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【薔薇戦争とは】絶対王政を生んだイングランド王朝の覇権争い

【薔薇戦争とは】絶対王政を生んだイングランド王朝の覇権争い

現在のイギリスにあたる中世のイングランドで起こった薔薇(ばら)戦争。貴族のランカスター家とヨーク家が王位を争ったこの戦いは、両家の紋章がそれぞれ「赤薔薇」「白薔薇」であったことからこう呼ばれるようになりました。この戦いは貴族のあり方に影響を与え、意外な形で終わります。日本で応仁の乱が勃発していたころ、イングランドで起こったこの戦いはどのようなものだったのでしょうか?
今回は、薔薇戦争が起こった背景、ランカスター家とヨーク家の対立、薔薇戦争終結への流れなどについてご紹介します。

薔薇戦争が起こった背景

薔薇戦争は百年戦争の終結後に勃発しました。この闘争はどのような背景から起こったのでしょうか?

イングランド初の公爵家の創設

プランタジネット朝のイングランド王・エドワード3世は、王妃フィリッパ・オブ・エノーとの間に10人以上の子をもうけました。そして、そのうちの成人した息子ら5人に、クラレンス、ランカスター、ヨーク、グロスターといったイングランド初の公爵家を創設させます。これにより彼らの子孫は、王位を巡り戦いを繰り広げるようになりました。

ランカスター朝の成立

エドワード3世の死後、長男であるエドワード黒太子の子・リチャード2世が王位を継承しますが、彼には子供ができませんでした。当時のイングランドの王位継承は「長男子相続権法」にもとづいており、本来であればクラレンス公ライオネル・オブ・アントワープ(エドワード3世の三男)の子孫であるマーチ伯エドムンド・モーティマーが次の王位継承者になるはずでした。しかし、百年戦争でイングランドが劣勢となりリチャード2世への反発が高まっていた1399年、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーント(エドワード3世の四男)の息子ヘンリー・ボリングブルックが、貴族の支持を受けてリチャード2世を廃位し、自らヘンリー4世として即位します。これによりプランタジネット朝が終わり、新たにランカスター朝が成立しました。
その後、マーチ伯エドムンドを国王に擁立しようとするサウサンプトンの陰謀事件が発生しますが、国王への忠誠心を示し続けたマーチ伯エドムンドは子どもができないまま1425年に死去。彼が有していた王位継承権は、姉のアンの息子ヨーク公リチャードに相続されることになりました。

ランカスター家vs.ヨーク家

第一次内乱では、両家の対立の末にヨーク朝が成立しました。それまでにどのような経緯があったのでしょうか?

イングランド王・ヘンリー6世の誕生

夫に代わりヨーク派に抵抗した、マーガレット・オブ・アンジュー

1422年、ランカスター朝のヘンリー5世が死去し、それを継いでヘンリー6世がイングランド王に即位。しかし、戦況の悪化などにより、宮廷内は国王側近のサマセット公エドムンド・ボーフォートを中心とする和平派と、ヨーク公リチャードを中心とした主戦派の対立が深まっていきます。ヘンリー6世は百年戦争の敗戦で精神に異常をきたしこの対立を収拾できなかったため、王妃マーガレット・オブ・アンジューが夫に代わり国王支持の貴族たちを束ねました。そして1455年、ヨーク公リチャードが反乱を起こし、セント=オールバンズの戦いで国王を捕らえます。こうして、その後30年続く薔薇戦争の幕が上がったのです。

エドワード4世によりヨーク朝が成立

両者は一進一退の攻防を繰り広げたものの、1460年のノーサンプトンの戦いでヨーク派が勝利します。ヨーク公リチャードはヘンリー6世を捕らえましたが、スコットランドの援助を受けたマーガレット王妃の反撃によりウェイクフィールドで戦死。翌年、マーガレット王妃はヨーク派のウォリック伯リチャード・ネヴィルに勝利してヘンリー6世を奪回しますが、ロンドン占領は叶いませんでした。その後、ヨーク公リチャードの嫡男エドワードが、ウォリック伯の支援を得てロンドンに入城。彼はエドワード4世として新国王になり、ヨーク朝が成立します。その後、薔薇戦争最大の戦いとなる、タウトンの戦いで敗れたヘンリー6世とマーガレット王妃はスコットランドに逃亡しました。しかし、ヘンリー6世は1465年に捕らえられ、ロンドン塔に幽閉されることになりました。

エドワード4世vs.マーガレット前王妃

第二次内乱では、新国王エドワード4世とマーガレット前王妃が対立します。この内乱によりランカスター家の命運は決定付けられました。

ウォリック伯が反旗を翻す

イングランド王となったエドワード4世ですが、その治世は不安定なものでした。彼は身分違いのエリザベス・ウッドヴィルとの結婚を独断で進め、ウッドヴィル一族を重用。エドワード4世擁立の立役者となったウォリック伯はこれに不満を抱き、政策の意見相違もあって反旗を翻します。1469年、ウォリック伯は王弟クラレンス公ジョージと手を結んで反乱を起こしましたが、その翌年には反逆者の烙印を押され国外逃亡を余儀なくされました。

失われたランカスター家の王位継承権

バーネットの戦いで敗走して殺害されるウォリック伯

苦境に立たされたウォリック伯は、宿敵だったマーガレット前王妃と和解します。このとき彼女はフランスに渡りルイ11世から支援をうけていました。ウォリック伯とランカスター派は結束してイングランドに上陸し、エドワード4世を国外追放してヘンリー6世を復位させます。しかしその翌年、エドワード4世はブルゴーニュ公シャルルの援助を得てイングランドを攻撃。バーネットの戦いでウォリック伯が敗死し、テュークスベリーの戦いではマーガレット前王妃が捕らえられ、息子エドワード王子は処刑されました。その後、ヘンリー6世も殺害されたため、ランカスター家の勢力と王位継承権者はほぼ絶えたのです。

薔薇戦争の終結

第三次内乱により薔薇戦争もついに終結します。30年に及ぶ戦いの結末は、どのようなものだったのでしょうか?

ヨーク家の内乱とリチャード3世の即位

ヨーク朝最後のイングランド王となったリチャード3世

ランカスター派との戦いで再び勝利したヨーク派ですが、やがてエドワード4世が急逝します。その後に即位したのは、王弟グロスター公リチャードでした。1483年、リチャードはエドワード4世の子エドワード5世の護国卿(摂政)に就任し、母后エリザベス・ウッドヴィルの一族を粛清。さらには、エドワード5世とその弟リチャード・オブ・シュルーズベリーをロンドン塔に幽閉しました。そして同年6月、彼はリチャード3世としてイングランド王に即位します。しかし、反対勢力による反乱が起こり、不安定な政情を抱えた国内は再び混乱に陥りました。

テューダー朝が成立へ

リチャード3世とヘンリー・テューダーが王位を争ったボズワースの戦い

1485年、フランスに亡命していたランカスター派のリッチモンド伯ヘンリー・テューダーは、兵を率いてイングランドに上陸します。リチャード3世に不満を抱えていた貴族たちは彼を支持し、両者の対立によるボズワースの戦いが勃発。リチャード3世は自ら軍を率いて戦いましたが、味方の裏切りに遭って戦死し、丸裸の遺体をさらされました。勝利したヘンリー・テューダーはヘンリー7世として即位し、エドワード4世の王女であるエリザベス・オブ・ヨークと結婚。長らく対立関係にあったヨーク家と和解しテューダー朝を開いたことで、薔薇戦争は終結しました。

その後、赤と白の薔薇を組み合わせた紋章を掲げたテューダー朝は、百年戦争と薔薇戦争で疲弊した諸侯を抑えて絶対王政を実現。テューダー朝による絶対王政は、未婚のまま没したイングランド女王エリザベス1世の時代まで続きました。

シェイクスピアの史劇にもなった戦い

ランカスター家とヨーク家の対立から始まった薔薇戦争は、最終的に両家の結婚で幕を閉じます。この戦いは百年戦争の敗戦責任の押し付け合いという側面もあり、封建貴族の私闘でもありました。封建貴族の没落と絶対王政の実現をもたらした薔薇戦争は、シェイクスピアの『ヘンリー6世』『リチャード3世』などの史劇をはじめ、小説、映画、ドラマ、舞台など、様々な作品の題材として人々を魅了しています。

 


【放送情報】愛と裏切りの“薔薇戦争”特集

15世紀のイングランドで30年にわたり繰り広げられた“薔薇戦争”。赤い薔薇のランカスター家と白い薔薇のヨーク家が争ったこの戦いは、シェイクスピアの名作『リチャード三世』をはじめ、小説、映画、舞台など、様々な作品の題材として人々を魅了してきた。チャンネル銀河では、そんな薔薇戦争を描いた歴史ドラマ「ホワイト・クイーン 白薔薇の女王」「ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語」を2ヵ月にわたりお届けする。

「ホワイト・クイーン 白薔薇の女王」

©2013 Company Television Productions Ltd.

放送日時:2021年1月10日(日)スタート 毎週日曜  夜7:30~ 2話連続
番組ページ:https://www.ch-ginga.jp/feature/whitequeen/
出演:レベッカ・ファーガソン(エリザベス・ウッドヴィル)、マックス・アイアンズ(エドワード4世)、ジェームズ・フレイン(ウォリック伯)、アマンダ・ヘイル(マーガレット・ボーフォート)、フェイ・マーセイ(アン・ネヴィル)、アナイリン・バーナード(リチャード)、ジャネット・マクティア(ジャケッタ・ウッドヴィル) ほか
制作:2013年/イギリス/字幕/全10話

「ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語」

©2017 Company Television TWP Limited. All Rights Reserved.

放送日時:2021年2月14日(日)スタート 毎週日曜  夜7:30~ 2話連続
番組ページ:https://www.ch-ginga.jp/feature/whiteprincess/
出演:ジョディ・カマー(エリザベス・オブ・ヨーク/リジー)、ジェイコブ・コリンズ=レヴィ(ヘンリー7世)、エシー・デイヴィス(エリザベス・ウッドヴィル)、ミシェル・フェアリー(マーガレット・ボーフォート)、ヴィンセント・リーガン(ジャスパー・チューダー)、ジョアンヌ・ウォーリー(ブルゴーニュ公妃) ほか
制作:2017年/アメリカ/字幕/全8話


 

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