江戸川乱歩といえば、大正から昭和期に活躍した作家。後世の多くの作家に影響を与え、大乱歩とも呼ばれています。そんな江戸川乱歩は1894年10月21日に生まれました。今日は誕生日にちなんで乱歩の作家人生を、代表的な作品と共にご紹介します。
津藩の藤堂家に仕えた武士の家系
江戸川乱歩の本名は、平井太郎。名張郡(現在の三重県名張市)に生まれました。
平井家の起源は伊豆伊東(現在の静岡県)の郷士でしたが、後に藤堂高虎を初代藩主とする津藩の藩士となりました。
以来、明治維新を迎える乱歩の祖父の代まで、代々藤堂家に仕えました。
作家活動期間の半分以上は休筆と放浪していた
江戸川乱歩は、幼いころ推理小説の訳書を読んで育ちました。
そんな乱歩が目指したのは、本格推理小説家。実際に乱歩は、数多くの推理小説を発表しています。
その中の一作「一寸法師」は、背の低い男が人の手足を包んだ風呂敷を抱えて寺に入っていくのを目撃したことから始まる中編小説。有名な明智小五郎も登場してます。
連載当時から人気を博し、映画化もされました。ですが乱歩にとっては、は急遽決まった連載。構想を練る暇もなく執筆し、本人としては納得のいく出来ではなかったようです。
自己評価と周囲の人気の噛み合わなさに苦しんだ乱歩は、連載が終わると作家業を休んで放浪しています。
以後も乱歩は休筆と放浪が相次ぎ、専業作家として活躍した期間の半分以上は休筆。それでも多くの作品が発表されているのは、さすが大乱歩といったところでしょうか。
「怪人二十面相」シリーズなど、子供向け作品でも大人気
江戸川乱歩は子供向けの推理小説も執筆しています。
有名な作品が「怪人二十面相」シリーズ。探偵・明智小五郎とその助手・小林少年が、大怪盗・怪人二十面相と対峙する作品です。
子供向けの作品としては、小松龍之介名義で科学読み物も多く発表しています。
太平洋戦争時の検閲で修正・発禁・絶版に
また、江戸川乱歩の作品は、異常性欲作品としての人気もありました。
「芋虫」は、四肢を失った傷痍軍人の妻が、夫に強い執着を覚える短編小説。2010年に公開された映画「キャタピラー」のモデル作品でもあります。
ですがこの作品、発表された当時は日本が戦争体制の中で検閲を厳しくしていた頃。編集者の意向で多くの部分を伏せ字にして雑誌に掲載されましたが、それでも全文削除・・・実質発禁処分となっています。
江戸川乱歩がそれまでに発表した多くの作品も、検閲対象となりました。部分削除や訂正が求められ、絶版にまで追い込まれました。
その内、探偵小説自体が全面禁止。乱歩の元には原稿依頼が来なくなり、敢えなく休筆する羽目になっています。
戦後は執筆分野を広げてさらに活躍
太平洋戦争が終わって検閲が解除されると、乱歩は執筆を再開します。
子供に人気だった「少年探偵団」シリーズなど従来の作品を再開するほか、評論など新たな分野でも活躍。
新人発掘や、空想科学小説の支援も手厚く行い、後世の小説界発展にも貢献しました。
そんな江戸川乱歩の作品は、存命中に全集が4回も刊行されています。
全集は、普通作家の死後に刊行されるもの。存命中に刊行されたのは、2016年現在の日本では江戸川乱歩ただ1人ではないでしょうか。
10月21日は江戸川乱歩の誕生日。これを機に読んでみては?
時代の流れの翻弄されながらも、様々な名作を遺した江戸川乱歩。
江戸川乱歩ファンはもちろん、実は読んだことないという人も、これを機に乱歩作品を読んでみてはいかがでしょうか。
(Sati)
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