平成28(2016)年9月1日(木)~12月18日(日)に東京・池袋で開催中の「東京芸術祭2016」。期間中はダンスや演劇など様々なパフォーマンスが見られますが、プログラムの中には歴史にまつわるパフォーマンスもあります。「大田楽 いけぶくろ絵巻」です。
「大田楽 いけぶくろ絵巻」は、色鮮やかな伝統衣装に身を包んだ人々による演奏あり、獅子舞あり、儀礼あり、さらにアクロバットまで、盛りだくさんのパフォーマンスです。この「大田楽」、日本の伝統芸能である田楽がベースになっています。
田植神事から始まり平安時代に流行した田楽
田楽の起源は田植神事と言われています。現存する最古の記録は、国風文化が花開く頃の長徳4(998)年。京都の松尾大社の祭礼で田楽が行われたと記されています。
田楽は、派手な衣装に身を包み、びんざさらを打ち鳴らしながら緩慢な動作で舞うのが特徴。
寺社の保護もあり、田楽は京都中で大流行。貴族も魅了され、中には自ら田楽に参加する人もいました。院政時代の白河上皇も田楽の大ファンで、よく田楽を演じさせては観覧していたそうです。平成24(2012)年の大河ドラマ「平清盛」では、綿密な時代考証のもとに、田楽に興じる人々の様子が描かれています。
鎌倉時代には演劇要素も加わり能楽に影響を与える
鎌倉時代になると田楽は演劇要素も加わり、「田楽能」と呼ばれます。
田楽能ファンで有名な人物は、14代執権・北条高時。高時は病弱で24歳の若さで執権の座を退きますが、体調の良い時や執権を退いた後は田楽能に興じたと「増鏡」や「太平記」に記されています。
室町時代に能の源流である大和猿楽が流行すると田楽は廃れていきますが、能を大成した世阿弥は能の先祖として田楽の芸能者の名を上げています。このことから、田楽は能に影響を与えたことがうかがえます。
また、民間の祭礼として受け継がれた田楽も。現在は重要無形文化財に指定されているものもあります。
田楽を基に狂言師が新たに構成・演出した大田楽
そんな田楽を現在に蘇らせたのが、大田楽。狂言師・八世野村万蔵(五世野村万之丞)を中心に、舞踊家、音楽家、学者などが協力して作り上げたそうです。
大田楽では、田楽をベースに、各地の伝統芸能や民俗芸能、西洋の動きや音楽などが取り入れられています。
復元された伝統芸能としてはもちろん、各分野のプロの意見が融合した現代パフォーマンスとしても一見の価値がありそうですね。
「大田楽 いけぶくろ絵巻」の開催は11月5日(土)のみ!
大田楽は毎年各地で演じられていますが、東京芸術祭2016において「大田楽 いけぶくろ絵巻」が開催されるのは11月5日(土)のみ。
構成や演出は毎回違うので、名実ともにこの1回きりの公演となります。
観覧無料で申込も不要。行けば誰でも見られるので、東京で大田楽を見ることができるこの機会をぜひお見逃しなく!
「大田楽 いけぶくろ絵巻」
会場:南池袋公園・グリーン大通り・としまセンタースクエア(豊島区庁舎1階)
※雨天時はとしまセンタースクエア。
※上演時間は変更となる場合がございます。
日程:平成28年11月5日(土) 18:00~20:30(予定)
公式サイト:http://ikebukuroemaki.tumblr.com/
(Sati)
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