【 平清盛に源頼朝、曹操や孔明まで見られる! 】長野県飯田市で新展示。三国志と平家物語の人形が10周年記念の競演!

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NHK『人形劇 三国志』『平家物語』の人形製作で知られ、日本を代表する人形アニメーション監督として活躍した人形美術家・川本喜八郎さん(1925~2010年)。
その数々の人形作品を展示しているのが、長野県にある「飯田市川本喜八郎人形美術館」だ。

街の中心部を通る「りんご並木」のすぐ横に建つ人形美術館。喜八郎さんが存命中の2007年にオープンしてから、今年2017年で早10年を迎えた。同館では「開館10周年」を記念して、今年はさまざまな催しが予定されている。

その皮切りといった形で、今年初の展示替えが行なわれ、2月23日から新たな展示がスタート。今回の展示の目玉としては2015年11月以来、久々に「平家物語」の人形が登場したこと。いつも「三国志」のほうを主に紹介することが多いので、今回は「平家物語」人形の展示から紹介したい。

※平家物語・・・1993年~1995年に放送されたNHK「人形歴史スペクタクル 平家物語」

平家物語のコーナーはテーマを「栄華・木曽と鎌倉」として、馬を含めた14体が展示。テーマの通り、その中心的存在として木曽義仲を守るような形で、巴御前と葵御前の女武者2人が勇ましくも優雅に並び立つ。華々しく上洛を果たした頃の義仲がイメージされている。

そして、場所を同じくして、源義経と弁慶の主従。源氏の棟梁・源頼朝と北条政子の夫妻が並ぶ。「平家物語」や源平合戦に詳しくなくとも、この4人は誰もが知る存在であろう。

それと向かい合う形で、平家側の人形コーナーには、平清盛と妻・二位尼(にいのあま)、娘の建礼門院(徳子)がいる。

チャンネル銀河で再放送中の大河ドラマ「平清盛」が話題となっているが、清盛はそうでなくとも主役の貫禄十分。鮮やかな衣装に目を奪われる。また、この隣には朱鼻伴卜(あけはなのばんぼく)、金売吉次(かねうりきちじ)も展示されている。

さて、お待ちかねの「三国志」コーナー。今回は57体が登場している。入口にはおなじみ、人形劇で解説役を務めた紳々、竜々がいて、その奥に張角、張梁、張宝の黄巾党トリオが並ぶ。そして、その隣に彼らを討伐にあたった盧植が控えている。

続いては「宮廷の抗争・連環の計」のコーナー。何后、何進、董太后、弘農王、陳留王、呂布、董卓、貂蝉、王允、李儒が居並ぶ。

今回は、他の人形と距離を置く形で立つ李儒(りじゅ)の存在感が際立っている。

次なるは「玄徳の周辺」として、関羽、張飛、趙雲、黄忠、馬超の五虎将がおり、劉備、孫乾、関平の3人に加えて人形劇オリジナルの女性キャラ、淑玲(すうりん)、美芳(みいふぁん)も。

劉備、関羽、張飛はそれぞれ愛馬にまたがっており、勇ましい姿を見せている。

それと向かい合う形のコーナーが「曹操の王国」。曹操、郭嘉、荀攸、荀彧、程昱、司馬懿、徐庶、典韋、夏侯惇、夏侯淵、許褚(きょちょ)、曹仁という面々。

実は、この展示位置には裏話がある。最初は曹操が右寄りの位置だったのだが、「やっぱり、曹操は真ん中がいいよね。よし夏侯惇と入れ替えよう」と展示監修の森まさあきさん(アニメーター)が提案。

他のスタッフの方々も賛同し、夏侯惇と曹操の位置の入れ替え開始。手前にいるのは典韋だ。

夏侯惇の槍が長いので、動かすのも一苦労・・・。

でもって、曹操をセンターへ。よいしょ、よいしょ・・・。

といった感じで、この位置に落ち着きました。「どうじゃ、やはりわしがセンターであろう?」とでも言いたげな曹操の表情。さっきよりも少し誇らしげになった気がする。

せっかくなので、動かす前の位置を別角度で。今回の展示は川本喜八郎さんが残していた草案を基にした配置なのだが、おそらく夏侯兄弟や典韋、許褚などの将軍に守られる形で、曹操を置こうとされていたのではないかという。

実際に置いてみると、展示ケース全体で見たときにバランスがいまひとつだったので、最終的に配置が修正された。こうして公開寸前に変更される場合も結構あるそうだが、ひとつ入れ替えるだけでも周りの人形の位置のバランス調整もしなくてはならないので、なかなか大変だ。

ギャラリー中央にいるのが、諸葛亮と龐統。今回、劉備陣営は軍師や文官が少ない代わりに、別格扱いでこの「伏龍・鳳雛」コンビが置かれる形に。

「江東の群像」コーナーは、孫権、呉国太、孫夫人、黄蓋、喬国老、諸葛瑾、闞沢、周瑜、陸遜、魯粛。展示ケースの前に脚立を置いて、照明の調整を行なっているところ。

前回はいなかったために、「周瑜が見たかった」という声が多かったそうだが、晴れて周瑜(中央)が復活。その右にいるのは、今年が没後1800年の魯粛。ぜひ注目してほしい。(左は陸遜)

「特異なキャラクター」コーナーには、おなじみのジジィズ・・・もとい、左から于吉仙人、左慈、紫虚上人、華佗の4体。ひときわ異彩を放つ、存在感十分の方々だ。

といったところが、今回の「開館10周年記念常設展示」の概要である。かなりたくさんの写真を並べたが、半分も紹介しきれていないし、写真だけでは実物が持つ素晴らしさを伝えきれないので、ぜひ訪問してご覧になっていただきたいと思う。

展示替え作業を一部ながら拝見し、人形たちが徐々に「命を吹き込まれて」展示ケースに収まっていく様子を目の当たりにできた。本当に多くの人の手が加わって、毎回素晴らしい人形たちの姿が見られるのだと改めて感じた次第だ。

文中にも記したが、今回、三国志の展示コーナーは川本喜八郎さんが生前に残していた草案がもとになっている。その意思をスタッフの方々が忠実に再現したという形だ。「開館10周年、第20回目の展示となる今回は、開館当時を振り返り、原点回帰を大きなテーマとしました。川本が創造した人形の世界を新たな視点で見なおす形で、ごゆっくり楽しんでいただけたらと思います」と、川本プロダクション代表の福迫福義さんは展示意図を説明する。

2017年3月以降、開館10周年記念イベントが開催される同館。さしあたって6月までは次のようなイベントが予定されている。

・開館10周年を振り返るパネル展 3月9日(木)~4月23日(日)
・入館無料!開館10周年記念イベント 3月25日(土) ※通常一般400円
・川本喜八郎未完作「項羽と劉邦」展 3月25日(土)~4月23日(日)
・連続人形活劇「新・三銃士」展 4月29日(土・祝)~6月25日(日)

特に「項羽と劉邦」展は、川本喜八郎さんが人形劇映画の実現をめざして製作していた、渾身の人形たちが初めて公開されるので、これはぜひとも見ていただきたいところ。交通の便が決して良いとは言えない飯田だが、それだけに現地で得られる感動もひとしおである。

最後にもうひとつ、おすすめのお土産、孔明の羽扇をかたどった「三国志 落雁」(らくがん)を紹介したい。川本喜八郎さんが飯田に行った時は必ず立ち寄っていた和菓子店「和泉庄」(いずしょう)。

甘いものがお好きだった喜八郎さん、ここの和菓子(金つば・最中・落雁など)がいたくお気に入りで、店のご主人と「三国志にちなんだお土産を作りたい」という話になったものの、その矢先に喜八郎さんは病にかかり、亡くなった。2015年8月、ご遺志を継ぐ形で生まれたのが、この落雁というわけだ。「和泉庄」のほか、「飯田市川本喜八郎人形美術館」で販売。8枚入り880円。ぜひお試しあれ。

【 文と写真:上永哲矢 】

※館内の様子は2017年2月、飯田市川本喜八郎人形美術館および川本喜八郎プロダクションの許諾を得て撮影したものです。

■飯田市川本喜八郎人形美術館
開館時間 午前9時30分 〜 午後6時30分(入館は午後6時まで)
休館日 毎週水曜日(祝日開館)及び、年末年始
URL: http://www.kawamoto-iida.com/

■和泉庄(三国志落雁、きんつば)
http://izusho.com/

【東京渋谷でも見られる川本喜八郎人形】※こちらは平家物語人形が多め!
■川本喜八郎人形ギャラリー
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/kihachiro_gallery.html

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