12月10日の『三國志の日』を前に、横浜方面が「三国志」で熱い盛り上がりを見せている。まずは去る11月18日、横浜市役所で行なわれた市長の定例記者会見で、歴史シミュレーションゲーム「三國志」と横浜市交通局とのタイアップ企画が発表された。
すでに発表されている通り、2015年12月10日から2016年3月31日まで、全7種類のポスターが、横浜市営地下鉄の40駅に堂々掲示される。コーエーテクモは横浜の日吉にある地元企業だ。筆者、今でこそ東京に住んでいるが、実は横浜生まれの横浜育ち。横浜中華街には数えきれないほど訪れているし、そこにある関帝廟(関羽を祀った社)も、年に数度はお参りに行く。横浜市営地下鉄もよく利用した。いわゆる「ハマッ子」の私にとって、嬉しすぎるニュース。
2008年~2009年に映画『レッドクリフ』が公開された時も、孔明や周瑜のポスターが山手線の駅や電車内にたくさん踊っている光景に胸が弾んだのを思い出す。あれは単に映画の宣伝だったが、今回は目的が乗車マナー向上や、事故防止を目的とした「啓発ポスター」というのだから面白い。
標語は一般公募の結果、1500点を超える応募があり、その中から厳選されたものが採用された。うち2つが冒頭に載せた呂布や孔明のポスター。どちらも以前から危ないと言われているが、呂布や孔明にこう言われれば、守らないわけにはいかないだろう。むしろ呂布は平気で駆け込みそうな気もするが・・・。歩きスマホも危ない。伏兵が居なくてもホームに落とし穴が仕掛けられていないとも限らないから、やめるべきだ。
・劉備「我ら、生まれた日は違っても 車内マナーは等しく守ろうと誓おう。」(考案者:nico)
・曹操「覇王の座は譲らぬが、この座席は譲ろう」 (考案者:氷咲梨奈)
・孫権「全軍止まれ。 エスカレーターで歩いてはならぬ!!」(考案者:toshi)
上記三君主の台詞は、かなり特徴を捕らえているもので、さすがに三国志好きが考えたコピーといえる。劉備は「桃園の誓い」のパロディ。冷酷に思われがちな曹操も、「譲れ」と強要するのではなく、みずから譲る姿勢を示そうとしているあたり、意外に寛容だった本人の性格をよく表している。
孫権も統率力に長けていた彼らしい台詞だ。確かに本来、エスカレーターは歩いて利用するものではないのに、いつの間にか歩く人のために片側を開けるのが暗黙のルールになってしまった。孫権がそう言うのであれば、大人しくエスカレーターでは進軍を停止し、急ぐなら階段を使うべきだろう。さもないと机の角みたいに斬られてしまいかねない。
関羽&張飛の両名による「張飛! 酔うて車内で義の無き行いをするではないぞ?」「心配するな兄者! 酒はほどほどに、だろ?」(コーエーテクモ作)も、これまた面白い。酔っぱらって城を取られたこともある張飛、その説得力のなさは呂布以上との声もあるが。
会見で、筆者から林文子市長(左)と、コーエーテクモホールディングス会長の襟川恵子氏(右)に「三国志で好きな人物はいますか?」と質問をさせていただいた。林文子市長は、2009年からの横浜市長。実業家時代に「三国志」に触れ、人材登用の場面などに興味を持ったという。「特に誰が好きということはないけれど、『泣いて馬謖を斬る』という故事成語が印象に残っています」と答えてくれた。
コーエーテクモホールディングス会長の襟川恵子氏は、「信長の野望」「三國志」シリーズの生みの親であるシブサワ・コウ氏の奥様だ。襟川氏も、やはり自社ゲームとも密接な関係の三国志には親しんでおられるようで、「劉備に憧れていますけど、曹操も悪役ながら捨てがたい魅力がある。ゲームで人気が高い周瑜にも注目しています」と話してくれた。
普段、ほとんど三国志に触れることのない一般紙の記者などもかなり興味を持ってたくさん質問していたのが印象的だった。12月10日からのキャンペーンは、さぞ良い盛り上がりになるのではないだろうか。
こちらは、会見では発表されなかったが、同時期に行なわれる神奈川県港北警察署の管内で掲示される防犯ポスター。周瑜と劉備はいずれも自転車の2重ロックを呼び掛けるものだが、他には無かったのだろうか。絵柄に合わせるとなると内容も限定されてしまうので、地下鉄よりもハードルが高そうな印象。孔明の「おれおれ詐欺」の警告を呼びかけるものは、単語が一人歩きするほど有名な「孔明の罠」をうまく使った秀逸といえよう。
同じく、12月10日から実施される「モバイルスタンプラリー」と「オリジナル乗車券」の内容も面白い。スタンプラリーは横浜市営地下鉄の駅を魏・蜀・呉の三国に見立て、武将ポスターのQRコードからスタンプを集め、クーポンをゲットするというもの。コーエーテクモがある日吉は諸葛亮、中山(なかやま)は劉備。劉備が中山靖王(ちゅうざんせいおう)の末裔と称していたことにちなんだようだ。クーポン対象施設は未発表だが、どんな場所で使えるのかも楽しみである。
スタンプラリーを楽しむなら、1日乗車券の利用が必須といえるが、そのためのオリジナル乗車券も発売される。曹操・孫権・劉備・呂布の4種類があるうえに、駅によって売っている乗車券が異なるのが悩ましい。しかも呂布の乗車券は新横浜だけだ。これは、「ラーメン博物館」に行けということか? 全種を揃えるにも巧妙に張り巡らされた「コーエーの罠」をかいくぐる必要がありそうだ。面白い。皆の衆、進んでかかってみようではないか。
※キャンペーンについての詳細は公式サイトにて。
http://www.gamecity.ne.jp/sangokushi30th/tieup_yokohama.html
http://www.city.yokohama.lg.jp/koutuu/kigyo/newstopics/2015/news/n20151119-8718-01.html
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