4世紀の中国・東晋の貴族だった王羲之(おうぎし)。書法の最高規範として「書聖」と呼ばれ、日本にも多大な影響を与えた人物です。そんな王羲之の書の複製とともに、日本の貴重な書を紹介する特別展「王羲之と日本の書」が九州国立博物館で2月10日(土)より開催されます。唯一現存する最澄の自筆書状や、平安時代の「三跡」の一人である藤原行成などの国宝26件に、西郷隆盛の額字まで、書の逸品が一度に見られる貴重な機会です。
日本の書のお手本となった王羲之
日本人と文字の本格的な関わりは奈良時代になってから。当時、日本人の憧れとなっていたのが王羲之の書でした。その⾁筆は天災、人災などによりすべて失われましたが、唐時代の中国で精密に再現された複製が、王羲之の書の真価を今に伝えています。
注目は唯一現存する最澄の書
この展覧会の目玉のひとつが、天台宗の開祖・最澄の唯一現存する自筆の書。最澄に入門し、その後空海のもとで修行していた弟子・泰範(たいはん)にあてた書状で、最澄が空海に文献を借用したいという旨が書かれています。細くしなやかな筆跡もさることながら、さりげないやりとりから、最澄と空海の交流が確認できる貴重な史料です。
さらに空海の書も展示。筆の先端だけでなく、筆の腹も用いた太い線や文字の構えは、王羲之に加え、8世紀の中国の書法にも影響を受けているそうです。
漢字仮名交じり文の礎を築いた「和様」
9世紀後半、漢字の草書体から「平仮名」が誕生。これとともに、漢字も丸みを帯びて「日本化」し、優美な「和様(わよう)」の書が広がります。現在の私たちが使用する漢字仮名交じり文の礎ともいえるものです。
平安時代の「三跡」に数えられる藤原行成は、王羲之や同じく「三跡」である小野道風の書法に学び、和様の書を大成させました。2018年は、この書が書かれてからちょうど1000年目の節目にあたります。
個性豊かな書の魅力に触れる
中世になると、和様の書は個性化し、書き手の層も拡大。江戸時代には、幕府が公式書体と定めた「御家流」が庶民層の日常書体となり、高い識字率に繋がります。
その御家流の祖も、藤原行成や小野道風、さらには王羲之にまで遡ることができるそうです。
また、文化の発展とともに見た目の面白さや斬新さにあふれた書も登場。字を絵で置き換えた「檜原図屏風」もそのひとつです。
西郷隆盛の額字「敬天愛人」
この特別展で見逃せないのが、西郷隆盛の額字「敬天愛人」です。
「天を敬い、人を愛す」。この言葉は西郷が好んで使い、揮毫したとして知られ、人生観の結晶ともいえるものです。力強くも繊細な感じが西郷どんらしい?必見の書です。
歴史上の偉人の文字や書きぶりを見ると、その思いや心の動きが伝わってくるような気がします。手書きをする機会が少なくなった今だからこそ、豊かな文字の変遷に触れてみてはいかがでしょうか。
特別展「王羲之と日本の書」
開催期間:2018年2月10日(土)〜4月8日(日)
開催時間:午前9時30分〜午後5時
※会期中の金曜・土曜は午前9時30分〜午後8時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(2月12日は開館、2月13日は休館)
開催場所:九州国立博物館
お問い合わせHP:九州国立博物館
http://www.kyuhaku.jp/
(編集部)
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