日本の伝統染織、藍染。藍は世界各地でも使われていますが、日本人は特に藍染めを好みました。手拭い、暖簾、さらには浮世絵・・・。幕末の開国に伴ない日本の文化に触れた諸国は藍の多用に目を留めました。
実は藍には様々な効能があります。日本人が藍を多用したのも、この効能があったからこそ。意外と知らない、驚くべき藍の効能。そして日本人が藍をどう利用してきたのか。その歴史をご紹介します。
米と共に伝わった? 意外に長い藍の歴史
日本で藍染に使うのは、蓼藍という種類の植物。
蓼藍がいつ日本に入ってきたかは諸説ありますが、一説には中国の揚子江下流域から米と共に伝わったと考えられています。
記録では、『三国志』魏志倭人伝に記されたものが最古のようです。倭国から魏王に献じた品のひとつに「絳青かとり」というものがあり、これが藍のことだと言われています。また、『出雲国風土記』からは藍が栽培されていたことがわかります。
薬としても使われるのは伊達じゃない、藍の効能
藍ははじめ、薬として日本にもたらされたようです。
花、草、根、種。使う部分にによって効果は少し異なりますが、およそ解毒や殺菌、止血、虫除けの薬として使われました。現在でも藍は漢方薬として利用され、中国では家庭には必ずあると言っていいほど身近なのだとか。
藍の薬としての効果は、染色に使っても効果があったようです。
大事なものを藍染の風呂敷に包めば、虫に食われない。
藍染の足袋を履けば、水虫にならない。など、その効果は想像以上ですね。
また、藍染には保温効果もあるのだとか。藍染の下着や服を着ると、冷え性や肌荒れにも良いそうですよ。
日本で藍を最も好み広めたのは武士
特に藍を好んで使ったのは、武士でした。
武士は野外で戦い、傷を負うもの。傷自体は致命傷でなくとも、そこから化膿して死に至ることもありました。
ですが、藍染の下着を着ていると、殺菌効果で化膿しづらくなり、止血効果もあるのだそう。
鎌倉時代になると、武士は藍を最も濃く染めたものを下着として着用するようになります。
武士はこの色を「勝ち色」と呼んで験担ぎとしても好み、次第に藍は武士の色として定着してます。
室町時代には藍の使用は庶民にまで浸透し、日本では定番の染物に。どこもかしこも藍染を使う日本人を見て、外国人が藍を「ジャパンブルー」と呼ぶようになりました。ちなみに「ジャパンブルー」と最初に呼んだのは、明治8年(1875)に来日したイギリスの化学者・アトキンソンだそうです。
藍を取り入れて、先人の知恵を確かめてみては?
濃淡で様々な色を生み出す藍。目に美しいだけでなく、実用的な効果からも日本人に愛されてきたようです。
もちろん藍の効果は今も健在。藍染の服は、タンスに入れておけば防虫効果もあるのだとか。
明日から6月。暑い夏には殺菌・消臭効果がある藍染のTシャツなどを着てみるといいかもしれませんね。
見た目も涼しげですし、試してみて損はなし! 先人の生活の知恵を実験がてら、取り入れてみてはいかがでしょう。
(Sati)
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