去る10月12日に神戸・新長田で行なわれた第9回「三国志祭」。毎年、夏か秋に行なわれる恒例イベントとして、関西はもちろん全国の三国志ファンが集うことで知られている。新長田自体には何度か足を運んだことがあるのだが、今回初めて「三国志祭」を体感してきたので、その様子を簡単に伝えたいと思う。すべての模様を伝えるのは難しいので、「三国志祭」の中の一角、「六間道(ろっけんみち)三国志祭」を中心にまとめることにする。
2015年10月12日の午前11時過ぎ、神戸市にある新長田駅に到着。駅前の鉄人広場に行くと、「鉄人28号」の巨大モニュメントの周りに人だかりが出来ていた。そこでは「三国志祭」の催しのひとつ、中国武術演武会が行なわれていた。さまざまな年齢層からなる武術団体が、それぞれ見事な演舞を披露。もう少し見ていたかったが、目的地の六間道商店街をめざすため広場を後にする。
道中のアーケード。新長田の駅周辺に広がる商店街には、「三国志の街」にふさわしく、三国志の英雄をかたどった石像が立ち、横山光輝・三国志の登場人物のタペストリーがぶら下がっている。思わず足を留めずにはいられぬ光景だ。漫画家・横山光輝さんの生まれ故郷ということもあり、2007年に「神戸鉄人プロジェクト」が発足。三国志のキャラクターや鉄人28号のモニュメントも町おこしの一環として設置されたという。写真中央の貼り紙に「震災20年」とあるように1995年の阪神大震災で、新長田は多大な被害を受けた町でもある。
途中、新長田の名物ともいえる「KOBE 三国志ガーデン」の交流館に立ち寄ってみると、中では原寅彦さんのトークショーが開催されていた。原さんは横山三国志のLINEスタンプの制作者。司会者・林直哉さん(ゲームカフェ&バーNINETYオーナー)との名コンビで会場を沸かせていた。館内は立ち見が出るほど大勢のギャラリーで賑わっていた。さすがである。
そのビル1階の踊り場には、写真の対戦カードゲーム「サンゴク」(リトルフューチャー)のほか、スマホゲーム「三国志ロワイヤル」(DeNA)、「三國志13」(コーエーテクモゲームス)などのブースがずらりと並び、それぞれのブースで抽選会が行なわれたりプレゼントが配布されていた。原さんのトークショーも含め全部無料というから、お客さんにとっては実に嬉しいイベントだ。
そんなこんなで、大変に誘惑が多いために道草を喰いながらも「六間道商店街」到着。折しもちょうどお昼時で「そばめし」が振る舞われており、なんとも「いい匂い」に惹きつけられる。関東ではあまり食す機会のない美味しい「そばめし」を、さっそくいただいた。ソースの芳ばしさが口いっぱいに広がる。無料なので、なんだか申し訳ない気持ち(笑)。
この「六間道三国志祭」をより賑やかにしている存在が、「三国志なりきり隊」のご面々。地元・新長田地区のイベントはもちろん、区内のさまざまな催し物に「ひっぱりだこ」という。この武将隊のリーダーが、関羽に扮する嶋崎祐三さん(六間道商店街振興組合理事長=右から3番目)。商店街にある「フルーツ・シマザキ」のご主人でもある。
地元・新長田の町おこしに身命を捧げている、といっても過言ではない方だが、何よりも本当の三国志好きというのが素晴らしい。三国志での町おこしを始めるにあたり様々な三国志作品を読み直したそうで、しかも現地・中国各地の三国志史跡にも、たびたび個人で訪問されているという。筋金入りの「三国志好きおじさん」といった感じで非常に親近感が湧く。
商店街に出店している個人ブースにも目を向けてみよう。「なりきり隊」の孔明コンビ(?)の後ろに映っているのが、あきよんさんによる「Cha-ngokushi」(ちゃんごくし)ブース。三国志の人物をモチーフにした、ブレンド中国茶のお店。劉備、曹操、周瑜、呂布、祝融など全9種類の三国志八宝茶は、いずれも本当にその人物の「味」を想わせるような奥深い味わいだ。
またまた美味しそうな匂いにつられて立ち寄ったのが「夏侯惇(かこうとん)の目玉焼き・たまごせんべい」を販売していた「角夢」さん。三国志好きならすぐに何のことか分かる「小ネタ」フードだ。1枚200円。
美人店主に勧められ・・・いや、自発的に目玉焼きが大好物なもので、つい2個も注文してしまう。しかし、この食べ物。トロトロの目玉焼きが乗っているため持ち歩きができず、その場で食べなければならない。垂らさないように食すのもなかなか難しい。「天空の城ラピュタ」で、目玉焼きトーストを具から口に入れたパズーの要領で完食。美味しかった。玉子は大丈夫だったが、マヨネーズをカメラに垂らしたのは内緒だ。
なんだか食べてばかりだが、続いて向かったのはブースでなく実店舗として営業されている「六花」という、かき氷屋さん。古い事務所を再利用しており、レトロ調の外観に胸が躍る。
この日は特別メニュー「温州蜜柑でございます」を発売。左慈(さじ)が曹操に出した蜜柑(みかん)にちなんだもので、蜜柑の風味が程良く沁み込んでいて美味だった。この日も20度ぐらいあったのでクールダウンに最適であり、いつしか順番待ちの行列ができていた。この後、姫路の中国料理「新北京」のブースで販売されていた坦々麺まで食べたのは内緒にしておこう。
再びブースに目を戻すと、はるばる福岡より参戦の「北伐」さんが、魅力的な三国志てぬぐい、Tシャツをズラッと並べていたり・・・
東京から漢服姿で参加されていた切り絵師・伏竜舎さんが切り絵グッズを売っていたり・・・
「三国志旅遊会」さんが、三国志遺跡の写真(孔明の北伐と鄧艾の蜀討伐がテーマ)をパネル展示していた。現地・中国の貴重な写真は、ひときわ目を引いていたようだ。
はんこ制作を実演していたのは、はんこ屋「篆篆」(てんてん)さん。消しゴムで漢字を彫るという職人的な腕前が実に見事だ。そして、鳥子さんによる長坂雑貨店。今回は「長坂(ちょうはん)の戦い」をモチーフにしたイラスト入りグッズの数々を販売。井戸の絵を大胆にあしらったTシャツ、阿斗ちゃんバッグなど。写真枚数の都合上、まとまっての紹介となってしまったが御容赦くだされたい。
ステージでは、イベントがひっきりなしに開催。午前中のイベントには間に合わなかったが、三国志好き二胡奏者・西山由華さんの演奏から見聞することができた。力強くも美しい二胡の音色が、6曲にわたって商店街に響き渡った。
「右近桜月・書道パフォーマンス」、「龍谷大学・竹内教授によるクイズ大会」の後、「おやこ三国志PROJECT」による人形劇が始まった。「桃園の誓い」「赤壁の戦い」など三国志の名場面を限られた時間の中で上演。手作り感あふれるフェルト人形が、朗読に合わせて元気いっぱいに動き回っていた。
16時過ぎ。高らかな銅鑼、吹奏楽の音色とともに行進が始まった「三国志武将パレード」。兵庫商業高等学校の学生さんによる「龍獅團」の獅子舞を先頭に・・・
同じく学生さんの吹奏隊。女生徒らが身長と同じぐらいの楽器を奏で「ブオーン」という豪快な音がアーケードの下に轟く。
そして、4メートル大の張飛・関羽・劉備の武神人形が堂々と闊歩し、六間道商店街から新長田一番街商店街を通り、駅前の鉄人広場へ。三国志祭のシンボルともいえるこの人形は、2014年夏に横浜中華街での「関帝誕」で初披露されたが、それ以後はここ神戸の三国志祭だけで見られるようになっている。
その後に「三国志なりきり隊」が続く。武将たちはもちろん、艶やかな衣装を身にまとった女性たちもパレードを彩った。
パレードを見送った後、ステージでは最後の催しが始まった。三国志歌娘・東々(どんどん)さんのライブ。最初はソロで「心・战 〜RED CLIFF〜」「久遠の河」、人形劇三国志の主題歌「三国志ラヴ・テーマ」などを、伸びのある声で熱唱。途中からは歌仲間の存々(つんつん)さんが加わって、絶妙なコンビネーションで全8曲を歌い上げた。DJを務めていたのがムラヤさん(中央)。WEBから音楽の制作までこなすマルチな御仁であり、密かに凄い人だと思っている。ムラヤさん制作のラジオ番組(ラジオちゃんごくし)で当日の裏話が語られているので、ご興味のある方は是非。
通行人も足を留めて見入るほどの熱唱。ふたりの美声に聴き惚れているうちに、すっかり日も暮れていた。最後に、商店街の壁面に神戸電子専門学校の学生たちが制作した「虎牢関の戦い」の3D映像が映し出されて終幕した。
こうして幕を閉じた「三国志祭」。町をあげての素晴らしい取り組みに感心するとともに、いち三国志好きとして、これだけ多くの人たちが「三国志」でつながることができるという事実に改めて三国志は素晴らしい、と思い直すのであった。
※当日のより詳しい様子は、六間道5丁目商店街のBLOGで紹介されています。
http://detatoko6ken.blog134.fc2.com/blog-entry-136.html
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