比較して楽しむ『篤姫』と『花燃ゆ』
皆さん、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』は、ご覧になっていらっしゃるだろうか? 毎週毎週、視聴率のことばかりが話題になって気の毒だなあと思う。
脚本家が歴史に疎いためか、観ていて「脇が甘いな」と感じる部分も確かにあるが・・・松浦亀太郎など、吉田松陰の肖像画を描いた若者がクローズアップされるなど、結構おもしろい所も多い。
吉田松陰という大物は去ったが、「幕末」が面白くなってくるのはこれから。坂本龍馬や新選組が活躍をはじめ、攘夷派と佐幕派の対立が激化したりする中で、もっともっと盛り上がりを見せてくれるはず、と期待するばかりだ。
さて、今回と同じく女性を主人公に据えた幕末大河といえば、2008年に放送された『篤姫』のことが思い出される。(現在、チャンネル銀河で放送中)
「もうそんなに前か・・・」と時の流れの速さを痛感するが、視聴率24.5%という幕末ものでは異例の人気を誇ったことは記憶に新しい。
2010年『龍馬伝』、2013年『八重の桜』もそれぞれに面白さがあったが、『篤姫』の特色は、薩摩島津家と徳川幕府という両方の視点から描かれていたことだ。
特に薩摩藩の家老、小松帯刀(こまつ たてわき/瑛太)を重要や役どころとして、しっかりと描いていたということ。ドラマでは初めてクローズアップされた人物のはずで、その点も興味深かった。
薩摩といえば、西郷隆盛や大久保利通らの活躍ばかりが描かれがちだが、史実において彼らの行動を支え、うまくコントロールしていたのが、帯刀という人物だった。ドラマでは篤姫と密かに恋心を通わせるというオリジナル設定が追加されてはいたが、そういう描き方も大いにありだと思う。
また、『篤姫』の実の父親である島津忠剛(ただたけ)を演じているのが、長塚京三さん。今年の『花燃ゆ』でも主人公・文の父親、杉百合之助(ゆりのすけ)という役があてられている。さすがは名父親役といえよう。
篤姫は、実家を出て藩主の島津斉彬(なりあきら)の養女となってから将軍家へ嫁ぐのだが、その斉彬を演じていたのが、高橋英樹さんだ。『花燃ゆ』では、井伊直弼を貫録たっぷりに演じていたことで印象深い。
その井伊直弼を、『篤姫』では中村梅雀が演じ、「桜田門外の変」では、水戸・薩摩藩士たちに襲われ絶命するシーンまでしっかりと描かれていた。『花燃ゆ』で「桜田門外の変」が描かれなかったのは残念に思う。
歴史の偉人を役者ごとに観比べられるのが、ドラマ鑑賞の醍醐味ともいえるが、参考までに『篤姫』以後の幕末を代表する英雄・坂本龍馬、西郷隆盛のキャストを見てみよう。
坂本龍馬 篤姫:玉木宏 龍馬伝:福山雅治 八重の桜:後ろ姿のみ登場 花燃ゆ:伊原剛志
西郷隆盛 篤姫:小澤征悦 龍馬伝:高橋克実 八重の桜:吉川晃司 花燃ゆ:宅間孝行
その他、『篤姫』では、将軍の徳川家定(堺雅人)や、家茂(松田翔太)の活躍が印象的だったが、そういえば、『花燃ゆ』には徳川将軍や孝明天皇が今のところ登場していない。幕末日本の最高権力者が出てこないのは寂しく感じてしまう。そこが少し残念である。
画像:大河ドラマ「篤姫」©NHK
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