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【 世界に誇る日本の文化 】縄文時代からあった?漆の歴史

磁器が英語で「China」と呼ばれるのに対し、漆器は「Japan」と呼ばれるなど、世界に誇る日本の文化として定着している漆(うるし)。平安時代、文徳天皇の皇子・惟喬親王が京都・嵐山の法輪寺に参詣し、虚空蔵菩薩から漆の製法、漆器の製造法を伝授されたのが11月13日とされていることから、1985年(昭和60)、日本漆工協会によって「うるしの日」が制定されました。今回は漆器はもちろん、甲冑や美術品にも使われた、漆の歴史をご紹介します。

世界最古?縄文時代前期の漆利用

漆は、ウルシ科のウルシノキなどから採集された樹脂を加工したもので、塗料として漆工などに利用されるほか、接着材としても使われました。

日本における漆の利用は古く、縄文時代から始まり、土器の接着や装飾に使われているほか、木製品に漆を塗ったものや、クシなど装身具に塗ったものが出土しています。特に、2000年(平成12)に北海道函館市の垣ノ島遺跡の調査で出土した漆塗りの副葬品が、約9000年前の縄文時代前期に作られたものであったことが判明し、世界最古の漆利用ではないかと期待されていましたが、2年後、6万点の出土品とともに焼失してしまいました。漆を表面に塗ることで、物持ちが良くなることを、すでに当時の人々は知っていたんですね。

漆芸術の頂点を極めた「中尊寺金色堂」

外も中身も国宝だらけ、中尊寺金色堂はこの覆堂内にある。

飛鳥時代には、仏教伝来とともに仏具が盛んに作られ、漆の使用とともに技術も向上していきました。奈良時代の仏像彫刻の傑作「阿修羅像」(興福寺蔵)は、脱乾漆(だっかんしつ)という技術で作られています。これは、粘土で成形された原形に麻布を張り重ね、その上を刻苧(こくそ)という木粉と漆などを練り合わせた下地漆で細部を整え、さらに漆を塗って仕上げるという方法です。

また、藤原一族が栄華を極めた平安時代、漆の名品も数多く作られました。漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔くことで定着させる「蒔絵(まきえ)」、夜光貝などを文様の形に切ったものを貼ったり埋め込んだりする「螺鈿(らでん)」など、当時の技術のつまった「片輪車蒔絵螺鈿手箱」(東京国立博物館蔵)は、平安貴族の生活を垣間見ることができます。

そして、平安時代末期、藤原清衡によって建立されたのが中尊寺金色堂(岩手県西磐井郡)です。お堂全体が蒔絵、螺鈿、厚い金箔で覆われた漆の芸術空間はまさに極楽浄土。漆芸術の頂点を極める建造物として、昭和の大修理を得た今も輝きを放っています。

武将に好まれた「高台寺蒔絵」

高台寺(ねね)
(高台寺蔵)

1606年(慶長11)、豊臣秀吉の正室、北政所が秀吉の霊を祀るために高台寺(京都市)を建立します。この中に作られた漆塗りの霊廟には、「高台寺蒔絵」と称されるほど特徴的な、「平蒔絵」という技法が使われています。

これは漆で文様を描いたあと、金銀の粉を蒔きつけたままのもので、今までの全体に漆を塗って炭で研磨する研出蒔絵に比べると、かなり簡略化されています。急増する需要に対応するための必要な策だったと言われていますが、結果的にのびのびとした自由な表現が生まれ、主に武将に好まれたそうです。日本文化が一気に花開いた桃山時代、漆工芸にも新しい美意識が生まれていたのですね。

高台寺と関連寺院の宝物を納める高台寺掌美術館では、2017年12月17日(日)まで、桃山時代に製作された諸道具を展示する特別展「桃山の煌めき」が開催中。「西王母蒔絵交椅」「菊桐蒔絵提灯」(ともに重要文化財)など、「高台寺蒔絵」が堪能できる道具も展示されます。高台寺と合わせての鑑賞はいかがでしょうか。

秋の特別展「桃山の煌めき」

開催期間:2017年9月16日(土)〜2017年12月17日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後6寺 
※12月10日(日)までは午後9時30分まで開館
休館日:なし
※展示替えなどで休館となる場合があります
開催場所:高台寺掌美術館
お問い合わせHP:https://www.kodaiji.com/museum/

その後、漆工芸は、江戸初期には尾形光琳らによりさらに芸術的に高い物へと発展し、現代にまで引き継がれていきました。

尾形光琳作「八橋蒔絵螺鈿硯箱」
(東京国立博物館蔵)

世界で唯一の漆芸専門美術館

現代の日本では、特に青森県の津軽塗、福島県の会津塗、石川県の輪島塗の漆器が有名です。
石川県輪島市には世界で唯一の漆芸専門美術館「石川県輪島漆芸美術館」があります。古今の漆芸家による名品の数々が展示されているほか、輪島塗の製作工程についてもわかりやすく説明されています。また、上等な漆器を見分ける方法として、漆器を包み込むように手にしたとき、しっとりと手に吸い付く感触の品が上等とされているため、ここでは実際に触ることのできる作品も展示されています。

こちらでは、2017年11月11日(土)〜2018年1月14日(日)まで、生活面からアートまで漆の新しい広がりを提案する「国際漆展・石川2017輪島展」が開催中です。伝統技術が引き継がれた最先端の漆工芸が見られます。

「国際漆展・石川2017輪島展」

開催期間:2017年11月11日(土)〜2018年1月14日(日)
開館時間:午前9時〜午後5時(入館は閉館30分前まで)
休館日:2017年12月29日(金)~31日(日)
開催場所:石川県輪島漆芸美術館
お問い合わせHP:http://www.city.wajima.ishikawa.jp/art/home.html

古くは縄文時代に始まり、貴族や武士を魅了し、今もなお、世界に誇る日本の伝統文化である漆。これを機会に、漆の美しさを今一度見直してみてはいかがでしょうか?

(編集部)

参考文献
四柳嘉章『漆の文化史』岩波新書

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