プロのナレーターが、出版されている書籍を読み上げて録音した「オーディオブック」。
株式会社オトバンクが運営する日本最大のオーディオブック配信サービス「FeBe」には過去の人気作品が多数配信されています。
そこに「平成の泣かせ屋」と呼ばれ多くのファンをもつ作家 浅田次郎氏の人気時代小説「一路」の上巻が2月に配信を開始、歴人マガジンでも紹介したのですが、本日3月10日(木)からいよいよ下巻が配信されることになりました。
今回、本作を読み上げたのは落語家の「林家たけ平」さん。
2001年からテレビなどでおなじみの林家正蔵(現九代目こぶ平)氏に師事、修行を積み重ねて今年の3月下旬に最高峰「真打」に昇格する、新進気鋭の若手落語家さんです。
落語家に作品を読んでもらうのはFeBeでも珍しい試みだそうですが、さすがに噺家、臨場感たっぷりなその語り口に読書ファン、落語ファン双方で話題になっているとのこと。
今回は、オトバンクさんのご厚意により、たけ平さんへこの作品について、またご自身が落語家になられた経緯などをたっぷりとインタビューさせていただきました。どんなお話、いやお噺が聞けるのか楽しみです!
たけ平さんが落語家をめざしたのは15年前、2001年の22歳の時。
当時サラリーマンだったたけ平さん、週末調べずに見に行った映画がやっておらず、たまたま入った寄席に、こちらもたまたまピンチヒッターで登壇していたこぶ平さんの噺を聞き、落語の魅力に惹きこまれてしまったそうです。
「人生初めての寄席。たくさんの噺家が出たなかで、唯一こぶ平さんの噺の印象が強く、とても楽しかった。そこで落語家への夢がムクムクと湧き上がってきたのです。その後じっくり考えて将来年をとった時、その時のことを振り返って『あーあの時落語家に挑戦していれば・・』という後悔だけはしたくなかったのです」と入門を決意。
なんと仕事を辞め、何のつてもないこぶ平さんへアタックを開始したそうです。
しかし落語界というのは大変に「しきたり」のある世界らしく、普通のアポ取りは「野暮な行為」として厳禁なんだとか。
入門するには本人を見つけて直訴、許可をもらわねばならないのだそうですが、それにしても仕事辞めて入門できなかったら露頭に迷うじゃん・・・たけ平さんにとって一世一代のチャレンジだったのですね。
自宅や出演先へ実に7回もの突撃直訴の末、こぶ平さんのお母様である海老名香葉子さんの目に止まり、ようやく入門できたのだそうですが、この時のこぶ平さんが「タレントとしての活動が忙しいので落語はそれほどできていないから、生き方しか見せられない。それでもいいなら」という言葉をもらったそうです。
こぶ平さん・・・カッコいいじゃないの・・・
そこから実に14年、こぶ平さんのスタイルを完全に踏襲しながら修行を積み、今年の3月には真打になるまでに至ったたけ平さんですが、「あくまでもお客さんの囲い込みは絶対にしない」のがポリシーなのだとか。
「初めてこぶ平師匠の噺を聞いて私が落語家になろうと思ったように、私の噺で落語に興味を持ってくれる人が一人でも増える、そんな落語へ親しむきっかけになるのが私の使命だと思っています」と、普通の人には一見敷居の高い落語という伝統芸能の素晴らしさを伝えることを、自らのミッションとしているのだそうです。
たけ平さん・・・カッコいいじゃないの・・・
私も落語には詳しくないので知らなかったのですが、例えば全てではありませんが、三遊亭は登場人物の声を変えたりする「技術」で聴かせる、柳家は登場人物を噺家の「了見」で演じて聴かせるなど、聞いていると「なるほどそうだったのかー!」と思うことばかりでどうにもおもしろい。
よく言われることですが、噺家は「間」が全て。
たけ平さんもおっしゃっていましたが、その「間」が心地よいリズムを生み、なお内容も面白いので、時間がどんどん過ぎていってしまいます。
「落語は古典を完全に踏襲したうえで師匠にお墨付きをもらったら、自分なりのアレンジを加えてどこでもその噺を話すことができる。その代わり今現役でやっている人からでないとダメで、それをごまかしても話し方で落語通に絶対にバレる。それは落語家としてご法度なんです。」というところなど、江戸時代から脈々と語り継がれ守られてきた伝統と、時代や人によって変わる柔軟さとが混ざっている伝統芸能なのだと勉強になりました。
このあたりの落語界の本当に面白いお話はもっとお聞きしたのですが、ここでは書ききれず・・・
機会を見つけて連載でご紹介したいなあ。みなさん聞いてみたくないですか?
さてインタビューも後半。今回「一路」を編集したオトバンクの伊藤さんも同席、インタビューは続きます。
「当初出版社(中央公論社)さんと『落語家さんでいこう』とたけ平さんにお願いしましたが、最初からイメージ通りでした。ナレーションや朗読のプロで素晴らしい方はいらっしゃるのですが、この作品は落語と合うのではないか、できればその魅力を活かした作品にしたい、と思いました。結果は聴いていただければお分かりの通り、まさにたけ平さんにお願いして大正解でした。」と伊藤さん。
たけ平さんも「全てが口伝で引き継がれる古典落語の世界において、言葉というものには読み方も含めて必ずその意味があるんですが、その意味において『一路』はピッタリ合う作品でした。一言で言えば言葉にこだわる落語家を『嫉妬』させる作品だなと思いました。ぜひ聞いてもらいですね。」と最大限の賛辞。
上巻は私も聞いていますが、確かに本をただ読んでいるのとは違い、その言葉のアクセント一つにも意味があるのだというこだわりを感じさせる、たけ平さんの思いが込められた力作に仕上がっていると感じました。
そもそもの原作が累計88万部も売れ、テレビ化されるほどの面白さをもっているところに、言葉にこだわる噺のプロが加わるのですから、また新たな化学反応が生まれるわけで、面白くないわけがありません。
こんな感じで終始和やかなインタビューの時間はあっという間に過ぎ、気がつけば1時間以上経過。
終了の時間が来てしまいました。
「一路」の上巻、そして3/10(木)配信開始の下巻を読んで、いや聴いて、人気作家と落語界のホープがコラボした力作をぜひ楽しんでみてください。
また、たけ平さんの真打昇進披露興行はコチラ。ぜひ行ってみようと思います。
もしかしたら、あなたもたけ平さんのように落語の魅力に取り憑かれてしまうかも!?
参照元:
オーディオブック「一路」 FeBeオフィシャルサイト
「FeBe(フィービー)」オフィシャルサイト
「頑張るたけ平」林家たけ平オフィシャルサイト
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