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【 北の国境を画定せよ!】榎本武揚が挑んだ驚異の対露戦略

【 北の国境を画定せよ!】榎本武揚が挑んだ驚異の対露戦略

旧幕臣、榎本武揚。映画やドラマなどでは、戊辰戦争で函館・五稜郭に籠もり、最後まで明治政府に抵抗した男として描かれます。
その榎本が、明治政府の危機を救い、近代日本の出発に大きな役割を果たしていたことが最新研究で明らかになりました。
5月11日(木)に放送のNHK BSプレミアム「英雄たちの選択」では、ロシアで見つかった新史料を駆使し、日露交渉の舞台裏を追跡。明治初期の知られざる榎本外交の決断に迫ります。

未画定の日露国境をめぐり、白熱の交渉に挑む榎本

明治8年、榎本が全権公使としてロシアと交渉した「樺太千島交換条約」。
この条約で、日本は両国の共有地としていた樺太を放棄する代わりに千島列島をロシアから譲り受け、江戸時代から続いた国境問題を平和的に解決しました。これは日本にとって初めて西洋列強と結ぶ対等の条約であり、不平等条約改正の流れをつくる契機として位置づけられています。

榎本にはこの時、両立困難な2つの使命が課せられていました。
1つは、東アジアの安定のため早期に国境を画定すること。もう1つが、条約の対等性を追求することです。

明治政府はこの時期、朝鮮や清とも国交・領土問題で紛争の火種を抱えていたため、大国ロシアとの衝突は絶対に回避しなければなりませんでした。また国内は不平士族があふれており、領土問題の処置を誤れば反乱が起きかねない状況だったのです。そのため、条約を早くまとめ、しかも国内を納得させる内容が求められたのです。

ロシア側の交渉責任者・ストレモウーホフと交渉する榎本武揚(再現ドラマ)
ⒸNHK

しかし榎本は、交渉でロシアの強硬外交に直面し、条約の対等性を担保できない絶望的状況に陥ります。
ロシアは極東から太平洋にまたがる樺太・千島の海域を戦略的に重視。これらを引き渡した場合、日本の対応次第で宿敵イギリスに拠点を築かれる恐れがあるとして、譲歩する姿勢をみせなかったのです。

ここで榎本は選択を迫られます。
一刻も早く国境を画定するため、領土で妥協するか?
交渉決裂を覚悟で、対等な領土交換を求め続けるか?

それは近代日本の「国のかたち」を決める重大な岐路でした。
榎本といえば、かつて箱館で明治新政府から独立を図った、国際法のプロフェッショナル。
彼にとっては戊辰戦争後、再びみずからの能力を示せるかが問われたものでもありました。そんな榎本が次々と繰り出した驚きの交渉術とは?

明治初期、榎本武揚が挑んだ北の島々をめぐるロシアとの国境交渉。近代日本を形づけた知られざる舞台裏に迫ります。

BSプレミアム【英雄たちの選択】
「明治外交秘史 北の国境を画定せよ~榎本武揚 驚異の対露戦略」

放送日時:2017年5月11日(木) 20:00~20:59
司会:磯田道史、渡邊佐和子
出演:萱野稔人、下斗米伸夫、中村喜和
語り:松重豊
公式HP:英雄たちの選択
http://www4.nhk.or.jp/heroes/

(編集部)

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