哲舟の「歴史ドラマ一騎語り！」 VOL.7 三国志「呂布の処刑シーン」を比較してみる

三国志において、最強の呼び声高い呂布（りょふ）。名駿・赤兎馬にまたがり、方天画戟（ほうてんがげき）を武器に暴れまわる呂布の雄姿は、ドラマでも非常に格好よく描かれている。

しかし、その猛将も力及ばず、西暦198年に曹操軍の智略に敗れ、非業の死を迎えてしまう。今回は、そんな呂布の最期の場面を、ドラマ『三国志 Three Kingdoms』および『曹操』の２作品で比較してみよう。まずは『三国志 Three Kingdoms』（第18～19話）から。

呂布は曹操軍との戦いのさなか、部下に裏切られ寝込みを襲われてしまう。縄で縛られ、一度はその怪力で縄を引きちぎり、起きあがろうとするも大勢の将が折り重なるようにのしかかってきて万事休す。がんじがらめにされ、曹操の前へ連行される姿には哀愁が漂う。

処刑されることが決まり、呂布は刑場へと引っ立てられていく。原作では縊死とされるが、本作では柱に縛られ、無数の矢に射られるという最期を遂げるのだ。

そこに寄り添うのが、絶世の美女と名高い呂布の側室・貂蝉（ちょうせん）。「来世で会おう」といい残す呂布に、「私も一緒に死にます」とすがりつくも、曹操が「呂布だけを殺せ」と命じたため引き離されてしまう。

呂布の亡骸を引き取った貂蝉は、川のほとりでその身を清め、思い出に浸るのだった。その後、曹操は未亡人となった貂蝉を我がものにしようと彼女を引き取るが、そこで貂蝉がとった行動は・・・。解説はここまでにして、先の展開は本編でご確認されたい。

さて次に、ドラマ『曹操』での、呂布の最期（第32話）も見てみよう。部下に裏切られる流れは『三国志 Three Kingdoms』と、ほぼ同じ。酒色に溺れ、部下たちを粗略に扱い、信頼を失った揚句の悲劇を迎える。

ちょっと違うのは、本作では情事に耽り続ける呂布が、貂蝉にまで呆れられて叱責されるところだ。呂布は結局、楼閣でウトウトしているところを縛られてしまう。その後は柱にくくりつけられ、柱ごと曹操の前に連行される。

そして問答の結果、哀れにも「はりつけ」にされた姿勢のまま、刑場へ運ばれて行ってしまうのだ。処刑シーンは描かれない。また、貂蝉がどうなったのかも描かれないまま次のシーンへ進んでいく。このあたり『曹操』の描写は、かなり淡々としており、残念といえば残念である。

いずれにしても、「最強の男」の最期にしてはあっけない幕切れだが、救いなのは貂蝉が最後までそばにいたことだろう。小説・吉川英治「三国志」のように、呂布と貂蝉が相思相愛ではない作品もあるが、今回はそれらの話は置いておき、史実云々も抜きにしたい。

呂布に貂蝉がいるように、項羽には虞姫、源義経には静御前、ナポレオンにはジョゼフィーヌがいた。「英雄、色を好む」というが、男女の色恋は古今東西不変。悲劇の英雄のそばには美女が似合う。

『曹操』
発売元・販売元：エスピーオー
提供：染野企業電影工作室　(C)電広伝媒文化発展有限公司

『三国志 Three Kingdoms』
販売元：エスピーオー　(C)中国伝媒大学電視制作中心、北京東方恒和影視文化有限公司

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上永哲矢（うえながてつや）通称：哲舟。歴史コラムニスト、フリーライター。
『時空旅人』『歴史人』などの雑誌・ムックに、歴史や旅の記事・コラムを連載。

三国志のほか、日本の戦国時代や幕末などを得意分野とする。
イベント・講演にも出演多数。神奈川県横浜市出身。

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