私が子供のころ住んでいた東京の幡ヶ谷という町は、近くに銭湯がありました。
番台にオバちゃんがいて、近所のおじさんに混じり、ちょっと緊張しながら入る熱い浴槽の前には、みなさんもご存知の通りどデカい「銭湯富士」の絵が描かれ、なんとも気持ちのいい空間でした。
湯上がりに飲むコーヒー牛乳はなんでこんなにウマイんだよお〜!と感動した記憶があります。(今はビールだけどね・・・)
銭湯の歴史は大変に古く、6世紀に日本に伝えられた仏教の教えのなかには「沐浴」で汚れを洗うことが仏に仕える者の仕事と考えられていたそうです。こうして伝わった沐浴は、浴室もなく町湯もない庶民にとって最高の喜びだったことでしょう。
平安時代には京都に銭湯のはしりともいえる湯屋が登場したそうです。
![「女湯」 鳥居清長画 天明後期 ボストン美術館蔵 wikipediaより](https://rekijin.com/wp-content/uploads/2016/01/1920px-Kiyonaga_bathhouse_women-2.jpg)
そんな素晴らしい銭湯も近年では減少の一方。燃料代や土地代など維持費がかさむのでしょう。
時代の波に押され、私たちを癒やしてくれた「銭湯富士」を描く絵師さんも、なんと日本で二人だけになってしまったとか。
今日ご紹介するのは、その日本に二人しかいない銭湯背景画絵師の一人、丸山清人さんの個展「THE銭湯富士~伝説の背景画絵師~」 が1/8~18 中野ブロードウェイアートギャラリー リトルハイで開催されるというお知らせです。
今回の個展のリリースによれば、18歳の頃から、銭湯、健康センター、老人ホームなど数多くの風呂場の背景画を描いてきた丸山氏が描いた、湖から望む壮大な富士山、優しく広がる穏やかな湖など、家に飾れるサイズの直筆ペンキ画約30点を展示。
気に入った作品があれば、購入することも可能で、しかも入場は無料なんだって!!
![「本栖湖 赤富士」丸山清人氏作](https://rekijin.com/wp-content/uploads/2016/01/maruyama-kiyoto01.jpg)
この作品をご覧ください。
朝陽が雲にあたり反射した光が富士を赤々と染める一年に一度あるかないかの奇跡の現象「赤富士」は古来より大吉運の兆しとされ、観る者の運気を上げて幸福を招くとされています。
縁起画として描かれることの多いこの「赤富士」は銭湯画で描かれることはほとんどなく、それゆえに出会えた者には幸運が訪れるという幻の銭湯画だそうで、今回の個展にはこの作品も展示されるそうです。
この絵が多くの人に与えた癒やしの価値を考えたら、文化遺産として認定されるべきものなんじゃないか?と思ったりするんですが、いかがでしょうか?
まだ初詣に行けてない・・・とお嘆きの方は、この週末、参拝と一緒にこの縁起の良い「丸山赤富士」を拝んだら、開運の願いも叶いそう。ぜひお出かけしてみては?
参照元:
「THE銭湯富士~伝説の背景画絵師~」リトルハイ オフィシャルサイト内
「東京銭湯」東京都浴場組合オフィシャルサイト
丸山清人氏プロフィール:
1935年(昭和10年)生まれ。父親が銭湯広告物専門の会社に勤務していた関係で幼い頃から画師がそばにいる環境で育つ。
絵を描くことが好きで、美術学校を卒業後、父親と同じ会社へ就職し、ペンキ運びなど兄弟子の手伝いからスタート。
現場で絵師としての技術を学び、25歳には一人で絵を任されるようになる。名実ともに銭湯背景画師の第一人者。
イベント概要:
名称:丸山清人個展「THE銭湯富士~伝説の背景画絵師~」
日程:2016年1月8日(金)~1月18日(月)
休廊:水曜日
時間:12:00~19:00(最終日は17:00まで)
場所:東京中野 ギャラリー リトルハイ(JR「中野駅」徒歩3分 地図)
入場:無料
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