長浜市指定文化財《弁才天坐像》 室町時代(弘治3年・1557) 宝厳寺蔵(長浜市早崎町 竹生島)
戦国時代が人気なのは昔からですよね。
勇ましい武士の戦いは、現代からしてみれば「カッコイイもの」というイメージで捉えがちですが、当時その地に暮らす自分がいることを想像してみてください。
その土地で作物を作り生活していた農民らにしてみれば、いくさというのは田畑や村を焼かれ、命の危険を感じ続けなくてはならない、誠に恐ろしいもの。
北近江と呼ばれ、浅井長政や石田三成などの大名を生んだ滋賀県の長浜市は、戦国時代には「近江を制する者が、天下を制す」と言われてきた場所。
地理的条件としても、京都を抑える交通の要所であったため、幾多の戦乱や災害に見舞われたこの地には、信仰を捨てずに生き抜いた村人が守った「奇跡」があったのです。
村人が池や田んぼに埋めて生き残った仏様
前述の通り、古くは戦乱の地であった滋賀県長浜市には、古くから暮らす地域住民の手によって池に沈めたり、田んぼに埋めたりして隠すという必死の取り組みにより、難を逃れた数多くの仏像が残存しています。
これらの仏像は、大きな寺社に守られてきたのではありません。地域の暮らしに根付き、そこに住む人々の信仰や生活、地域の風土などと深く結び付きながら、今なお大切にひそやかに守り継がれてきたのです。
この仏様が今回、なんと40以上も滋賀から東京藝術大学美術館へ一堂に会する展覧会「観音の里の祈りとくらし展 Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」が7/5(火)〜8/7(日)まで開催されることになったのです。
圧巻!国指定重要文化財含む42点の仏像が集結
この展覧会は東京藝術大学と長浜市の主催により、2013年に続き二回目の開催。
前回の開催は短期間だったにも関わらず、予想を大きく上回る来場者数を数え、今回の開催に至ったそうです。
今回は前回の18軀の2倍以上の42軀が一堂に集結。
仏像も観音菩薩像以外に、薬師如来像、阿弥陀如来像や大日如来像など、湖北長浜の多彩な仏教文化と、それを守り伝え続ける村人たちのつながりにもスポットを当てるという大きな展覧会になりそうです。
3月に開催された概要記者会見では、藤井長浜市長や薩摩東京藝大教授、太田長浜城歴史博物館長などのほか、ホトケを代々守り続けてきた「世話役」の高橋夫妻、観音の里長浜PR大使で、NHK大河ドラマ「徳川家康」で迫真の演技を見せた俳優、滝田栄さんも出席し、この展示会の価値の大きさをPRされていました。
ただ実際に地域の過疎化により、これだけの価値ある仏様の守り手が減っているという現実も。
村の人たちに対しても、世間の人たちに対しても、この仏様が日本のみならず、世界的にも誇るべきものであるということを、今回の展示会では伝えたいのだそうです。
会見のあと、薩摩教授にお話をお伺いしたところ「今回の展示会で何百年も大切に守られてきた村の仏様をお借りするのに、運搬には細心の注意を払いましたが、その時の村の人たちの心配そうな顔が忘れられません。そのためにもこの貴重な機会を見逃さないようにお越しいただければ。」とおっしゃられていました。
以前より長浜市のことは取り上げてきましたが、ほとんどが戦国武将よりの話題。
実はその戦乱の陰で、必死に仏様を守り通し、さらに今に引き継いできた感動的なストーリーを、今回この展覧会で仏様をご覧になり、想像していただけたらと思います。
展示会概要:
観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
午前10時 – 午後5時(金曜日は午後8時まで)
入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日(ただし、7月18日は開館)、7月19日
会場: 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
観覧料: 一般1,200(1,000)円 高校・大学生700(600)円(中学生以下は無料)
* ( )は20名以上の団体料金
* 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
* 心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)
* 本展をご覧のお客様は当日に限り、同時開催「平櫛田中コレクション展(仮称)」を無料でご覧いただけます。
主催: 東京藝術大学、長浜市
参照元:「観音の里の祈りとくらし展 Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」
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長浜市指定文化財《弁才天坐像》室町時代(弘治3年・1557)
宝厳寺蔵(長浜市早崎町 竹生島)
編集長Y
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