14世紀 藤田美術館 画像提供:奈良国立博物館(撮影:佐々木香輔) 【展示期間:3/29~4/24】

放屁合戦絵巻 
一巻(部分) 室町時代 文安6年(1449)写 サントリー美術館 【全期間展示】

足利将軍家のお宝拝見!

宮廷文化の中心地であった京に初めて成立した武家政権、室町幕府。足利歴代将軍は、朝廷に負けぬよう、武力や政治経済力だけでなく、伝統的な貴族文化への適応をもって政権の安定を図ったといわれます。その文化的方策の最大ツールが絵巻でした。

伝統的な大和絵の表現に彩色が美しい「誉田宗庿縁起絵巻」を制作した第6代将軍・足利義教(1394~1441)。描かれた景色が実景に近いという、当時としては斬新な視覚表現で注目される「桑実寺縁起絵巻」(滋賀・桑實寺蔵)を制作した第12代将軍・足利義晴(1511~1550)。そして、足利家歴代のなかでもとくに《絵巻マニア》だった、第9代将軍・足利義尚(1465~1489)など、将軍たちの豪華な絵巻の競演は見物です。

重要文化財 誉田宗庿縁起絵巻
巻中(部分) 三巻のうち一巻 室町時代 永享5年(1433) 大阪・誉田八幡宮 【全期間展示】

こうしてみると、絵巻そのものの歴史はもちろん、芸術の継承だけでなく、当時の生活や風俗を知る貴重な史料であることがわかります。写真がなかった時代、絵師たちはそれらを描く努力をし、天皇や将軍はそれを残そうと尽力したのかもしれません。

展覧会の一部としてではなく、絵巻ばかりを集めた貴重な展覧会。現代の《絵巻マニア》はもちろん、《歴史マニア》たちも、より深く歴史を知るための手がかりとして、出かけてみてはいかがでしょうか。

六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝
開催場所:サントリー美術館
     〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
     http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_2/
開催期間:3月29日(水)~5月14日(日)
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
     *5月2日(火)~4日(木・祝)は20時まで開館
     *いずれも入館は閉館の30分前まで
 休館日:火曜日
     *5月2日は20時まで開館
 入館料:一般 当日1300円 前売1100円
     大学・高校生 当日1000円 前売800円
     *中学生以下無料
お問い合わせ:03-3479-8600
公式HP:サントリー美術館「六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」

(編集部)

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