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【 占い、毛生え薬、性行為まで!? 】日本最古の医学全書「医心方」が面白い

日本最古の医学書とされている「医心方(いしんぼう)」。
平安時代の鍼博士であり医家の丹波康頼(たんばのやすより)によって朝廷に献上された医学書で、全30巻の大作医学書です。日本の医学史だけではなく国語学史や書道史上でも重要な国宝の医心方とは、一体どんな本だったのでしょうか?

公開されなかった秘密の書

丹波康頼像。俳優の丹波哲郎さんは分家の末裔だそう。

丹波康頼像。俳優の丹波哲郎さんは分家の末裔だそう。

医心方とは、日本医学の基礎でありながら、その存在は近年まで一般的にどんな内容か知られていませんでした。
というのも明治時代までの日本の医学界には、「多紀家」や「半井家」といった医術の名家が君臨しており、医心方は門外不出の書だったのです。
1974年から医心方の研究を始めていた古典医学研究家である槇佐知子(まきさちこ)さんが独学で翻訳するまで、一般の人は内容をよく知りませんでした。
江戸時代の国学者であり医師であった本居宣長(もとおりのりなが)が「平安時代には医術というモノ自体がなかった」、と認識していたのもある意味で当然な話。
半井家に伝わっていた方の医心方は1982年に文化庁によって買い上げられ、2年後の1984年に国宝へ指定されました。

医心方の内容とは?

唯一、図柄が記載されている「巻二十二 胎教篇」

唯一、図柄が記載されている「巻二十二 胎教篇」

「巻一B 薬名考」の基礎的なものから、「巻五 耳鼻咽喉眼歯篇」、「巻六 五臓六腑」、「巻十七 皮膚病篇」「巻十八 外傷篇」と基本的な怪我・病気の医術は抑えていますし、「巻二十五A 小児篇I&巻二十五B 小児篇II」での小児科治療、「巻二十一 婦人諸病篇」の婦人病治療の他に、産科では「巻二十三 産科治療・儀礼篇」と「巻二十二 胎教篇」と実に細かい。

また、医心方は現代の医学のカテゴリーとは少々違ったジャンルまでカバーしています。
「巻四 美容篇」や「巻二十四 占相篇」「巻二十六 仙道篇」など、身体に少しでも関係することが、様々な視点から記されています。

「巻四 美容篇」では、美肌パックや毛生え薬の作り方、腋臭の対処、シミ・そばかすの消し方など現代人でも気になるラインナップ。現代でも平安時代でも人の美に対する追求は変わらないようです。

オカルトじみている内容も・・・?

現代では考えられないほど平安時代では「占い」が生活の基本にありました。
「占ってみたら凶と出たので仕事休みます」、で欠勤しても上司から怒られません。医心方の中にも、占いや呪いなど科学的ではない少々オカルトじみた記述が多く掲載されています。

「巻二十四 占相篇」では、寿命や不妊対策、家族との人間関係を占いによって判断しようとしていますし、出生後の死亡率が高かった時代ですので「巻二十五A 小児篇I」では幼くして死んでしまった子供への儀礼方法や呪術が記されています。

極めつけは、「巻十四 蘇生・傷寒篇」。水死や突然死で亡くなった方を蘇生させることができるとか。
平安時代ならではの医学がココに。

エロ=健康?健康な子供は、健全な性行為から!

医心方〈巻28〉房内篇

医心方〈巻28〉房内篇

「巻二十八 房内篇」では、性行為が中心に記されています。
EDになってしまいノイローゼ気味の中国の皇帝が仙女に相談する物語から始まり、「正しい性行為は百病を治す」という内容。
初夜での性行為方法から無意識に現われる女性の性動作の解説など細かい記述ですが、基本的には「性愛の書」というよりも「どうしたら健康な子供が生めるか」、が中心の構成。健全な性行為から健康な子供を産みましょう、というコトが中国の陰陽道などを参考にして紹介されています。

楽しそうなラインナップの古代医学書。
雅な時代の先端医学がこのシリーズの中に詰まっています。
・・・意外に読んでみたい方もいらっしゃるのではないでしょうか?

医心方の世界 (新装版):古代の健康法をたずねて 槇 佐知子

医心方の世界 (新装版):古代の健康法をたずねて
槇 佐知子

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